見出し画像

【実話怪談30】後ろ姿

女性Wさんの体験した話。
幼い頃の話であるため、大部分は後から家族に聞いた話となる。

彼女が四歳ごろ、入院していた曾祖母が亡くなった。

曾祖母は、とっつきにくく不気味な雰囲気で、彼女以外の家族はあまり近寄らなかったという。
Wさんだけは、幼かったせいもあるだろうが、曾祖母に対して怖さは微塵も感じなかった。曾祖母は脚を悪くしていたので、どこかへ一緒に出かけたことはない。だが入院前は自宅で一緒に過ごす時間も多く、懐いていた。

曾祖母が亡くなって間もない、ある夜のこと。
Wさんは、自宅の階段を曾祖母がゆっくりと歩いて上がっていく後ろ姿を見かけた。この光景は、今でも記憶の片隅に残っているそうだ。

幼いWさんは、曾祖母が亡くなったことをよく解っておらず、実在の曾祖母を見たものだと思っていた。

「家族の話によれば、私が家族らに『いま、ひいおばあちゃんが、いた』と伝えたそうなんです。それで、もう亡くなってるのにいるわけないでしょ、と軽くあしらったようです。後から考えると、そもそも階段のぼれないんですよね。脚が悪いので」

そしてその夜。
Wさんは高熱にうなされ、床に臥すことになる。
高熱状態は、何日も続いた。
病院で診てもらうが、原因が解らない。

それと連動するかのように、家の中で奇怪な現象が起き始めた。
部屋の中でパキッというラップ音が鳴ったり、テレビの画面が突然ぷつりと消えることが頻繁に生じたという。
むろん、今までそんな現象が起きたことはなかった。

Wさん一家には特に霊感の強い者がいるわけではない。しかし、曾祖母の死後直後に重なる不可解な現象を目の当たりにして、「これは霊的なものでは」と家族は疑念を持つに至った。

そこで家族は藁にも縋る思いでWさんを近所のお寺に連れて行き、お祓いを受けさせた。すると彼女の高熱はみるみる下がり、自宅で生じる諸々の怪現象も全てぱたりと止んだそうだ。

「小さかったので高熱で苦しんだことはよく憶えてませんが、家族の話を聞く限り、ひいお祖母ちゃんに取り憑かれたってことになりますね。家族はみんな『ばばあの祟りだ』って口を尖らせてました」

少し寂しげに、Wさんは語り終えた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?