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【実話怪談1】「本音」

ある怪談師の方がファストフード店で怪談本(怖い話、不思議な話を集めた本)を読んでいたところ、頭上の照明ランプが、ぱりん、と小さな音を立てて割れた、というエピソードを聞いた。

私も、怪談本に纏わる不思議な体験をしたことがある。

2019年9月の中頃だったと思う。私は怪談の文庫本を5~6冊ほど、枕元に積んで置いていた。

夜寝ていると、枕元のほうから何か音が聞こえてくるので目が覚めた。

ばさばさばさ、ばさばさばさ。

ばさばさばさ、ばさばさばさ。

怪談本が置いてるところから聞こえてくる。

その音はまるで、本の綴じられている側を片手で持って、その手を左右に揺らしたときに出る、ばさばさばさ、という音のようだった。

というか、そうとしか聞こえない。

穏やかな音ではなく、憤りに満ちた、憎しみのこもった音に思えた。

音の正体?らしきものがわかった後は、怖気の波が襲ってきた。

私は一人暮らしでペットもいない。

お恥ずかしい話、びびって布団を頭からかぶって両手で頭を守るような体勢になってたので、自分自身の手で文庫本を持ってばさばさと音を立ててもいないはず。

あれだけ怪異を楽しみにしておきながら、たかが文庫本の怪音(仮)だけで、すこぶる恐怖してしまった。

特に金縛りにもならなかったので枕元の本がどうなっているのか確認しようと思えばできたが、怖くて無理だった。

怖かったというのもあるが、何か見てはいけない「圧」というか、本以外の何かがいる(ある)ようにも感じた。

二重の意味で、煽られた。

「本音」はずっと繰り返し聞こえてきたが、いつの間にか眠りに落ち、そのうち朝を迎えた。

積まれていたはずの本は、バラバラになっていた。

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