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【怪談実話105】不死鳥

「私も信じられない話なのですが……」

そう前置きして語ってくれたのは、Aさんという女性だ。
7年前、彼女の旦那さんの父親(義父)が疾患のため入院し、親族で千羽鶴を折ろう、ということになった。

Aさんの娘さん(当時中学生)も折り鶴を折った。その際、娘さんは「どれだけ小さい鶴を折れるのか」という試みに挑み、結果、わずか1cmぐらいの超小型の折り鶴を数羽だけ完成させた。その鶴は折り紙から作ったものではなく、何かの白い紙を手で切断して、その切れ端で折ったものだった。

残念ながら、親族の千羽鶴が完成する前に義父は帰らぬ人となった。

通夜の時、娘さんは追加で極小の折り鶴を折り、葬儀の際、その折り鶴を全て祭壇に置いてもらった。義父が入院中に折ったものと、亡くなった後に折ったもの、合計7羽だ。

納棺にあたり、親族が折った千羽鶴も全て棺に納められた。娘さんが折った極小の折り鶴に関しては、義母が一羽ずつ数えながら納棺した。その後に、義父は荼毘に付された。もちろんAさんも納棺に立ち会っていた。

・・・

数か月後。

義母は、自宅から約1キロ離れた畑へ野菜の収穫に出かけた。畑は山ひとつ分の広範な面積を有し、畑ごとにピーマン、ホウレンソウ、タマネギ、スイカなど多岐にわたる野菜が栽培されている。義父も生前、その畑を丹念に世話していた。

義母が野菜を収穫しようと、ある畑地(どの野菜の畑かは不明)にしゃがみ込んだ時だった。

土壌の表面に露出した、小さな小さな白色の物体が視界に入った。
彼女はそれをそっと拾い上げて掌に載せ、目を凝らす。

「一羽の折り鶴だったそうです。白い紙の切れ端で作られたもので、土が付着していたものの、私の娘が折ったものに間違いないと言ってました」

義父の火葬前、義母は自分の手で、Aさんの娘さんが折った折り鶴を全て納棺している。「絶対に全て数を数えて入れて納棺した」と断言しており、火葬されて存在しないはずの極小の折り鶴を広大な畑で発見して、たいそう驚いたそうだ。

折り鶴が発見された日はお盆の時期だったため、義父がその折り鶴に乗って帰ってきたのではないか、と義母は嬉しそうに話していた。

後に義母は、畑で見つけた折り鶴を作成者のAさんの娘さんに見せた。
娘さんは「自分が折ったものだ」と目をパチクリさせた後、「親族が折った千羽鶴も一緒に納棺されたのに、私が折った折り鶴で帰ってきてくれた」と喜んでいたそうだ。

その折り鶴は今も大切に保管されており、法要の際には祭壇に飾られるとのことである。

・・・

Aさんから提供いただいた参照画像。畑で発見された実物ではないが、それと同じサイズの折り鶴である。爪楊枝の長さは約6.5cm。

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