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【怪談実話87】インターフォンとトランク

男性Aさんは、S県のオートロックマンションの5階に住んでいる。自宅のインターフォンは、共用エントランスのチャイム音と、玄関先のチャイム音が異なるタイプだ。

3年ほど前のある夜。0時半ごろ、自宅のインターフォンが「ぴんぽん」と鳴った。インターフォンの音は、玄関先のチャイム音だった。つまり、エントランスのチャイム音が鳴らない状態で、いきなり玄関先のチャイム音が鳴ったことになる。

Aさんも在宅していたが、そのときは息子さん(当時19歳)が応対した。彼がドアチェーンを掛けたままドアをそろりと開けたら、その瞬間に再び「ぴんぽん」と鳴った。玄関先のチャイム音だ。構造上、もし来訪者がいてドアホンを押しているなら、開けたドアの隙間から見えるはずだ。だが、誰の姿も見えない。

気味悪く感じた息子さんは、すぐにドアを閉めて施錠したそうだ。その夜はそれ以降、インターフォンが鳴ることはなかった。

・・・

翌朝。
朝6時ごろ、Aさんは出社のために自宅を出た。エレベータの扉が開いた時、いつもと違う光景を目の当たりにして驚いた。エレベータの箱の「トランク」(救急時の担架運搬用の空間)の扉(中央2枚開き式)が全開に開いていたからだ。

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(東芝エレベーターHPより引用)

そのトランクの扉は、住人が開けることはできない。鍵は管理人が保管しているが、夕方5時ごろに帰る。Aさんが前夜に帰宅したときには、トランクの扉は閉まっていた。

別の可能性としては、救急隊員が開けることができるが、昨夜以降に救急車が来た記憶はなかった。

開いていたトランクの扉は、朝、管理人が来て閉めたそうだ。

後日、管理人に伝えて、マンション入り口に設置された監視カメラの録画映像を確認したが、不審なインターフォンが鳴った日の夜12時半ごろに誰かがマンションに出入りした形跡はなかった。

なぜ、Aさん宅の玄関先のインターフォンが鳴ったのか。
なぜ、エレベータのトランクが開いていたのか。
インターフォンとトランクが何か関係あるのか。

すべて不明のままである。

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