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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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2020年7月の記事一覧

【実話怪談45】川辺の生き物

「あ、思い出した」 女性Uさんが小学3年の頃、家族でテレビ鑑賞していたときに母親が呟いた。そのとき流れていたのは映画「プレデター」。シュワルツェネッガー演じる軍人率いる特殊部隊が、森の中で宇宙人(プレデター)に襲われるアクションホラー映画だ。プレデターは、光学迷彩を駆使して姿を透明化する特徴がある。 ・・・ 1960年代、福島県西部でのことだ。母親が小学1年の時の夏、夕方頃。年上の兄弟らと外で遊んでいたら、急に大雨が降ってきた。今で言うゲリラ豪雨だ。そのため、彼女は兄弟

【実話怪談44】入りたい

「母は霊が見える人なんです」という女性Uさんから伺った話。 今から25年ほど前の夏、F県北部に家族で引っ越した。 引っ越し後間もなく、Uさんの母親は転入手続きのために町役場に赴いた。燦燦と照りつける太陽の下、役場に続く小さい商店街を歩いて進む。平日の田舎道のため、人通りは多くない。 商店街を直進しているとき、後ろを誰かが歩いているのに気付いた。 店のショーウインドーに自分が歩く姿が映っているのだが、その数メートル後ろにスーツを着た50代ぐらいの男性が映っていた。真面目そう

【実話怪談43】お客様は神様?

12年前の夏。当時女子大生だったAさんは、地元のユニクロで夏休みの短期バイトに勤しんでいた。 地方都市の市街地にある店舗であり、高校生が万引きすることが多く店長も頭を悩ませていた。「学生が入店したら注視すること。試着室に入ったら特にマークすること。不審な点があればインカムですぐに知らせること」などが徹底されていた。 ある日曜日、Aさんは初めてメンズコーナーを担当することになった。 午前中。夏の最終セールと秋物入荷が重なる日で、店内は混雑していた。このような日は特に万引き

【実話怪談42】跳ねるベッド

「木村先生って、幽霊、見えますか」 都内にある芸術系スクールの女性講師・木村さんは、休憩時間に一緒になった同僚の女性講師・藤井さんから唐突に質問された。 このスクールは少人数・個人指導がメインであるため、各講師は休憩時間がずれることが多い。また、講師は自分のレッスンが入っている日しか出社しない。それまで木村さんは藤井さんと休憩時間が一緒になることがなく、ほとんど喋ったことないような間柄だった。 だから、いきなり「幽霊」という単語が発せられたことに内心驚いた。自分は霊感が

【実話怪談41】嚙む場所

男性Aさんが引っ越した庭付きの一軒家には、一匹の野良猫がよく現れる。白と黒のぶち柄で、恰幅の良い雄猫だ。庭にトコトコ歩いて入ってくるため、よく可愛がっていた。 人懐こい猫だが、たまにAさんの脚の脛(すね)を噛んでくることがあった。噛むといっても出血するほどではなく、瞬間的な痛みを覚える程度だそうだ。 最初は気にしなかったが、ある規則性に気が付いた。噛まれるのは、自宅の庭のある特定の地点に彼が立っていたり、歩いたりするときだけだった。 気になったAさんがその土地に関して調

【実話怪談40】草履のおじさん

実話怪談37~40は、すべて女性Lさんに伺った話である。各エピソードは独立している。 ある年のお盆。Lさんは夫と小学4年の長女と一緒に、車で母親のお墓参りに出かけた。夏休み中とあって愛娘の起床が遅くなり、墓地に到着したのは夕方の4時ごろだった。墓地には他に誰もいなかった。 お墓参りを終え、駐車場に向かう帰り道、Lさんらは墓地の細い通路を縦一列になって歩いていた。夫を先頭に、Lさん、長女の順だ。通路の両側にはお墓がずらりと並んでいる。 「ねえ、まま」 最後尾を歩いている

【実話怪談39】父親の痣

実話怪談37~40は、すべて女性Lさんに伺った話である。各エピソードは独立している。 Lさんの父親が50歳のとき、彼の母親(Lさんの祖母)が他界した。 その翌朝。 彼は顔を洗おうとして洗面台に立って、水道の蛇口をひねり、水を両手で掬おうとしたときだ。 自分の左腕を見て、ぎょっとした。 左腕の内側に、大きな赤黒い痣(あざ)が浮き出ている。 その痣は、等間隔で3つ現れていた。 痣は細い線状で、それぞれが片仮名の文字に見える。 文字は、太さ1~1.5ミリ程度、一文字の大き

【実話怪談38】母親の夢

実話怪談37~40は、すべて女性Lさんに伺った話である。各エピソードは独立している。 本話は、彼女が小学生のときの出来事。のちに父親から聞かされた話となる。 母親が内臓疾患のため入院した。病気が発見されたときは既に末期で、余命が半年ぐらいだったそうだ。だが家族の意向で本人に疾患の件は知らせていなかった。貧血や血液の精密検査でしばらく入院が必要だと、虚偽の事情を母親に伝えていた。 ある日、父親が見舞いに病室に向かうと、ベッドに横たわる母親からこんな話を切り出された。 「

【実話怪談37】ホラー番組の鑑賞会

実話怪談37~40は、すべて女性Lさんに伺った話である。各エピソードは独立している。 本話は、彼女が小学2年のころに体験した話。 ある冬の日、自宅リビングのコタツで暖をとりながら母親とテレビを視聴していた。『本当にあった心霊体験』特集である。 母親はテレビの真向かいに座っており、Lさんは母親の対角線側に座っていた。番組が進行するにつれて耐え難い恐怖を募らせた彼女は、「こわいよぅ」と訴えながら母親の左隣に移動した(見出し画像の位置関係)。 番組の終盤に差し掛かったころ。

【実話怪談36】のぞき(アメリカ)

20年ほど前、女性Fさんが米国・カリフォルニアのアパートでボーイフレンドと同棲していた頃の話。 ある蒸し暑い夜、寝ていた彼女は目を覚ました。喉の渇きを感じ、ベッドから出てキッチンに移動する。電気は点けていない。コップに水を注ぎ、ごくりと飲み干す。そしてベッドに戻ろうとしたら、玄関に誰かが立っているのに気が付いた。 部屋が暗いためシルエットしか把握できないが、大人の男性のようだ。まるで壁面を這うヤモリのような体勢で、Fさんに背を向け、両腕と両脚を大きく広げ、手と頭をドアにぴ