操り人形

青い服の人形と赤い服の人形が並んで窓の外を眺めてゐます。

（あの角のところ、なんだか騒がしさうよ）
（あつちの通りは、いつも賑やかなんだ、向かうに広場があつて、人が集まつて来るつて）
（あ、何か動いてる）
（なんだらうね）
（見えた、人形遣ひだわ、犬の人形よ）
（それと、ギター弾きもいつしよだ）
（まあ！本当の犬のやうに動いてる）
（上手だね）
（みんな拍手してゐるわ）
（ごらん、こつちへやつて来るよ）

（わあい、ギターもにぎやかで楽しさう…
　ほら、また、みんな笑った）
（可愛いね）
（ほんとに、生きてるみたいよ）
（あの犬、糸で繋がつてるんだ…）
（でも、そんな感じしないね、自分で動いてゐるやう）
（手の動きが犬と一体になつてるんだね）
（ぴよんぴよんはねたり、転がつたり…）
（人形遣ひの表情も楽しさうでいいねえ、犬になりきつてるのかな…）
（ほら、あの犬、こつちを見て立ち上がつたわよ）
（手を振つて応へたいけれどね…）
（わたし、笑顔で応へたよ）
（お辞儀をしてくれた）
（犬さあん、ありがとう）
（聞こえたのかな、首をかしげて…で、また音楽に合はせて踊りだした）
（やつぱり生きてるよ、あの犬さん）
（僕たちには、さう見えるね）
（子どもたちも、きつと生きてると思つて、いつしよに遊んでるのよ）
（みんな、角を曲がつて行つたよ…）
（また来てねえ…）

（………）
（………）
（………）
（………）

（お兄さん、眠つてるの？）
（起きてるよ）
（眠つてるかと思つた）
（ちよつと考へ事してたんだ）
（何を…？）
（何でもない）
（今日は楽しかつたね）
（うん、君と居ると楽しい）
（うふ、何言つてんの）