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『シン・ゴジラ』戦後70年目の日本の戦争を霞が関内部から描いた作品

!Attention! ネタバレがあります。

こんにちは。はじめましての人ははじめまして。
小説を書くための勉強として、映画を見て、感想をまとめていこう!
という記事です。

映画全体を見た1人の視聴者としての視点(演技と映像について)と、物書きの視点(シナリオについて)で感想をまとめてみました。

今回は数年前にかなり話題になっていた『シン・ゴジラ』です。流行り物に疎いので、大体数年のブランクを経て見るタイプです←←

※2020年12月現在、Amazonプライムで無料で見られます。
※1時間59分、2016年、日本。

【あらすじ】東京湾より現れた巨大生物ゴジラによって都内が蹂躙される。危急の事態であってもお役所仕事でしか動けない日本組織、私を投げうって貢献する人々、干渉してくる外国。あるもので最善を尽くし、ゴジラに立ち向かう物語を官僚視点で描写。

あらすじのまとめ行きまーす。
序破急の3段階で分けて書いています。

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【序】ゴジラの脅威と、日本組織の鈍重さを見せるターン
東京湾から謎の巨大不明生物が上陸。急遽、災害緊急事態宣言がなされ、自衛隊に戦後初の防衛出動、武力行使命令が発令される。

しかし、逃げ遅れた人がいたことがわかり攻撃が中止される。巨大不明生物は海へ帰っていく。

【破】ゴジラの調査・対策の動向、外国の反応などを見せるターン
巨大生物の生態を分析・対策を練る対策チームが官房副長官(主人公・矢口)をトップとして作られる。

米国特使から、核廃棄物の海洋破棄を原因とした核および放射能適応生物(=ゴジラ)の登場を予期した研究者がいたという情報提供がある。

対策チームの調査・検討により、「ゴジラが体内に原子炉のような器官を持ち、巨体を動かすための大量のエネルギーを製造していること、そのための冷却装置として血液循環を用いている可能性が高い(※1)」という仮説が出される。

そのため「血液凝固剤により冷却機能を強制的に止めれば、ゴジラは熱を作り出すのを辞めて死ぬか、停止するかするであろう」という血液凝固剤投与作戦=矢口プランが起案される。

しかし矢口プランの準備が整わぬまま、ゴジラが鎌倉に再上陸し、都内方面に移動を開始。ゴジラはさらなる進化を遂げており、自衛隊の弾幕射撃では全くダメージを与えられない。

米軍から「アメリカ大使館を守るため」という名目で戦闘機が乱入してくるが、ゴジラは背びれと口からビーム光線を発射して米軍戦闘機を破壊。さらに都内を火の海に変えた。その際、指揮を執っていた総理および多数の大臣が死亡する。理由は不明ながら、ゴジラが停止する。

急遽新内閣が組閣される。政府機能および矢口たち対策チームは拠点を立川に移し、ゴジラ対策・住民避難などを進める。

ゴジラはおそらく体内にエネルギーを貯めており、完全に貯まり再び動き出すまで2週間程度という予測がでる。ゴジラへの危機感から国連主導で多国籍軍が結成され、「2週間後にゴジラに核ミサイルを使用するため該当区域より避難せよ」と日本に通達がくる。

【急】ゴジラ討伐作戦=最終決戦
なんとか間に合わせようと準備を進めてきた矢口プランの用意が整う。臨時総理に作戦実行許可を乞い、「日本に3度目の核を落とされるのを容認するくらいなら、できることをしよう」と許可が出て、作戦が敢行される。

被害はあったものの、ゴジラを無事止めることができた。しかし核ミサイル発射は一時停止しただけであり、もしゴジラが再び動き出したときには発射されることに決まった。
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※1、原子炉においても熱が上がりすぎないように冷却水、大抵大量にある海水を用いている。そのため原発は海辺に作られる。同じようにゴジラは血液で体内の熱を冷やして適温に調整し、温まった血液を皮膚近くを通すことで冷やし、また冷却水として使う、という血液循環による冷却を行っている可能性が高い、という意味かと。

※2、矢口プランは最終的に「ヤシオリ作戦」という名前に落ち着きます。「ヤシオリ=八塩折之酒」とは、八岐大蛇を退治するときに、八岐大蛇に飲ませた酒のことです。また実行部隊は「アメノハバキリ=天羽々斬」という退治に用いられた剣の名前がつけられています。

調べたことを全部書いておく貧乏性です。

【映画好きとしての感想】リアルさは面白さにつながる

ゴジラシリーズは多数作られていますが、「キングギドラに攫われた子どもたちが繭っぽいところに捕らわれてた、ような?」くらいの朧気記憶しかなく、なにを見たのかも定かではないような有様なので、これまでの作品と比較できないのが残念です。

ですが、今作だけ見ても十分楽しめる映画でした。

演技、映像の面から語ります。

演技は全員うまかったです。私の言う「うまい」とは、「まったく演じている感じをさせない」という意味です。下手な人だと、台詞が固かったり、「そこでそんな顔はしないだろ……」という表情をしていたりします。

そういう点が違和感につながり、違和感があるとストレスになり、没入感がなくなり、没入感がなくなると「作品の外(作ってる人、演じている人)が気になる」となります。つまり、映画がおもしろいかおもしろくない以前に、「映画作るの、演技するの下手」が先に来てしまいます。

一言でいったら完成度が低い、になります。

今作はそういったストレスがまったくなかったので「演技上手い」と思いました。

次に映像ですが、序盤のあきらかなCGっぽさが気になりましたが、全体的に違和感=ストレスがなく、よかったと思います。

ラストのゴジラ成体の完成度がとても高かった分、「序盤のCGっぽさはもしかして往年の特撮らしさを表現したくて、あえてそういう風に作った???」と勘繰ってしまいました。

私は小説=文字を表現媒体に選んでいます。そのためか、映画においてもまずシナリオありきで、それを伝えるための演技、映像という見方をしています。そのため「ストレスなく観客に伝えられているか」が媒体つまり演技、映像としての良し悪しの判断基準になっています。

俳優さんの美しさ、映像の美、撮影手法、美術を判断基準にしている人もいると思いますし、それは人それぞれで、前述の評価はあくまで私基準での評価でしかないですと一応メモメモ。

てか私は、そこを判断するだけの目と知識が足りない気がします。

【物書きとしての感想】戦後70年の日本の戦争であり、日本はまだ変われてない部分はあるけど、変わらない良さもある、と感じた。

劇中、先の太平洋戦争を意識した言葉が多々出てきます。

ゴジラに対して「ま、すぐに解決できるでしょ」と楽観視したお偉いさんに、主人公が「先の戦争ではその楽観で大量の国民が死んだ」と諫めます。

「3度目の核をよりによって東京に落す、か」というのもそうです。

戦争を厭い、ようやく築き上げてきた現代日本の民主主義組織は重すぎて、迅速な対応が取れません。戦後70年、正確には71年目の戦争と言ったのは、おそらく日本が戦争をはじめるとしたら、内閣府のなかでは同じような右往左往がありそうだなと思ったからです。ある意味、戦後新体制における初陣のぎこちなさと不慣れ感が描かれていたと思います。

一方で「それでも日本にだって良さがある」という主張が混ぜ込んである感じがしました。

ラストでは、総理および大臣をうしない、外国からの圧力もあり、物資も間に合うかの瀬戸際でぎりぎりです。それでも「あるもので最善を尽くす」と主人公たちは行動します。

資源が乏しいと言われてきた日本において「あるもので最善を尽くす」っていうのは昔からやってきたことだよな、とこのnoteをまとめていて気付きました。

それが「物資を気力で補う」という先の大戦の方針に繋がってしまったのだと思いますが、それのおかげで日本が技術でのし上がってきたのだとも思います。そういう意味でのハングリー精神がよかったです。

題材は「ゴジラ=巨大不明生物」、メッセージは「日本ならではの良さも悪さもあるけれど、日本が好き」かな、と思いました。

ジャンルはなんでしょうね……アクションではないし、サスペンス要素はあるものの、「生きるか死ぬか」という極限なハラハラ感はないですし……。特撮映画は「特殊撮影を使っている」という撮影手法によるジャンル区分だと思うので、物語のジャンル区分ではないと思っています。

SF映画が妥当かもしれません。サイエンスフィクションではなくスペキュレイティブ・フィクションよりの。


スペキュレイティブ・フィクション (Speculative Fiction) とは、さまざまな点で現実世界と異なった世界を推測、追求して執筆された小説などの作品を指す語。
(引用:スペキュレイティブ・フィクション 、Wikipedia

ちなみに今作のキャッチコピーは「現実(ニッポン)VS虚構(ゴジラ)」だそうです。この映画を端的に表したすごくわかりやすいキャッチコピーだと思います。すごい。

【まとめ】「現代日本にもしゴジラが現れたら?」をマジになって考えてみた映画。「こんな深くまでマジになって考える人がいるのか」と感動するためにも見てほしい。

昔風にいえば、「そんなことを本気で考えるなんてバカバカしい」になるのでしょうが、私はおもしろいと思います。同じようにおもしろいと思った人がたくさんいたから、今作がヒットしたのかな、と。

なんでバカバカしいと思わなくなったのか考えてみましたが、それこそ戦後は生きるかどうかという厳しい生活が多かったのだろうし、絵空事を考えている時間も、それを楽しむ余裕もなかったのかなと思います。

国民総出でこういう映画を楽しめるようになったのは、日本が豊かになった証拠なのかもしれないですね(待って何の話だっけ)

お子さん……にはちょっと難しいかもしれませんが、「ここまで深く(それこそバカバカしいほどに突き抜けて)考えられる人がいるんだ」という感動をぜひ味わってほしいです。

ではでは。


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