unity1week「イロナシのカナタ」振り返り
2022年5月18日に公開した「イロナシのカナタ」についての振り返り記事です。
「イロナシのカナタ」は↓こちらから遊べます。
1.どんなゲームを作ったのか?
「色を失った世界から色を取り戻していく、少し熱いアクションパズルゲーム」です。
ゲームルールについてもざっと説明しておきます。
Zボタンを押すとプレイヤーの周囲の色が変わります。
この時、赤緑青のマモノを「一色ずつ」円内におさめているとマモノが消滅します。
マップ内の全てのマモノを消滅させるとステージクリアです。
ステージを進めるにつれて、マモノの色を変えるスライダーやマモノを引き寄せる技が使えるようになります。
2.なぜ作ったのか?
作りたかったから、というのはもちろんなのですが、なぜ作りたかったのか、どういうところを狙って作ったのか振り返ります。
2-1. 動きのあるゲームを作りたかったため
「動きの少ないパズルゲームで高評価を得るゲーム作家『とぶ』」というイメージにならないよう、今回は動きのあるゲームを作りたかった、というのが理由の一つです。
これまで僕がunity1weekで高評価を得たゲームは共にパズルゲームです。
一つは「窓の中の先にあるもの」
そして、もう一つは「観測者は正方形の窓からネコをながめる」です。
この2つのゲームは共に、「プレイヤーが操作しない限り他のオブジェクトは動かないパズルゲーム」です。
unity1weekの評価は、なるべく多数の人に良い評価をもらえると高い評価を得られやすい、と僕は考えています。
その点、上2つのパズルゲームはプレイヤーの操作スキルはそれほどは求められないため、内容を楽しむことができれば多くの人に評価を得られやすいです。
もちろん、パズルゲームを作れば高評価を得られる、というわけではなく、発想力や世界観作りも評価されたものと思います。
(正直、自分でも「なぜこれを思いついた?」と思うくらい発想については冴えてました)
他「シムアクト」「農場娘は5秒ごとに増殖する」といった動きのあるゲームも決して悪い結果ではないのです。
しかし、上2つのゲームの印象が強くなってきたため、再び「シムアクト」や「農場娘は5秒ごとに増殖する」といった動きのあるゲームで挑み、そこで高評価を得たい、という想いがありました。
「シムアクト」
このゲームの世界観やキャラ好き!
「農場娘は5秒ごとに増殖する」
unity1week初参戦ゲーム。振り返ってみると初参戦にしては荒削りながら意外と頑張ってた。
結果、今回作った「イロナシのカナタ」は赤緑青の色をそろえる、というパズル要素があるもののアクション性の方が強いゲームになりました。
2-2. 体験を強調する、という行為を実践で活かせるた試したかったため
今回も「体験を強調する」と言うところを大切にしてゲーム作りを行いたいと思いました。
「体験を強調する」ということについてはunity1week共有会#3「失敗から学ぶゲーム制作」参照。
「イロナシのカナタ」はマモノの色をそろえて、マモノを消滅させるのが大事なゲームですから、背景の色は無くした方がより「体験を強調できるのでは?」と考えました。
そこでマモノを全て消滅させるまでは灰色の世界を歩き回る、といった世界観にしました。
2-3. ゲームの途中で変化を入れたかったため
YutakaKINJOさんのunity1week共有会#7発表『エンディングまで連れて行く「プレイ体験」』を視聴し、途中で変化をつけたい、という風に考えました。
「窓の中の先にあるもの」も「観測者は正方形の窓からネコをながめる」も思えば、最初から最後まであまり変化をつけないゲームでした。
(細かな変化は付けてます)
「イロナシのカナタ」はストーリー挿入や、ボス戦導入、後半ステージの変化などを用いて変化をつけました。
2-4. 誰でもクリアできるゲームを作るため
動きのあるゲームで多くの人に評価してもらうにはどうすればいいのか?
それを考えて、「イロナシのカナタ」にはゲームオーバー後、即強制的にステージを再チャレンジする作りにしました。そうすることによって、途中で挫折することなく多くの人にクリアしてもらえるのではないかと考えたためです。
2-5. クリアした時に良かったねと思えるゲームを作りたかったため
これもYutakaKINJOさんの発表に影響されていますが、クリアした時の満足度が高かったら評価高くなるんじゃないか? という仮説ができました。なのでボス戦後、エンディングからタイトルまで綺麗につなげてみました。
2-6.次の企画につなげるため
最後は僕の作るゲーム全てに言えることです。
常に新しい企画を考え、世に出していかないと人生が停滞してしまうため、次の企画につながるように矢を用意するのです。
3.結果は? 今回の評価
結果はこれまでの自分のゲームと比較して、思わしくありませんでした。
楽しさ 3.48
絵作り 3.68
サウンド 3.74
操作性 3.08
雰囲気 4.08
斬新さ 3.64
おぉ、ランキング、オール圏外。
4.それぞれの思惑はうまくいったのか?
4-1. 動きのあるゲームを作りたかった
これはうまくいってないですね。これが一番うまくいってないですね。
数字で出てます。
操作性「3.08」。これはいかんでしょう。
なぜ、こうなったのか?
理由としては、僕がunityで作る(多分)初めてのアクションゲームであったためというのがあります。
アタリ判定まわりがかなりいけてなかったんじゃないかと。敵や敵弾との当たり判定をもう少し小さくし、スライダーの当たり判定を大きくしたかったのですが、気づいた時には後の祭。どういう構造にすればそのように改善できるのか想像もつかず、他のことに時間を多く費やしてしまったため調整期間も取れませんでした。そのため「なんとかなるか? えいやー」で出してしまいました。スライダーの操作がかなりいけてない……
アタリ判定でいけてない箇所は他にもあります。
ステージ2の渡り橋。調子に乗って、渡り橋なんて作ってしまったのですが、ここがいけてない。見た目と実際の当たり判定にズレがあり、気持ちよく橋を渡れないんですよね。なぜ、これを作った……しかも目立つ序盤に。
もう一つ、スライダー使用後、画面端で立ちポーズに戻った時がちょっと無防備なのもいけてない。1秒の無敵時間を設けてみたけど、焼石に水だったかも。
最後に、Zボタン使用後に敵弾が消えずに弾が直撃することもあったのですが、「頻度少ないしなんとかなるか? えいやー」で出してしまいました。
4-2. 体験を強調する、という行為を実践で活かしたかった
これもうまくいってないですね。リリース後、SNSやunityroomに届くコメントを見ていて気づきました。
行為的な反応をいただけるのはとても嬉しいことで、喜んでもらえる人がいることがわかり、いいゲームを作ることができた! という一定以上の手応えはありました。
その一方で、SNSの反応やunityroomのコメント数がこれまでと比べて少なめなのは気になっていました。
「体験を強調する」という課題がクリアできたかどうかの一つの目安は、動画やゲームの内容を見て、多くの人から反応が得られること。
その視点で見ると「体験を強調する」という課題はクリアできていない、と感じました。
僕はこの「引っ掛かりを持つゲームを作る」あるいは動画を作るというところが弱いのではないか? と思っています。
世の中には、狙ってか狙わずかSNSで自作ゲーム動画を投稿し、多くの「いいね」をもらえる方たちがいます。
僕にはそれが狙ってできない。
これから先、インディーゲーム開発で生きていくには、ゲームの内容の良さがあるかどうかの他に、何か引っかかるものがあるかどうかも大事だと思ってます。それが今回もできてないですね。
また、困ったことに、この「体験を強調する」という課題をこなすため、実装コストが跳ね上がったと思います。
灰色と色のある2つの世界の構築。Zキーを押した時の色が広がる気持ちよさ。
こういうところで工数を割きすぎて、アクションゲームに大切な当たり判定がいけてないのに気付くのが遅れたとか……本末転倒ですねぇ……
4-3. ゲームの途中で変化を入れたかった
ここは満足している一方で、工数かけすぎではないかと思います。
ボス戦が「ボスの体力表示がある」+「敵が途中で登場する」という特殊仕様なんですよね。
ボスの体力あることに気づくかな? 演出を入れる時間が取れてなかったので、中途半端になってしまったかもしれないです。
ただ、ゲームのメリハリ、盛り上がりはできたと思うので、良かったとは思うのですけれどもね。工数計算ができて、実装ペースが早ければ……
4-4. 誰でもクリアできるゲームを作る
これはできていたのかな? まだ他の方のプレイ動画観てないのですよね……動画観るのちょっと怖いですが……
そして、一つ言えることですが、誰でもクリアできるゲームを作る前に、誰もがクリアしたいゲームを作ることが大事なんじゃないか、と思いますです。
追記:実況者の方の動画観ましたけど、プレイスキルが高い方だったため、きちんとクリアできてました。
4-5. クリアした時に良かったねと思えるゲームを作りたかった
タイトル画面に戻った時は綺麗と思ったのですが、タイトルに戻したことで逆に「あれ? これ終わったのかな?」と思っちゃって、クリアしたかどうかわからなかったかも?
4-6.次の企画につなげるため
これは良い。うまくいかなくても挑戦して、結果ゲームが一本できたのならば、それは今後何十年か創作の世界で生き続けていくための糧の一つにはなるはず!
5.まとめ 気づき
さて、このように「イロナシのカナタ」は僕の中では思わしくない結果になってしまったゲームですが、気づきもありました。ここがすごく大事!
5-1. unity1weekは力技だけで評価を得られるようなイベントでは決してない
上位入賞者は防御力が高い、と巷でよく言われます(言われてないかも)
防御力が高い、というのは絵作りや演出などの完成度が高く、マイナス評価を受けにくいゲームのことを指します。
けれども、今回の「イロナシのカナタ」と前々回の「あにさつ・ちゅう」は、工数的には「窓の中の先にあるもの」や「観測者は正方形の窓からネコをながめる」より工数がかかっているゲームだったと思います。
絵作りや演出も決して手を抜いた気はありませんでした。
「あにさつ・ちゅう」
正直自分の力不足。企画の敗北。
しかし、結果はこの記事のとおり。
これは僕にとってはとても良い気づきです。
当たり前なことかもしれませんがunity1weekの評価はかけた工数より、内容、面白さ、アイデアが高く評価される、ということが改めてわかったためです。
もちろん、上位陣はとんでもない工数をかけているゲームが多いのですが、それは元の企画が輝いているからこその話。工数かけるだけで上位陣に並ぶことができるわけではない、ということがはっきりとわかりました。
大事なのは「企画力」「工数を抑えるための仕様決定能力」であるんですね。「企画力」が高ければ評価されますし、「工数が抑えられれば調整に時間を割けられる」。それが大事。
実装力は今の自分くらいの実装力があれば十二分じゃないかと思います。
つまり、企画に時間かけなさい、企画に時間をかけて良い企画を作れば、僕でも勝機がある(ってか、むしろ僕はそこで勝負するべき)と言うことがわかりました。
僕はゲーム制作能力は高い……とは言えないですが、発想力や企画力については高いかどうかはさておき、独特のものを持っている、という自負は僅かながらにあります。
人と違うものを考える能力。
ゲームの演出とかなんだとかに工数割きはじめる前に、もっとこの強みを活かすために時間使っていいんじゃないですかね……
5-2.狙いを一点に絞れ
「体験を強調する」ということができてなかったのは、なんだかんだで色々付け加えすぎちゃったから、だと思います。
スライダーとか引き寄せとか本当にいるのか? ボス戦はいるか?
ボス戦熱いからボス戦いる、としたらボス戦以外はいるのか?
色々付け加えすぎた結果、「色を揃えるアクションゲーム」としての評価ではなく「アクションゲーム」としての評価になってしまった気もします。
5-3.ルールをわかりやすく
マジでこれ。
これは今更アレだけど『なぜ赤緑青「一色ずつ」』にしたのか……
いずれかの色3色じゃダメだったのか? 「一色ずつ」ってわかりにくくないか? さらには「円内ってわかりにくくないか?」等など思うのです……
5-4.いけてない箇所はなんとかならない
開発者が「いけてないな」と思っている箇所ってプレイヤーから見たらなおさら「いけてない」わけで、なんとかなるはずがなかった……
まとめのまとめ
以上、「イロナシのカナタ」の振り返りでした。
今回の敗因は企画力の敗北+無駄なところに工数かけすぎ……
土台が悪ければ防御力を高めても足元がぐらつくだけですね。
でも、気づきで得たことは大きかった。
現在開発中の企画も、どうにも企画がしっくりこなくて、ワクワクもしないので見直した方が良いでしょう、ということがハッキリしました。
時間をかけてでも、じっくり腰をすえて見直していこう。
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