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それでもゲーム業界でスケジュールが必要な理由

ゲーム業界で正確なスケジュールを立てられない理由」では
ゲーム業界でスケジュール通りにゲーム制作を進めることがとても難しい話をしました。

では、難しいのならばスケジュールを守らなくていいのか、
というと、僕はそうではないと考えています。

ここでは、ゲーム業界でスケジュールが必要な理由を4点述べます。

理由その1 今進んでいるか遅れているか判断できるため

スケジュールを立てるときは
ゲーム開発開始からリリースまでのスケジュールをひととおり立てます。

すると、スケジュールが遅れた時にどのくらい遅れているのかわかります。

つまり、
「このままではリリースに間に合いません!」と悲痛な叫びをあげることができ、「待った」をかけられるんですね!

スケジュールがないと、この「待った」がかからず、
「今遅れているか進んでいるかわからないけど、毎日が忙しい……」
「一つのタスクを終える前に別のタスクがどんどん積みあがる……」
といった終わらない日々が続きがちです。

理由その2 各タスクの締め切りを設定できるため

もっと絵のクオリティを上げたい。
もっとバトルを面白くしたい。
もっと演出を凝りたい。

開発チームにはこのようにゲーム制作を通じて何かを表現したい、
表現者が多く集まることもあります。

一つずつ納得のいくところまで突き詰めることができれば
すばらしいゲームができあがるかもしれません。

しかし、1から10の工程のあるタスクのうち、はじめの1のタスクにこだわるあまり、残りの9つのタスクにいつまでも着手できないようであれば、ゲームは一向に完成しません。

個人制作であれば、そのような姿勢も良いとは思いますが、
会社で作るゲームは毎月会社が社員にお金を払って作るものです。

皆が皆、締め切りを設定せずこだわっていけば、
やがて会社は疲弊していき、社員に払うお金も底をつきます。

全体のスケジュールを決め、各タスクの締め切りも決めることができれば、
そのような悲劇を防ぐことができます。

ちなみに僕もこだわる方です。
主にゲームのパラメータにこだわるタイプです。

そして、これまで特に締め切りを切っていない個人制作のゲームも含め
数十のゲームを作ってきましたが、納得のいくパラメータ設定ができたゲームは一つもありません。

つまり、こだわりってどんなにこだわっても、
自己評価で100点をつけることはとても難しいと感じています。

80点から先は1点上げることも困難。莫大な時間がかかります。
締め切りがきて、悔しい思いをしながら配信を迎えることも多いですが、
締め切りがあるからこそ、次のタスクへと気持ちを切り替えることもできるのです。

理由その3 優先度を決められるため

ゲームは様々な画面の塊です。
タイトル画面、バトル画面、ストーリー画面、ガチャ画面……

また、様々なデータの塊でもあります。
キャラ、背景、武器、ウィンドウ、SE、BGM、エフェクト、パラメータ……

会社のゲーム制作は一度に数人~数十人の制作者が
これらの画面仕様作成やデータ作成を同時に進めていきます。

マネージャーやディレクターは作業に滞りがないか、
出来上がった成果物に問題がないか、常に目を光らせています。
僕の目は実際に光るわけではないですが……

とにもかくにも、そのような現場の中で度々出てくるのは
「次はどの作業を行えばよいのでしょうか?」という問い合わせ。

タスクを最初から最後まで並べればそのような確認は出てこないと思いきや、実際には割り込み作業が入ったり、予定していたタスク通りに事が進まなかったりして、次の作業の確認が行われることが多いです。

予定通りにいかない例としては、たとえば、
「8月からキャラの制作を開始する予定だったのが、
諸事情でキャラの制作に着手できない」等ですね。

そういった時にゲーム全体のタスクの洗い出しが行われていれば、
次に行うべき、優先度の高いタスクに気づくことができます。

理由その4 複数の選択肢がでたときにどれを選ぶかの判断材料になるため

会社のゲーム制作でも、初期に決定した仕様が全て最後まで残る、
ということはほぼないと思います。

大抵、途中で問題が出てきたり、
ほかに良いアイデアが浮かんだりして、仕様の変更が入ります。

そして、そんな時によく出てくるのが、A案、B案どちらで進めるかという話です。

A案は工数がそれほどかからずに実装できる。
B案は工数が大分かかるけれども、A案よりメリットがある(面白い、操作性に優れている等)。

こういった選択肢が現れた時に、スケジュールがあると、
「今回はスケジュール的に厳しいのでA案で進めましょう」といった話や
「B案の方が面白いのでB案で進めたい。
 スケジュールがはみ出るが、比較的優先度の低い〇〇の仕様をカットしたらどうだろう?」
といった話ができます。

A案、B案どちらで進めるか、といった話がでてきた時に
全体のタスクを洗い出せていないと沼にはまることがあります

「B案の方が面白いのでB案で進めたい」
「スケジュールが間に合わないのでは?」
「間に合わないという根拠がわからない。面白いからB案で進めるべきだ」

といった結論になると、削減される工数もなく、工数がどんどん増えていくのですよね……

まとめ

さて、いかがでしたか?

スケジュールって本当に立てるの難しいです。
僕は超絶苦手なので、ここで話したことを実践できているかというとあまり実践できていません。

また、スケジュールを重視するかしないかは、
制作チームのメンバーやプロデューサーの個人差もあるため、
一人だけがスケジュールを厳守しようと思っても
スケジュールが回らないケースもあると思います。

ゲーム業界で正確なスケジュールを立てられない理由」で
話したようなスケジュール遅延は、どのようなプロジェクトでも必ずといっていいほど起きます。
手を替え品を替え、何度も起きます。

そんな中でスケジュールを滞りなく進めることができるマネージャーさんが身近にいるとすれば、そのマネージャーさんは超人か変人かアニメキャラか何かだと思います。

そのようなマネージャーさんは、おそらく、チームメンバーのために
常時頭をフル回転していると思いますので、そういうマネージャーさんがいましたら、倒れないように支えてあげてください。

ではでは。最後まで読んでいただきありがとうございました!

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