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「追伸、地の君へ」

いつだつて頬笑んでゐた
そんな訳はないが
春風に、夏影に、秋晴れに、冬空に
君の笑顔が浮かんでゐる。
でも今はただ風に揺れる
空つぽな雲だけが浮かんでゐる。
鳥さへも飛び去つた
夕暮れに雲だけが浮かんでゐる。

遠雷を稲光らせる
あの恐い雲になりたい。
野を分けて日をこもらす
あの怖い雲になりたい。
古ぼけた民屋を吹き飛ばす
あの恐い風になりたい。
命の電線を引き散ぎる
あの怖い風になりたい。
さうして君に気づいてほしい。
でもほんたうは、
君の頬を撫でる夏の風になりたい。

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