まるでSF映画!?世界で初めて"昆虫型の飛行ロボット"の作製に成功
SF映画に出てくる「昆虫型の飛行ロボット」。
ー小回りのきく小さな体で飛び回り、スパイのように狭いところに忍び込む
昆虫型の飛行ロボットにはそんなロマンを描いてしまう。今回紹介する研究では、世界で初めて、昆虫のように素早く空を飛び、ホバーリングすることのできる「昆虫型の飛行ロボット」の開発に成功した[1]。
最も俊敏に飛び回る昆虫、ハエ
ハエは、最も素早く飛び回る昆虫として知られている。この「俊敏さ」の仕組みを紐解けば、俊敏に動き回るロボットを作ることができる。
ー なぜ俊敏な動きができるのか?
この謎は、「空気を竜巻のように操る仕組み」と「軽く高い推進力を生み出す筋肉」によって生み出されていることがMaらの研究[1]によって明らかになってきた。
彼らの研究の前身となる、ハチドリの研究[2]も非常にユニークな研究だ。ハチドリが空中に留まることができるのには、空気から竜巻のような渦を生み出し、その力を外側に放出するためである。
この原理はハチドリだけでなく、ハエや他の昆虫が空中で"ホバリング"する機能を持つ理由になっているのだと言う。
しかし、これらの研究だけでは、ハエのようなロボットを作るには不十分であった。特に、高い飛行能力をハエと同じサイズで再現するには、装置を小型化し、効率よく空気の渦を作り出す、新たな材料が必要であったのだ。
そこでMaらは、高出力かつ高密度の圧電飛行筋肉を開発した。この人工筋肉は、電流を流すと収縮し、羽ばたくように振動する。
さらに、この人工筋肉に流す電流を、空気場を基にコンピュタによって非常に細かく制御することで、非常に高効率の「羽ばたき」を再現したのだ。
彼らの出した成果は、昆虫のような人工的な飛行を実現するためのアプローチを与えることにつながると考えられる。
ハエ型ロボットはドローンを進化させる?
近年話題となっているドローン。
その応用の幅は単なる映像撮影だけでなく、配送・運送など、様々な応用先が期待されて止まない技術だ。
そして、ドローンにとって重要なのは、「どれだけ重い荷物を素早く運べるか」である。
配送・運送業にドローンを用いる上で、効率よく荷物を運ぶことが重要であるということは明白だ。
効率が悪い運送方法である限り、多くの企業が参入することはないだろう。
しかし、この技術はドローンに「浮遊力と素早さ」を与える可能性がある。圧電飛行筋肉を用いて、空気の渦を起こすようにしておけば、可能性は無限に広がる。
一気に多くのものを運べるようになるかもしれないし、より俊敏な動きで細かい路地でも正確に運送ができるようになるかもしれない。
今までヘリが入れなかった場所でも、素早い動きを生み出すことができるハエ型ドローンを使えば入れるようになれるかもしれない。
このように、ハエ型ロボットは、ロボットだけに留まらず、様々な応用先を与える革新的な技術になるのだ。
課題と今後の研究
しかし、これらの大量生産はいまだに難しい。また、サイズが小さいほど精密な制御になるため、より高機能な素子が必要になるであろう。
さらに、強靭性の改善も大事だ。
空を自由に飛び回るには、鳥などの動物にも気をつけなければならない。さらに、低圧な環境や寒い環境、霜などにも耐えうる「頑強な」素材が必要だ。
軽量化するだけでは頑強さが不足し、実用化はできない。
近年着目されている高分子や、より多くの生体模倣材料など、様々な技術による改善が、運用をするためには重要になってくるだろう。
参考文献
[1] Ma, K. Y., Chirarattananon, P., Fuller, S. B. & Wood, R. J. Controlled flight of a biologically inspired, insect-scale robot. Science 340, 603–607 (2013).
[2] Ellington, C. P., van den Berg, C., Willmott, A. P. & Thomas, A. L. R. Leading-edge vortices in insect flight. Nature 384, 626–630 (1996).
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