身を焦がすような恋をした人との再会
中学時代、猛烈に恋をしていた男の子がいた。
なんとなく儚さを感じさせる雰囲気の男の子。
中三の時、同じクラスだったけど全く話すこともなく、奥手な私はずっと目で追ってばかりだった。
それはもう好きで好きで、学校に行く度に苦しくて、家に帰っても苦しくて、
それまで人を好きになったことはあったけど、今までの恋は全部恋ではなかったんだと思うくらいに好きだった。
さすがに彼も私から溢れる恋心に気づいてたと思う。
思い違いだったら恥ずかしいが、彼も私を好きでいてくれてたんじゃないかなと感じることもあった。
本当のところは分からないけど、そんなことに期待しながらときめく中学生活を送っていた。
きっと、あの頃の私たちは、私たちにしか分からない何かで繋がっていた。
あれから時間も経って、他の人とも恋をして、
彼の存在はだんだん薄れて、それでもずっと心に残っていた。
元彼はだいたい嫌な記憶として脳に刻まれ、
自分の頭の中から追い出したくなる。
だけど彼の存在だけは綺麗なまま心にいた。
先日、塾のバイトを始めるために説明会を聞きに行き、塾長から説明を受けていた時のことだった。
理系科目は苦手なので文系科目だけでお願いしたい、という趣旨の話をしたら、
「じゃあ理系は○○くんに頼もうかー」
彼の名前が出てきて、電撃に打たれたように体が固まった。
なんと、あの彼も、この塾でバイトを始めるらしい。
しかも大学が一緒だった。
そして今日、3年越しに塾の講習会で彼と再会した。
講座が始まるまでの時間、待合室で彼と向かい合わせに座ることになった。
すると意外にも彼から話しかけてくれた。
「中3の時同じクラスだったよね」とか、「久しぶりすぎて緊張してる」とか、とにかく無口なイメージの彼だったから、話してくれたことに少し驚いた。
まるで違う人と話してるような気がした。
この3年間で私の知らない彼に変わってたんだね、きっと。
彼を前にして、もう胸が苦しく高鳴ることはなかった。
私も変わったんだよ。
この人を想いながらどれだけラブソングを聴いたかなー、と考えながら久々の彼を眺めていた。
背も伸びてスーツを着た彼は、中学生の時よりずっと大人っぽくなっていた。
それでも相変わらず優しくて素敵な人だった。
でもこの先恋に落ちることは無いと思う。
もうお互いにあの頃とは別人なのだし、
今私には大好きな人がいるし。
それでも、あんなに好きだった彼とまた会えると知った時は正直胸が踊った。何度も好きと伝えられなかったことを後悔したから。
恋をしていたあの頃は、恋のせいで上手く話せなかったけど、3年越しに楽しく会話できたことが嬉しかった。
今度は、恋愛抜きで仲良くなりたい。
そう思える人って人生でなかなか出会うことないと思うから。
そう思ってた人と再会できることもなかなかないと思うから。
良い友達になれそうだな。
塾のバイトも頑張れそうです。
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