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167「詩」うたが

遠い昔うたったうたが
ぽっかり空いた時間の隙間から
あの頃にすっぽりと
わたしを落とすのです

未来が眩しく輝いていたけれど
そこに続く道は見えないままだったあの頃
がんばれば
道は必ず見つかると信じていたけれど
がんばっても上手くはいかなかった

肩を落とした
秋の夕暮れ
みんなと同じ方向を
仕方なく見ることにした

流れにのまれて
ありふれた形の社会人になった

周りからおめでとうの言葉を浴びて
社会に出たわたしは
不甲斐ない自分に失望していた

楽なほうに流れていったあの日も
あのうたをうたっていたのです

すっぽり空いた穴から
あの頃のわたしを
あの頃の未来に立っている今のわたしが
見ています
違った未来にわたしは立ってしまったけれど
それでも
がんばってきたあの頃のわたしを
褒めてあげたいと思うのです


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