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一言だけの優しさ

NHK朝ドラ「虎に翼」を見ています。
今朝のドラマでは寅子が法律事務所に辞表を出しました。家に戻りお母さん(石田ゆり子さん)に報告しました。報告を聞いてお母さんは、
少し間を置き「あっ、そう。着替えていらっしゃい。」と一言だけ。

「あっ、同じようなこと昔あった。」と咄嗟に思い出しました。

大学を受験した時のことです。
私は東京の大学を選びましたので、栃木から受験会場に行くのは難しく都内のどこかに泊まらないといけませんでした。
私が悩んでいると、当時栃木の主任司祭だったエルネスト神父様が昔から仲良しのシスターが院長をしていらっしゃる修道院をご紹介してくださいました。久ヶ原にある「お告げのフランシスコ姉妹会」という修道院でした。今では修道院に個人的な理由で泊めていただくのは無理かと思います。当時はゆるい時代でしたから。

10日ほど修道院に泊めていただき受験しました。泊めていただいている間に受験した大学の合格も発表されました。発表されたどの大学も結果は不合格でした。
泊めていただく最後の日に発表になった大学も上手くいきませんでした。
客間一部屋を使わせていただき、清潔な寝具や食事も用意していただいたのに、いい結果を残せなかったことが申し訳なく辛い気持ちを抱えて修道院に帰りました。
修道院が近づくと玄関近くに立っている院長様に気づきました。

私に気づくと何も話語らず院長様はただにっこり微笑みました。
泣きだしたい気持ちを堪えて
「不合格でした。」と私はやっと一言言えました。
「あっ、そう。早くお部屋に入って暖まりなさい。」院長様はたったそれだけで他には何も話しませんでした。部屋に戻って、私は院長様の優しさに泣きました。

今朝のドラマを見ながら、その思い出が蘇りました。辛かった時にかけていただいた優しい言葉で立ち直れたこともたくさんありました。同じくらいに、
何も語らない優しさ、静かに気持ちに寄り添うだけの優しさが、心の芯から温かくしてくれて救われることもあったなあ。

優しかった人たちの思い出が次々に蘇ってくる朝でした。

お告げのフランシスコ姉妹会ホームページから

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