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【『デンタルクエスト』原作者セキアトム インタビュー】~原作者セキアトム先生と探る医療情報へのアクセスの仕方~ 中編

 漫画原作者セキアトム先生へのインタビュー記事の中編です。
前編はこちら。
https://note.com/moody_dent_info/n/n6fc3c21410bf
前編は、情報収集は専門家への取材を通して行い、ただそれを鵜呑みにするのではなく、他の専門家の意見や文献と照らし合わせて情報の信頼性を確認するという話でした。

ーーそれと、様々な先生から取材することで、コンセンサスがどれくらい取れているのかが感覚的に理解できるということでしょうか。


セキアトム 
そうですね。「体感で、経験でこうだと思う」とおっしゃられる内容については、持ち帰って論文などで調べるようにしてました。


ーー 論文も調べられたんですね(驚)


セキアトム
読みました。ただ論文も色々あるじゃないですか。論文が掲載されているジャーナルの信頼度も違いますし。論文として掲載されても、実はあんまり根拠にならなかったりすることもありますよね。そういうことも段々見極めるようになっていきました。正確さは非常に気を使っていたので、漫画には出典を記載していなくても、自信を持って書くために論文をあたるのは当然のこととしてやっていました。
コンセンサスの所では、先生方のTwitter(現在はXとサービス名を変更した)上のやり取りも参考にさせて頂きました。


ーー(おい、見られてるぞ!Twitterで発信している歯科関係者!)

取材を行ったり、論文も読まれるとなると、それこそ情報量が膨大になり、複雑な情報も増えると思うのですが、それを漫画にするときに気をつけた点はありますか?


セキアトム
読んでもらう相手が、自分がそうであったように、歯科のことをよく知らない読者さんであるというのが大前提なので、漫画で描く医療情報の優先順位は考えました。まずは枝葉より幹というか。枝葉は歯医者さん、あとは頼んだと(笑)。
もちろん枝葉の情報も大事なんですけど、漫画は教科書ではありません。医療情報を詳しく書いても、読んでもらえない。だから分かりやすさは非常に大事です。伝わる表現を試行錯誤しました。
成功してない部分ももちろんあると思いますが、それでも「読んで歯医者さんに行こうと思った」という反応を頂くと、そこまで達成できたなら良かったかなと思います。

ーー「歯医者さんに行こうと思った」という感想はとても嬉しいですね。多くの方からそういったポジティブな反応があったと思いますが、読者からのフィードバックで反発があったものなどはありましたか?


セキアトム
アプリのコメントなどで、たまにありますね。まぁそれは仕方がないと言うか、全員同じ意見じゃないですし、伝わらなかった部分は自分の力不足だったと思います。
でも、読んでくださってるんだなぁと。読んで頂いていること自体がありがたいな、と思います。最初はへこんだりもしましたけど、応援してくださる方々からの声もいっぱい届いたので、それは本当に嬉しかったです。

ーー 話は変わりますが、『デンタルクエスト』でのお気に入りのエピソードはありますか?


セキアトム 
お気に入り…印象深いのはフッ素の回(12話・13話)でした。
歯科のフッ素に関しては、反ワクチン派のように反フッ素派がいて、建設的な議論ができていない部分を取材でよくよく感じていたんです。NHKなどでもフッ素について放送すると、様々な抗議が来るというのも聞いていました。
少しアンタッチャブルというか、繊細なテーマなのは分かっていましたが、歯科漫画を描いていてフッ素を取り上げなくてどうすると。それでとにかく論文を読んだり資料をあたって、取材を重ねて、出せると判断できるところまで来てようやく書くことができました。 この回はドラマも好きだったので、お気に入りですね。

ーー 歯科業界に対する率直な印象を教えて下さい。


セキアトム
取材させて頂いた歯科医師や歯科衛生士の方達って、本当に懸命に患者さんのために取り組んでいらっしゃる方が多かったです。だからこそ歯科のことをもっと知って欲しいなと思いました。
今まで医療ドラマなどでも取り上げられなかったからか歯科業界って遠い存在で、本当に知らないことが多かったですね。あと、専門的な分野がこんなに細かくあるというのは、とてもびっくりしました。    
歯医者はむし歯になった時だけ行くところじゃないんだということが、漫画を通して伝わったら嬉しいなと思います。

ーー後編に続きます。

まとめ


前編に引き続き、「論文があれば正しい情報とは限らない」という医療情報を収集する上で重要な視点が出ました。論文の読み方は、非常に難しくそのジャンルの専門家でないとなかなか読みこなせないと我々は痛感しています。また1つの論文からなにか結論が出せることは珍しく、前編で出てきたように「批判的吟味」と「クロスチェック」が重要だと思います。

次回最終回、後編は、専門家や取材する立場でない一般の方が医療情報にアクセスする時に気をつける点や読者に伝えたいメッセージなど盛りだくさんの内容になっています。
お楽しみに!

トンデモ歯゛スターズの活動は、基本的に全てボランティアで行っております。本活動を持続可能なシステムにしていきたいと考えておりますので、是非ご支援いただけると幸いです。