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二年半ぶりにドイツで推しに会ってきた話④

カウントダウンが始まる。

ジョンウォンさんの鼻血シーンがコンサートの注意事項とともに、会場中の巨大スクリーンにドーンと映し出され、割れそうな悲鳴がドームに響く。今回の出演グループのMVクリップを使ったマナー喚起の映像が続き、場面が切り替わりって映し出されるアーティストが変わるたびに会場から大歓声が飛ぶ。私も『Gogobebe』のフィインちゃんの映像が映った時にこの日一発目の断末魔を発した。

Give me more noise!(もっと音出して)」とスクリーンが煽ってくるので、4万5000人が負けじと対応する。ああ、叫べるって最高。

ステージからスモッグが上がり、サイドスポットライトが点滅する。いよいよ始まるんだ...!まずはENHYPHENがステージに登場。肌感だけど会場のティーンはほとんどエンジンだった気がするくらい大人気で、会場が再び悲鳴に包まれる。続いて登場したのはNCT Dream。実は私は隠れペンというか普通にNCTが大好きなので、脳が考えるより先に気づけば「ジェミニ〜〜〜〜〜!!!かっこいい〜〜〜〜〜!!!ギェエエエエアアアア」と雄叫びを上げていた。続いてはアイドゥル!海外人気が強い印象だったがこれは本当だと思った。遠くからでもソヨンのカリスマ性が伝わってきて痺れる。

そしていよいよ、アナウンスがこう伝える。

Charisma on the stage, girl crush, Mamamoooo...!

同時に『mumumumuch』が流れ、ピンクの衣装をまとった4人がステージに向かって歩いてくる。パァンと頭の中で何かが弾ける。目から溢れ出す黒部ダム。ムボンを光の速さで振り回す。ううぅうぅぅぅぅぅうわあああああ本物のママムだ〜〜〜〜〜〜〜!!!豆くらいでしか肉眼では確認できないけど、オンニたちのオーラ、伝わってきてます!!!!

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熱狂冷めやらぬまま最初のステージが幕を開ける。IVEだ。イントロが流れた瞬間からボルテージが最高潮に達する。ガ、ガウルさんかんわぃいいい!!!みんな可愛すぎる〜!!!!『LOVE DIVE』も『Eleven』もサビの部分で会場全員歌ってるんじゃないかってくらいみんなで大合唱。初めてのこの規模感で披露するだろうに、堂々としていてとんでもない新人グループだった。好きにならないという選択肢など存在しない。

いつの間にかアジアの初恋ことカイ様が中央ステージから突き出るような形で用意されたアリーナ席ど真ん中辺りに位置するステージ(以下アリーナステージと呼ぶ)に現れ、爽やかさ120%の笑顔で挨拶。その後ENHYPENが登場し、ドームが破壊されるのではないかと心配になる位に叫び声が上がる。

私はこの日のために空港で買った安物双眼鏡をサッと取り出す。焦点を調整するとぼんやりとしていた視界が次第にくっきりとなる。レンズ越しに現れたのは左から、イケメン、イケメン、イケメン、イケメン...イケメンしかいなかった。ふと日本にいるエンジンのお友達のことが脳裏によぎった。どうにか彼らの美麗な姿をシェアできないかと思い、iPhoneでの写真撮影を試みた。しかし、手持ちのiPhoneではズーム機能に限界がある。そこであるアイデアが頭に浮かぶ。

「iPhoneのレンズに双眼鏡をくっつけてみたらいいんじゃね?」

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我ながらアホすぎる。しかし私は真剣だった。結果はご覧の通りだが人生なんでもトライするのが大事だと思う。ちなみにコンデジのカメラなら持ち込みも撮影も許可されていたので、次回は素直にコンデジを持って行こうと胸に刻んだ。

今度は愛しのジェミニとジェノさんペアが挨拶をし、その後スクリーンに突如予想外のグループが映し出される。スキズだ。今回JYPのグループが一つも参加していないのが少し残念だなと思っていたので、スキズからの挨拶動画というハッピーなサプライズには多いに沸いた。

そんな嬉しいサプライズに浸る間もなく、「タランタンタン...♪」と誇張なしで100回以上は聴いたことがあるイントロが流れてきた。と、同時にアリーナステージに白い衣装を身に纏った姫と王子が降臨する。ソラさんとデフィさんによるスーパアナ雪タイムだぁあああああああ!

ソラさん、頭につけたおリボンが可愛いすギルティ。エルサもびっくりなプリンセス感。コラボ相手のデフィさんの美声を活かすためか、いつものメガトン声量ではなくコントロールしながら歌い上げられる『Let It Go』。私の理性もとっくにレリゴーしていた。ムボンを振るタスクは忘れずに、一緒に歌いながら愛も叫んだ。「レリッゴォーーーーーレリッゴォオッ...ゴホッ...ソラオンニィイイイイサランへーーーレリッゴォオーーー!!!

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(友達になったムムがシェアハピしてくれた写真、サランへ)

年末の歌謡祭など他のアーティストが多数出演する時にソラさんが必ずといっていいほど特別ステージを披露してくれるのがありがたくって、誇らしくって涙が出そうになる。ママムの歌うま最強リーダーはやはり群雄割拠のK-popアーティストの中でも一目置かれる存在なんだと改めて実感する。曲が終わって特大スクリーンに映ったソラさんのやりきった笑顔が忘れられない。ソラさん、素敵なステージをありがとう。

まだまだK-popの宴は続く。次はアイドゥルの特別パフォーマンスでJustin Bieberの『Love Yourself』をハンドマイクで歌っていた。世代ドンピシャな上に不意打ちのカバーでまた涙腺が緩む。外も暗くなっていた頃に、色とりどりのペンライトがメロディーに合わせて揺れていて、とても幻想的な光景が広がっていた。

AB6IXの番になり、先ほどまでのシンとしていた会場が嘘のようにまた歓声に包まれる。私のような浅いオタクでも一度は耳にしたことのある名曲が続き、『CHERRY』でテンションがMAXに達した。もはや私の辞書に「体力温存」という文字は存在しなかった。「You're cherry on my top!」と声を張り上げながら全力ジャンプしていたら、周りも一緒にピョンピョンしだし、なぜかスタンディング席後方の一部の人間が異様な盛り上がりを見せることになった。曲が終わるとアドレナリンが切れて、息切れと目眩がしたが楽しかったから全てよし。

ENHYPHENのミニゲームステージで会場がフィーバーした後に、アイドゥルがロックな衣装で颯爽と中央舞台に登場。私はこの日のために『Tomboy』を狂ったように聴き込んできていたからイントロがかかっただけで昇天しそうになる。全員あまりにもflawlessなのは言うまでもないが、特にシュファさんに目を奪われ、チッケムの如くずっとシュファさんを追っていた。

待ちに待ったサビ部分。みんなが一斉に「YEAH I'M A FUC*ING TOM BOY!」と歌っていたので、同時にどれだけの人が卑語を口にしたか選手権があれば間違いなくギネス認定されていたはずだ。その後に続いた『LATATA』も『Oh my god』も『My bag』最高としか言いようがなかった。

『Oh my god』が始まった瞬間、隣にいたアリアナ・グランデ似の女の子も私も「オーマイガー!!!」と絶叫。ばっちり目が合う。

「アイドゥル好きなんだね?!」
「もちろん!あなたも?」
「そりゃ好きよ!!」
オーーーーーマイガーーーーーーッ!」(同時)

爆音と狂乱の中で、短いが確かな意思疎通が発生した。その子は明らかにティーンだったが、一世代以上離れていても一瞬で仲良くなれちゃうのもK-popの魅力だと思う。

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暗転。パッとスクリーンが明るくなり、0.001秒で画面いっぱいに映ったグループを認知する。ママムだ。嬉しさや緊張、そして興奮が織り混ざって身震いが起きた。あの私たちを一瞬でラテンの世界に連れ去って言ってくれる笛の音。ファサの「Are you ready?」に応える大歓声。

もうこっからはAYA ft.ノンストップ阿鼻叫喚タイム。だって、だって私はこの日をずっと待っていたから。目から噴き出る水を必死に拭いながら、高速でムボンを振り回し、天井に設置されたスクリーンと肉眼で確認できる4人の姿を行ったり来たりする。忙しい。

贔屓目なのは百も承知だが、ママムの人気は凄まじかった。全員のソロパートの出だしで私以外の人間からも割れそうな叫びが上がっていた。メロディーライン以外の歌詞もほとんどの観客が知っているようだった。会場全体がまるで一つの生き物になったかのようだった。ムムの母数自体は比較的少なかったかもしれない。でも、ママムは間違いなく「みんなが大好き」なグループなんだと肌で感じた。

AYAで一番好きなパートは、「너는 내 killer...」から始まるムンビョルさんのキラーパートだ。ブロンドの美しい髪を靡かせながら、ムンビョルさんが「Gun shot shot」でエア撃ちのポーズを決めた瞬間、私とあと4万個の心臓は見事に撃ち抜かれた。しかしまだ生きねばならぬ。この公演を最後まで見届けなくては...!

AYA最大の見せ場はラストスパートの畳みかけるようなラテンバイブス全開の音とダイナミックなダンスだと思うが、会場の熱狂っぷりもリオのカーニバルに負けないかそれ以上だった。ブラジル行ったことないけど。

AYAで温められすぎたフロアの熱狂が収まらない中、神曲『Gogobebe』がスタートする。観客を盛り上げる天才ことファサがまた「Scream!」と煽ってきたので、「ギェアアアアアアアア!!」とダミ声で対応。

また一斉に大合唱が始まり、「あれ?これママムのソロコンサートだったっけ?」と錯覚しそうになる。繰り返しになるが、本っ当に止まらぬ声援をママムは浴び続けていた。時々スクリーンにアップになって映るメンバーの表情からは、彼女たちが幸せであることが伝わってきた。ママムもどれだけこの時を待ち望んでいたんだろう。あなたたちはやっぱり大舞台で脚光を浴び続けるべき大スターだ。いつまでもこの時間が続いてほしいと願った。

『Gogobebe』の後は挨拶タイム。例の「I say ma ma moo~♪」の挨拶で涙腺が決壊。中央ステージからアリーナステージまで4人が歩いてくる。涙で視界が霞ながらも4人が並ぶ姿を確認しては、この世界線に自分も存在する事実に感謝する。いつだってムンビョルさんは輝いているが、なんだかより一層美に磨きがかかっていてムスカみたいに目が潰れるかと思った。

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「私たちが大きな歓声を聞けるのも久しぶりで、ステージへのエネルギーをもっともらえました」とムンビョルさんがコメントし、アラサーは誓った。今日も明日も喉が潰れるまで叫んでやるんだ、と。

ファサが「(AYAとGogobebeの前にも)今日は特別なステージがありましたね」と言うと「私のことですね?」と嬉々とするウリリーダーキムヨンソンとそれを横で見ながら微笑むチョンフィインが可愛すぎて尊かったので賞を授けたくなる。ママム、可愛い、可愛いよお。

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ありがたいことにまだママムのパフォーマンスは中盤を迎えたところだ。ステージの照明がブルーに変わり、次の瞬間『HIP』が始まる。今日一か二を争うくらいの歓声が上がり、私は何かに取り憑かれかのように腹の底から声を張り上げる。

「ヒッペーキムヨンソン!!!ヒッペームンビョーリ!!ヒッペーチョンフィイン!!!ヒッペーアンヘジン!!ヒッペーママム!!ママムガハミョンヒップ!!!ウワァアアアアアアアアアアア!!!」
 

「Close up, close up」の部分で白ジャケットを纏ったチョンフィインにカメラがクローズアップされる。美しさのあまりその場でよろける。その後もチョンフィンがアップで映される度に断末魔をあげてしまった。あまりにも完成された芸術品がその場で動いてるのだ。発狂しない方が無理だった。

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全身全霊を込めて「カートゥッ!」をやったので、私の喉はそろそろ限界を迎えようとしていた。が、私にはまだあのかけ声をやるミッションが残っていた。一番やりたかったファサパートのかけ声だ。

「코 묻은...」 「ティー!
「삐져 나온...」 「ペンティー!!」
「떡진...」「モリ!!!」 
「 내가하면」 「ヒップ!!!!!

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全力で「ペンティー」のかけ声ができた私は達成感に満ち満ちていた。4人が完璧にポーズを決めて、曲がフィニッシュする。こんなかっこよくて才能に溢れた4人が同じグループにいるなんて奇跡以外の何モノでもない。ありがとう生命、ありがとう地球。

あまりにも非日常的な空間において幸せの絶頂に達し、宇宙の神秘に想いを馳せようとしたその時だった。完全に予想していなかった曲が始まる。『mumumumuch』だ。興奮のあまりムボンを持つ手と間違えてiPhoneを持つ手を高速で振る。

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この曲は他に披露された曲とは異なり、ベストアルバムに特別に追加された曲なのでプロモーションなどはされていない。そのため大ヒットはしていないが、他の曲にはないテイストで4人の可愛さと魅力がぎゅっと凝縮されているので、まあ端的に言うとむっっっちゃくちゃ好きな曲。

ドームは『HIP』のブルーから『mumumumuch』のピンク色に染まり、ママムのピンクで統一された衣装がより活きていた。私はこの瞬間からピンクが世界で一番好きな色になった。

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ママムはステージのあっちやこっちを行ったり来たりし、この大舞台をとても楽しんでいるようだった。私はそのことが何よりも嬉しかった。いつもムムに幸せをくれるソラ、ムンビョル、フィイン、ファサ。私は彼女たちがずっと幸せでいてほしい。

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ママムのステージが終了し、プシュンと自分のガソリンが切れるのが分かった。しかし、その後も圧巻のステージが続く。リモートワークがしんどかった時に何度も聴いては未来を明るく照らしてくれたドリムの『HELLO FUTURE』で咽び泣き、チソンさんとジェミニの愛嬌では奇声を上げた。チョンロさんとロンジュンさんの伸びやかな高音を初めて生で聴き鳥肌が立ったし、ジェノさんのラップと『Glitch Mode』で見せたタンクトップ姿では失神するかと思った。

大トリはカイ様。やはり別格だった。カイ様に対しての観客からの愛情は目に見えて触れそうだった。それくらい愛されていたのだ。カイ様もこの人数の前でソロの名曲の数々を披露できるのが心から嬉しそうで、その様子を見てまたギャン泣き。以前、2021年のベストコンテンツを振り返る記事で書いたが、何を隠そう私は去年リリースされアルバムで一番好きなのが『Peaches』なのだ。そんな大好きなアルバムを生で圧倒的なステージ力を以て披露されたら、アラサーだって感情を思いっきり露わにして泣くしかない。

カイ様が「残念だけど次の一曲で最後です。」と言い、膝から崩れ落ちそうになるが、「でも、僕は明日も戻ってきます!」の一言でなんとか持ち直せた。明日もカイ様が見れる世界、ありがとう。

最後はアーティスト総出で挨拶をしに舞台に戻ってきてくれて、もう瀕死状態だが最後の力を振り絞ってママムへの愛を叫んだ。

「ママムーーーーサランへーーーーーーッ!」

ーー

「終わったね...」と隣で一緒にぴょんぴょんしたりオーマイガーと叫んだティーンとガッツリ握手をし、連絡先を交換してから別れた。すぐに会場を去りたくなかった私は、次の日の下見を兼ねて出口に向かう人の波の進行方向を逆流し、アリーナ席のゾーンに向かった。

当たり前だが、近っ。アリーナ席ってすごい。ぼーっとしていると、「写真お願いしていもいいですか?」と人懐こそうな2人組に声をかけられ、「もちろんです」と記念写真の撮影係を行なった。

「お二人は今日このゾーンで見てたんですか?」
「そう、最高でした!」
「羨ましいです!実は私も明日このゾーンで見る予定ですが、何時間くらい前に会場に来たらいいですかね?」
「そうね、公演が始まる6時間前とか?」
「ワ、ワオ。朝から来ないと良い席は取れないんですね。ありがとうございます。」
「いえいえ、こちらこそ。」

...この時はまだ知らなかった。
一瞬交わした会話が次の日にどれだけ影響するのかを。

(続く)

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