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5/8 ラストレクイエム『写真のないカメラ』プレイレポ

セッション後すぐに次週のGM準備に入ったため、少し間が空いてしまった。今回はGW期間中に遊んだラスレクの話。
GMはクリスさん。前回の『ヴァルハラ襲撃!? 魔獣型レムレスを倒せ!』以来のオリジナルシナリオだ。

首都圏で起こる謎の記憶喪失事件。おそらく人々の記憶とともにオドを奪うレムレスの仕業だと考えたPCたちがレムレス討滅に向かう……!

という基本的なストーリーラインに加えて、PC①枠として現に記憶を失ったPCを配置するというのはかなり実験的な試み。

実際にセッション前のやりとりでも、「どこまでのことを知っていてPCには何ができるのか」みたいな問いかけもされていた。まぁ、動き出してからGMから「違うそうじゃない」って言われるのは割とストレスだから、聞きたくなる向きもあるから気持ちはわかるんだけど。
GMも質問ひとつひとつに具体的に答えを出せるわけじゃないしね。ハンドアウトの記述ベースで「こういうことをしてほしい」っていう役どころのオファーを投げて、あとは俳優のアドリブで、っていうのが落とし所だよね。
そういう意味で今回のPC①枠は自身の動機付けまで見事に演じてみせたと思う。

1.プリプレイ

PC①:叢雲 珠雨(むらくも・しゅう)

PLは猫屋敷さん。なにげにnoteでのプレイレポ登場回数の多いキャラクター。過去すでに2回の登場なのでPC詳細はその時とかあの時を参照してもらいたいところだが、ファフナー族の秘宝をその身に宿し、あくまでステータス:デイリーライフらしく自身の日常と誰かの平穏のために守るための力を使うイージスである。

今回は特に、記憶喪失キャラクターとしてどちらかというと気持ちが守りに入りがちになるところ、「自身の日常」についての記憶も朧気ながら、見舞いにきた家族のことも思い出せず、自分の有様を見て泣く家族(特に妹)に言いようのない焦燥を感じている……!というモチベーションの付け方が秀逸だった。ある意味で最も大事なものを奪われたのである。

PC②:柳生 咲凛(やぎゅう・さりん)

PLはおれ・MOO。江戸時代からやってきた女性剣豪。実はあの時にセッション内で叢雲と共闘したことが今回のエントリーの主たる理由。今回、PC②はPC③とのバディになるものの、記憶喪失になったPCを直接知るものが関わったほうが面白かろうという相談の結果だ。

ステータス:サムライを選択し、あっけらかんな言動ながらその実「強さとはなにか」を探究する求道者でもある彼女は、前回のセッションで共闘したPC①叢雲にもある種の強さがあると認めており、その源こそ、守るべきと決めた日常、すなわち今回奪われたもの、という形でかなり心配するスタンスをとった。

PC③:真黒 創史(まくろ・そうじ)

こちらもかつてPC①叢雲と共闘したことがあるドローンの空撮のスペシャリスト。人跡未踏の地の撮影は世界から神秘のヴェールを取り払う行為として多くのファンを獲得している。
色々な欺瞞とともに日常を送るばかりの社会に対して斜に構える姿勢を取る青年だったが、かつての共闘時にPC①叢雲の戦い方や生き様を見て、かつて憧れた存在を重ね――嫉妬を覚えるに至った(

今回はそんな彼の有様を見て、PC②咲凛とともに事態の解決を図る、という展開に。咲凛とはコネクション上、近接攻撃のスペシャリストとテクノロジーのスペシャリストという、凄腕同士背中を預け合うような関係に。そんな二人がかつて共に戦った年下の戦士のためにバディを組む、という大きなストーリーラインが生まれた。
遊ぶ前に大体絵が描けているという盤石。

2.メインプレイ

今回も(間が開いているので)ダイジェストにて。

女の泣く姿に募るいらだち

PC①叢雲のスタンスの妙。記憶喪失というボールをキャッチして、そのキャラクターとしてどう面白くストーリーを作るか、という、PL猫屋敷さんの解答がお見事。

家族を名乗る一団の中にいた、泣いている少女。普段なら誰よりも守るべき妹が、思うようになっていない自分のために泣いている、そのことで自分でも気づかない奥底で苛立ちを募らせている……。

彼の返したボールはそんな感じ。記憶がその人の人格を作り出している、という考えに基づき、普段の明朗さは影を潜め、慎重に観察し言葉を選ぶ内向的な青年となっていた。それでもなお、苛立ちはこころの中に燻っていて「あの涙は止めなきゃいけない」というのを強いモチベーションとしてキャラクターを行動させていた。

記憶喪失だけどキャラは変わらず、ただヒトとかモノとか、「わからないこと」がたくさんある、っていうおかしみを記憶喪失の演出として使う選択肢もあった中で「人が変わる」レベルで大切なものの喪失を演じてみせたのはお見事だったな、と思う。

強さを無くしてもキミは立ち向かえるか

だから、行動の基準として「強さ」を置くPC②咲凛のRPとしてはまず、PC①叢雲が強さの源としていた家族の記憶を喪失し、心の毅さに陰りが出ていることをして「今のままじゃキミはダメだよ」と突き放しながら心配もしてみたり。いわゆるアレだね、「大人しく休んどけ」ムーブ。

それでも、「あの涙は止めなければ」って同行しようとする叢雲の姿に少し安心しつつ、元バディがその強さを取り戻すための手助けをしよう、って思い直すに至ったのであった。

PC③真黒も同様に、いつか嫉妬までしたヒーロー然とした(と映った)叢雲の姿に悪態をつきつつも、今のままではあの時のアイツではない、という形でともに協力していく動機にしていたり。

PC①叢雲の描くストーリーラインに、PCそれぞれがそれぞれのスタンスで乗って行った感。やはり盤石か。

カメラマンとカメラ

今回のレムレスも、前回のイノシシが魔獣となったレムレスと同様に、若干の変化球。事故死したカメラマンと、彼が思い入れを持っていたカメラ。共通する未練である「もっと多くのものを記録したい」という強い思いから、精神生命体たるナイトメアのレムレスとなった…というものだが、ここに世界観的に謎の黒幕と設定されているアンブラを明示的に関わらせることで「そういうこともあるのか!」っていう剛腕を振るってみせた。

人の記憶(メモリー)と写真による記録(メモリー)を意図的に混同させた形で、生まれたばかりの無垢なる悪意として人々から記憶とともにオドを奪う様は、悲しい犠牲者としての面も持つ。「魂の無い、欲望のままに生ける死者」というレムレスのあり方としてはまったく変化球ではなかった。

またロールプレイが子どもだったんだよねー、こいつ。
どこにでもある悲劇の場で、悪意持つ存在から人を呪うために生み出された可愛そうな夢魔、なんだよな。

中盤で神業を使う妙味

ルールブックの記述に従うと、近接攻撃スタイルの神業の経験点獲得条件は「神業によって畏怖を与えたら」。うちの環境では、たとえ神業により効果を相殺されたとしても「畏怖を与える」ことさえ出来てたら経験点の情景達成としている。

ということで、中盤で顔見せに出てきたボスキャラとミドル戦闘に入った折。「コイツを倒せば叢雲くんの記憶は戻るんだよね?」とか言いつつ我がPC②のサムライ娘は取り巻きを排除したあと返す刀で即死神業《断罪の刃》を放ちレムレスを畏怖せしめた。もちろんボスは神業で打ち消し。
最初から倒せるとは思っちゃいないが(というか、その段階ですでに防御系神業の所持はルール上開示されてたからね)、なんというか達人キャラとして、一瞬の隙を突いたら即座に必殺の一閃を放てる、くらいの尖った雰囲気も出せて良かったなと思うとともに、どうせ打ち消されるのだとしても「今なら周りも畏怖しやすいよな」ってタイミングとしては、ミドル戦闘で間合いに入った直後、ってのは割りと使い所かもしれない、なんてことも思った。
《断罪の刃》2つ持ち、ってのが引き金を軽くしたのは認める。

それはあたかも竜の逆鱗であり

記憶を取り戻し、レムレスと決戦するにあたって、それまでに募っていた苛立ちを怒りの形で発現させたPC①叢雲。記憶喪失になっている間も、普段とは人が変わったようなロールプレイを見せていたのだが、そんな彼が、大切な守るべきものたちの記憶を奪われていたことに対し、やはり普段見せない怒りを顕にして見せていたのが印象的。

今回のレムレスも、マスターシーン上では上記のとおり黒幕たるアンブラにそそのかされた側面は大きいのだが、その辺はPCとして知る由のない話でもある。悲しい理由によって生まれたレムレスに向ける怒り、という構図も含めて、PLの猫屋敷さんが今回、偶像的なヒーロー像ではなく、あくまで「スタイル:デイリーライフ」な普通の青年として在ろうとしているキャラクターを見せてくれていたのではないかと思う。

ファフナーの秘宝のちからで古の武具を纏う姿は確かにヒーローで、今回触れたのはそんな竜族の逆鱗なのかもしれないが、その痛みの大きさや痛みはあくまでも、人間らしい人間、彼だけのものだったのだなぁ。

寂しさと強さと

記憶を取り戻したPC①叢雲と、PC②咲凛のエンディングシーン。以前、「強さとはなにか」を求め世界をも超えて戦い続ける咲凛に向かって、ストレートに「寂しく無いんですか?」なんて問いかけをされたのも記憶に新しい。

記憶を失っていた叢雲に「あたしは依って立つ世界もどこか遠くになっちゃってるけどねー」なんてからからと笑いつつ。「あたしが求めている強さとは別のものだけど、キミの持っているものも確かに強さだ」と、セッション後にコネクション:尊敬などを送るに至る。

これって突き詰めれば面白いところで、孤高の存在として最終的にテッペンで独り在るような強さを禅問答のように続けるサムライキャラとしては、「誰かを守る強さ」ってその瞬間から他者の存在を前提とするもので、認めるけど明らかにジャンル違い、っていう話はしたかったんだよね。

その上で一滴だけ、
「家」に帰る叢雲の背中に覚えた一抹の寂しさ。あのセッションで最後に斬ったのはそういうものだったんだろう。今の咲凛の刃が通じたかは内緒だ。

マクロとクロマク

さすがは“神の目”とまで言われたドローン使いにして情報戦のプロである。
今回のセッション、彼のスタイル:モニターとしての神業《情報崩壊》はクライマックスの戦闘で結局使われずに終わった。戦闘時には攻撃系神業の相殺に用いる事ができる《情報崩壊》だが、本来的にはあらゆるネットワークへの侵入を可能にするハッカーの技。

ということでPC③真黒はエンディングで《情報崩壊》を使用。
今回のセッションで、カメラから生まれたナイトメアだったレムレスのメモリに侵入、彼をレムレスにするために力を貸したアンブラという存在の尻尾をついに掴むに至ったのだ!

いやー、ルールブック持っている人にしか分からない話になるんだけども。このゲーム、基本的にレムレスを討滅するのが目的のゲームで、黒幕たるアンブラの存在は、存在自体は知られていても正体は不明(たとえ重要NPCであっても)という状況にある。
それをしっかりと映像メディアで掴んでみせた、っていうのは世界観の「現在」を上書きするアクション! なかなか大きく出たものである。しかし、現在身内で稼働しているPCでこれを成し遂げるとして彼以外想像出来ないのもまた事実。この辺をどう活かしていくかが楽しみなところだ。

(余談だが、レムレス討滅を目的とするゲームで、真の黒幕の設定が一般化されていると、モチベーションの向きがバラけてしまうために一般情報ではないんじゃないかな、と想像している)


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