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6/26 ラストレクイエム『暴食の穴(Bottomless-pit)』プレイレポ

通算13回めの『ラストレクイエム』は猫屋敷GMのオリジナルシナリオ。今回のシナリオでついにGM回数をPL回数が追い抜いたありがとう我が仲間たち!

PL回数が上回っただけじゃない、うちのプレイ仲間で定着を見たと言える要素がもう一つ。今回のセッションに出てくるヒロインズは以前遊んだ「絶望の輪舞曲」にてヒロインを努めたゴシック母娘。GMとの相談の末、その時のPCを何人か出させてもらったりと、関係性を深める仕掛けはバッチリだ。

主に猫屋敷GMが得意とするところの、以前のセッションで出てきたNPCの再登場。少しずつおれたちの『ラスレク』の地図ができていくこの感触こそ、そのゲームが自分たちの間で定着してきたことを示す最終段階のようなバロメータだ。

1.プリプレイ

今回は予告の段階でほぼシナリオのラインは見えるようなシンプルなシナリオ。こういうシンプルなシナリオだと、PCがどう動くかっていうイメージもしやすくて……って、今見返したがセッションのあとで見返すとマジでそのまんまあらすじだなこれ

▼PC①:強羅 神爾(ごうらしんじ)

「う」が多いけど『シン・ゴジラ』のアナグラムで作った「核エネルギーに晒された竜の秘宝をコアに作られたホムンクルス」。PLはおれ。『シン・ウルトラマン』のウルトラマンもシンジだったというのは意図していなかったが、観たあとならアレだ、あのヘンなところも一周回ってちょっと似てるところがある気がするw

前回の登場はこのプレイレポでは「絶望の輪舞曲」、ちょうどデビュー戦に当たる時だ。
今回のシナリオ、まさにこのデビュー回で登場したヒロイン、御鷹母娘が再びシナリオに登場するお話。前回のセッションで仲良くなった御鷹羽衣(みたか・うい)が、1人だけ聞いた悲鳴の謎を追うという展開だ。

羽衣は前回セッションでナイトメア族の血を引くことが明らかになり、それを受け入れてヴァルハラの協力者になってくれているが、だからこそ精神生命体たるナイトメアにしか聞こえない悲鳴だったのではないか……。みたいな推測が立つ。

だが、猫屋敷GMはあざといことでは人後に落ちない人物である。
「友達に悲鳴の話しをしても誰も信じてくれなかった(泣)」な感じで。上記のような冷静な分析はPCに託し、ヒロインは友達に信じてもらえないところでPCに頼ってくるという導入を用意していた。

人造系PCのお約束「過程をすっ飛ばして結論を出すムーブ」によって、即座に「なら調べよう」と協力を申し出る強羅に、少しウルっときながらお礼を言うヒロイン(ナイトメアだから二心がないことはなんとなく分かる)というチグハグなペアとして導入は進んだ。うーんあざとい。

▼PC②:鬼頭 赤願(きとう・あかね)

HO②はバディ導入。その片割れは強羅と同じく、このプレイレポでは「絶望の輪舞曲」でPCとしてのデビューを飾ったアームズ/モノケロス、デイリーライフの、普段は普通の女の子なんだけど、戦闘で一度火がつくとモノケロスの血によって自分が抑えられないほどの破壊をもたらすパワーファイター。

PLのクリスくんはこういう猪突猛進に元気な女の子PCが結構ハマり役である。なにげにおれの強羅とは共闘する機会が多く、今回はバディ枠ではないが合流後のスムーズさ、もっというとこれまでに培ってきたイロイロが活かせる展開になった。こういう積み上げはPCを継続して使っているからこそ生まれるものだよな。

「絶望の輪舞曲」で設定された、通っている喫茶店の女主人にして、その回で衝撃の出生と濃いファフナー族の血族であることがわかった御鷹母娘の母親の方、御鷹来瞳(みたか・くるみ)が今回のHOで指定された関連項目。面白いハンドアウトで、文中に事件性は全くなし。今回のセッションにあわせて東京都荒川区にあると分かった御鷹母の喫茶店に通う日常が描かれるのみだった(もちろん伏線である)。

事件の方は今回バディとなるPC③の方からもたらされるという仕掛け。今回のセッションではバディ枠だけど個別導入という作りというわけだ。

▼PC③:巫女神 月兎(みこがみ・げっと)

眠りによせて」でデビューを果たした巫女神兄弟(双子)の片割れ。デビュー間もないうちはある程度固め打ちをして顔を売るというのはPCのプロデュース面では正攻法だよな。
イージス/トリガー、デイリーライフという純血のネオ(人族)。どちらかというと人を守るイージスの方を優先して成長させており、今回はバディとして攻撃力の権化たる赤願と見事なバランスを生むことになった。前回の年長者とのバディ関係ではなく、同世代のバディというところも含めて、新しい面が見られることを期待させる展開である。

特に、戦闘時は完全に役割分担をしてのける二人組とはいえ、調査パートでは「前向き!」「ひたむき!」「思春期!」な少年少女という多くの部分で共通点がある二人である。こうも似ていれば、殺し合うか愛し合うかしかないのがセッションのPCの関係性である。
バディ導入で、よく似た若者という「一個の単位」になったのは良い塩梅ではあったが、今回はそんな中でPC間コネクションを利用して「通常時には月兎が先行して赤願が抑え」というポジショニングを図っていたのは、戦闘になると逆転する、という点も含めて良いコンセンサスだった。

コネクションといえば、月兎→強羅の流れは「変身ヒーローすげえ!」という憧れ。強羅のPC紹介で「(〈龍身変化〉による)寡黙系変身ヒーロー」って書いていたからこその提案に感謝しつつ。ってことは変身するところも知っているんだから……と、こちらからも「月兎の誰かを守ろうという行動指針に興味を持って関わりに行っている」という関係を提案した。
この辺は完璧にシナリオ間のコンセンサスに根ざすもので、前回のセッションで赤願から「人を守るヒーローになっても良いんじゃない?」と言われたことからの「人を守る人への興味」というアンサーに繋がっている。
PC継続プレイの醍醐味みたいなことはこんな所にもあった。

HOはシンプルなもので、荒川区周辺でレムレスの呪素反応が感知されたというもの。『ラストレクイエム』の基本はやっぱりレムレス討滅だものな。

2.メインプレイ

▼声なき声を探して

PC紹介のところでも書いていたけど、序盤は過去のセッションで関わったNPCたちとの交流を中心に、新たに輪に加わった月兎との絡みなど、比較的平穏に事は進んだ。

しかし情報収集の結果でも、その時間帯に悲鳴を聞いた人などはいない、ということが分かるだけ。ヴァルハラ組との合流により、その事件にレムレスの関与が示唆されていることが分かる、というくらいか。

逆に風雲急を告げる状況ではなく、皮一枚を隔てた平穏の中でPCたち(と、一緒に行動するNPCヒロイン)が合流を果たすフェイズとして機能した。

合流時の小ネタ
強羅「(月兎を紹介して)ヴァルハラの……(人を守ることを生業にする者として)守護者だ」と、わざとカッコ良すぎる言い方をチョイスしてみたり。(考えてみたら『ラスレク』世界のヴァルハラなら「イージス」で通じるんかな)

▼推定・事件現場にて~急転直下

どうにか、事件現場と思しき夜の公園に訪れた時、PCたちは獣人族の一団に取り囲まれる。「ひと月前の事件をまだ嗅ぎ回っているのか!」と頭に血の上った一団は、PCとの間で戦闘に入る。

戦闘において、キレたら手がつけられない系PCを抱える我らのチームは、こういう誤解に基づくであろう戦闘を苦手としている(→ヒロインが悲鳴を聞いたのはつい先日なので誤解ということはわかっている)。

こういう時のコツは、NPC側から乱暴な交渉を吹っかけてくること…すなわち、向こうからきちんと敵意を示してもらうことである。
獣人族は獣人の姿に変じながら武器を手に襲いかかってきた! 思う存分殴り返すことのできる良い采配である。

鉄棒で殴られたのを平然と腕で受けて殴りかえす強羅、とかは良い演出ができたんじゃないかな。

…かくして制圧された獣人たちから話を聞くに、人を襲い、喰ってしまった仲間をクランとして粛清した事件が起こっていたらしいことを知る。1ヶ月前だし今回の件とは違うかー、またなんか情報があったら教えてねー、と、殴り合った末に芽生えた友情のようなものを感じつつその場を去った直後。

彼らが去った方向から聞こえる、誰の耳にも明らかな悲鳴!

駆けつけたそこには、肉塊でできた異様な人型が、獣人たちに襲いかかる姿であった。例えるならばひき肉の塊を人型にしたような異形。

それが次々と獣人たちを襲い、その身に取り込んでいるのだ!
ミドル戦闘はそんな異形の存在たちと。これがPCデータも相まってなかなかの手応え! 獣人たちが為す術もないのもよく分かる。

戦闘のさなか、その人型もまた獣人の姿を模していること、そして粛清された「彼」であることが生き残った獣人たちから明かされ、事件は急転直下していくことに。

▼《増殖》そして

獣人たちのクランから聞いた話を総合すると、人食いの禁忌を犯し、粛清された獣人は都市の地下、下水道の中でレムレスとなり、その再生能力を暴走、人知れず社会の陰でひっそりと暮らすホームレスたちを喰らいながらその力を増していた、ということが判明する。

すでに自分たちの立っている場所の地下にそんなものが……! という状況に加え、もう一つ明らかになったのは、先程の戦闘の結果。

人間よりも、力あるゴシック(獣人たち)を食らうほうが遥かに効率的であること(おれ「ジョジョの柱の男かよ!」)、そして先程の戦闘で端末が傷つけられた”肉塊"は、回復のために多くのゴシックたちを襲うであろうこと。

今この荒川区内の上に暮らすゴシックたちが一斉に狙われる可能性が示唆されたのだ――!

▼《大量虐殺》!その時PCは…!

そして、GMは厳かに《大量虐殺》を宣言した。防がねば、荒川区内に住む数多くのゴシックが殺傷され、"肉塊"は強化される。

そしてなにより、荒川区内でより強いゴシックの血を引き、かつ戦闘能力がない存在……ということで、ここでPC②赤願のハンドアウト、御鷹・母がクローズアップされる。

マスターシーンは、リビングにいる御鷹来瞳の背後、水道からぼとりと落ちる赤い塊が徐々に人型を取っていくシーンから始まる。PCは防御系神業デコレに介入しなければならない――!

GM曰く、この1件だけでなく他のゴシックのもとにも同様の危機が発生しており、打ち消すことで全部を守れる、ということだったが、それぞれの場面で発生する惨劇を一度に守り切るイメージはなかなか持てない……というところで。

おれのPC、パンドラの《千里眼》は防御系神業だが、もともとは超感覚を表すものである。ということで対応役に立候補。

慌てて御鷹来瞳のもとに向かおうとするPCたちだが、走っている最中に歩調を落とし「……間に合わん」と言った強羅、「お前たちは先に行け」と言いつつ知覚のマンホールを開け、そこで〈竜身変化〉からのブレス攻撃をマンホールに敢行!
※普段は口から放たれる一条の放射線ブレスなのだが、その演出のまま放つと荒川区が別の意味で大変になるので、シン・ゴジラよろしくその時だけはレーザーっぽいブレスが《千里眼》の効果も相まって乱反射して"肉塊"の端末を灼く、という演出にさせてもらった。あぶねーあぶねー。

かくして、御鷹母に”肉塊”の端末が襲いかかる寸前にブレスが敵を灼き、遅れて駆けつけた残ったPCが御鷹母を救出、端末を撃破……というタイミングで

赤願のPL「《修羅の如く》で本体にダメージを与えられますか?

さっきミドル戦闘では普通にトループとして出ていた端末ではあるが、現状でシーンにキャラクターとして登場しているのは"肉塊"という解釈はできないか、と仰るわけですな。《修羅の如く》の経験点条件は「恐怖を与える」んだけど、なにそれ怖い。

GMもそれを受け入れ、その一撃で一旦”肉塊”は完全死亡。ヒロインも助けることができて事なきを得たのだが……。

▼生存本能の行く末

退いた”肉塊”の端末たち。荒川区の地下に潜むその本体の場所を探索するためにはレムレスの《証拠隠滅》を打ち消す必要がある。今回は月兎が兄・太陽の調査能力を借りると言うかたちでの《都市伝説》を使用、潜む場所を割り出すことに成功した、が。

”肉塊”は自身の端末から自身を殺傷しうる存在を知り、恐怖した。
神業だもんな。そりゃそーだな、という納得感とともに。
恐怖した”肉塊”は、力を蓄え、十分に育った上で今度はさらに広範囲に、人間もゴシックも関係なく食らうために潜んでいるのだ、ということもあわせて判明。

後半の再攻撃はシナリオのとおりなんだけど、《修羅の如く》で一回完全死亡させているということで納得力が跳ね上がる展開になった。こういうのもTRPGの醍醐味であるなぁ。

ちなみにこの段階でレムレスの所持神業は全開示。ベルセルクの《増殖》に《究めし力》(ベルセルクの神業をもう一度使用)、《開放》(使用回数増加)を複数、というとんでもない極端なデータ。何度殺しても蘇るという鉄の意志を感じるもので、それが今回のシナリオのボスのキャラクター性を完全にあらわしていたと言える。

エピタフ=墓標というだけに、今回のボスの神業の所持状態はボスの在り方そのものを示しているようで実に良かった

▼番外編 あざといGMの細やかなるワザ

かくして、下水道内を進むことになったおれたちだが、”肉塊”の生存本能からくる恐怖を探知するかたちで、ヒロイン:御鷹羽衣がナイトメアの力を駆使して水先案内を務める流れになった。

かくしてボスの前にたどり着いたわけだが、そこには端末を際限なく生み出す赤い塊の上に獣人の上半身が乗っかっているという異形の存在が。もはや生存本能のみで存在を保つそいつに、言葉は通じない。

そこでおれはGMの狙いを悟る。

わざわざヒロインをここに連れてくる流れにしたのは、ナイトメア族の彼女を通じて、ボスの心情を解説させるつもりだな?

そしてその予想は正鵠を射ぬいていた。
やー、『ラスレク』だと神業の経験点条件がアレだもんね、恐怖したとか畏怖したとか、対象はともかくリアクションは必須なところがあるもんね。

もちろん対象は明確にされてないから、《断罪の一撃》を見舞ったPCに対して、隣のPCが「何ていう速さだ…(畏怖)」って演っちゃいけないわけじゃないけどね。そればかりも難しいところで、じつはこういう「精神性を失ってしまったレムレス」を出す時の課題の1つだったんだけど。

外付け実況装置を連れてくるとは、なかなかの細やかな心遣い。このMOO感服いたした。

▼その生存を断つ時

合計5回も復活してくるボスとか冗談じゃなかった。

加えて、その戦闘スタイルは「メジャーアクションでトループを呼び出す」。だけ。

呼び出されたトループが偶然にも「ムーブアクションで移動したラウンドだけ、絵札を出せばPCを殺傷できる」という見事なポジションを取っていたおかげで、全然無視できない存在。

赤願の攻撃であればトループを一撃で屠れるものの、ボスの無尽蔵の復活を見れば赤願の攻撃はボスに振り分けたい。
という感じで、おれのPC、強羅の得意とするブレス攻撃が相手の脅威度を下げるのに一役買ったという形だ。
それでも1Rに2体、無制限にトループを呼び出す攻撃に対して、イージスたる月兎のカバーがこちらの継戦能力を維持してくれる。

全員が自分のデータを従前に使い切って戦いきる、素晴らしいバランスだったと思う。神業の存在から、データを使った殴り合いについては「ダメージは[外]の45点!」みたいな大味なイメージを見慣れていただけに、今回のGMの戦闘デザインは秀逸と言わざるをえない。楽しかったお見事!

赤願の何度目かの全力攻撃で、彼女自身も返り血だかなんだかわからないもので真っ赤に染まるような戦いの末に、ついに”肉塊”は討滅された。「キレたら手がつけられない」という設定的にもピッタリ!

▼そして、エンディング

それぞれに日常に帰っていくエンディングの流れ。
赤願は《都市伝説》まで使って母子、そして憩いの場である喫茶店になにか悪評がついたりしていないかと調べるが、そんな予兆はなく。日常を取り戻したことを感じさせるエンディング、だった。

《流言飛語》で、竜族のクランのネットワークを使って、水道管の老朽化による赤い水の噂が流れた程度で事態を収拾、荒川区で同時多発的に起こった事件にはそれぞれのカバーストーリーが用意され、消えていったホームレスはその存在を知られることもなく、日常が再開された。

それでも、と強羅は羽衣に言う。
「その声なき声をお前が聞き、そのために動いたからこそ、全てはうまく行ったんだ」

ハンドアウトの回収も良い感じ。……だが、強羅はいわゆる人造人間キャラクターとして、やっぱりこう、ズレたところを演らないと気がすまないというか。

強羅「ヴァルハラから報奨も出たので、食事でもどうだ?」
と、ねぎらいついでにデートっぽい展開を予想して舞い上がる羽衣。

強羅「……あそこなんてどうだ」
と指差す先には――ハンバーグショップ。

強羅には彼女の怒りの理由は最後までわからなかった(ちゃんちゃん)

*          *

…ということで、今回はオリジナルシナリオなのでネタバレを気にせずにダイジェスト風味で一気に書かせてもらった。

もうひとつ特筆すべきは、このシナリオ思った以上に短時間に走りきったこと。それでもPC間の交流やそれぞれのハイライト、そして耐久型のボスにも関わらず「1メジャー1ライフ」な感じのブラッドパスのような暴れ方でのデザインなど、実に完成度の高いものになっている。

再登場NPCによる必要情報の圧縮なんかも絡んでいるけどね。
逆にそういう状況をフルに利用してのパッケージングもまた、お見事である。そんな事情だから、ブラッシュアップして公開、とかは難しい類だけどね!

こういう、慣れ親しんだNPCという、情報を圧縮できる資産が溜まってゆくのは良いことだ。

キャンペーンならずとも、継続PCは良いぞ、ということで、ご覧のみなさんも良いセッションを。


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