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4年2組の教室で

外は今にも降りだしそうな鉛色の空。

図工の時間。

柔らかいコンクリートの塊を

15センチほどの小刀で

少しずつ削っていく。

完成形をイメージしながら

人の頭部になるよう

削りだそうとしていた。


男子達は

示し合わせたかのように

同じもの削っていた。

モアイ像

どれも同じ作品に見えた。

時間の経過とともに浮かび上がってくる

無表情のモアイ達。

没個性で横並び

見せかけの調和ハーモニーが教室の中を支配いていた。

忍び寄ってくる同調圧力。

ちょっとでも気を許したら

飲み込まれてしまいそう。

巨大な負の連鎖、負のエネルギーを感じ

目の前のことに集中しているフリをして

彼らを無視しつづけた。


キーン、コーン、カーン、コーン。

終業チャイムとともに

教室を支配していたものが薄れていく。

太陽の光が差し込んできた。

私の目の前には

人の頭部には程遠い

ただの失敗作が

机の上に鎮座していた。

モアイはいなかった。

教室の後ろの棚に作品が並べられる。

10体のモアイ像たちが

子供達の背中を

じーっと見つめていた。



中年になった元子供達。

イースター島のモアイに込められた

本当の意味を

知ることなく

自由を謳歌することもなく

なんとなく生きづらさを感じながら

今も日々過ごしている。

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