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86. 小さな小さな安心感がポツンとある。

大人になるにあたって、いろんなことを選んだり、捨てたりしなきゃいけない時があった。
たとえば仕事に没頭すれば私生活は溶けてどっかにいっちゃうし、かと言ってほどほどにすれば成果は手に入らない。恋愛をすれば自分ではない誰かとの生活をいつも念頭に置かなきゃいけないし、誰かに気に入られようとするにも、生まれつきではない思い切りの良さや従順さを少し無理してでも見せなきゃいけなかったりする。

私はそんなに簡単には絶望はしない。けれど、その時々に必要な手段として、ナチュラルボーンな自分をどちらかの選択肢の方に少し捻じ曲げて進むことはもちろんある。でもそういう時に生まれたズレや無理に向き合うのはもう少しあとだろうと思ってたから、渦中にいるときに辛いとか悲しいとか、そんな感情にじっくり付き合ったりはしない。弱音は吐いたりしながらも、ただ前へ進めるだけ進んでみて、抱えた感情を味わうのはその後だよと、自分によく言い聞かせる。

こうして文字にしてみると、我ながらなかなか硬派だな、と思う。


でもそれで、やっと最近、少し気が済んだみたい。

これまで必死に踏みしめたものは、多少なりとも足場になって、私の中に小さな小さな安心感としてポツンといる。自分のためだけに選んで歩いた分、自分なりの輪郭を持って。

やりたかったこと、守りたかったもの、
手を伸ばしてみたかった場所。
そういうものが、まだ待っていてくれるとしたら、これから行くね。

そしてやっと、誰かのために、を考える準備ができた気がする。たぶん人よりだいぶ遅いけど、それでもそのための時間をこんなにゆっくり過ごせたことは、奇跡だったと思う。

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