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足関節外果骨折ORIF後のリハビリテーションについて

足関節外果骨折とは

足関節は一般的に以下の3つの骨で構成されます。

・脛骨-Tibia-

・腓骨-Fibula-

・距骨-Talus-

 

脛骨と腓骨は部位に名称がつけられています。

・内果-Medial malleolus-

・外果-Lateral malleolus-

・後果-Posterior malleolus-

 

 

 

これらの部位の骨折を果部骨折といい、外果の骨折を外果骨折と言います。

 

受傷機転

足部が固定された状態(体重がかかっている状態)で、足関節に内・外反やねじりなどの過大な外力が加わったときに生じます。

 

分類

受傷時の足関節の肢位や外力の方向によって分類されるLauge-Hansen分類や、骨折部位の位置によって分類されるDenis-Weber分類、AO分類などの分類があります。

 今回はLauge-Hansen分類について簡単に紹介します。


Lauge-Hansen分類

a.   回外-外旋骨折(supination-external rotation fracture:SER)

StageⅠ:前脛腓靭帯断裂あるいは付着部剥離骨折

StageⅡ:外果の斜骨折

StageⅢ:後脛腓靭帯断裂あるいは後果骨折

StageⅣ:内果骨折あるいは三角靭帯断裂

 

b.   回内-外旋骨折(pronation-external rotation fracture:PER)

StageⅠ:内果骨折あるい三角靭帯断裂

StageⅡ:前脛腓靭帯断裂あるいは付着部剥離骨折と骨間膜断裂

StageⅢ:腓骨高位の骨折

StageⅣ:後脛腓靭帯断裂あるいは後果骨折

 

c.   回外-内転骨折(supination-adduction fracture:SA)

StageⅠ:遠位脛腓靭帯結合の位置より低位置での外果骨折あるいは外側靭帯断裂

StageⅡ:内果骨折

 

d.   回内-外転骨折(pronation-adduction fracture:PA)

StageⅠ:内果骨折あるいは三角靭帯断裂

StageⅡ:前脛腓靭帯断裂および後脛腓靭帯断裂あるいはその付着部剥離骨折

StageⅢ:遠位脛腓靭帯結合の位置より高位置での腓骨骨折

 

足関節外果骨折ORIFについて

転位が少なければ手術をせずにギプスや装具を用いて治療することが出来ますが、転位している場合や不安定性がある場合は手術が必要となります。

手術はプレートとスクリューを使用するのが一般的です。

 

 侵襲部位について

外果骨折では、腓骨遠位端の外側面上にて、浅腓骨神経と腓骨神経の間を曲線状に皮膚切開を行います。

腓骨筋腱を剥離して保護した後、関節包の外側を切開することで、荷重面である脛骨遠位天蓋部を確認します。

これによる関節面における骨片の有無や骨片の大きさを把握しやすくなります。

靭帯損傷の有無についても確認します。

 

術後のplan

患者の骨質や固定性に応じて、ギプス固定や固定期間の長さを検討します。 

X線画像を確認し、固定の安定性や創部の状態に応じて荷重を許可します。


通常は6週間の免荷期間後、次の6週間で少しずつ荷重を掛けるようにしていきます。

日本メディカルネクストより引用

※免荷の期間や理学療法の指示に関しては、骨折の部位や、周囲の軟部組織の損傷の程度、糖尿病などの様々な要因を考慮し、決定していく必要があります。

 

一般的に足関節ORIF後、6週間のnon-weight bearing(NWB)は、治癒のための最適な固定を可能にするゴールドスタンダードと考えられていました。

しかし、長期免荷により筋力が低下し,日常生活への復帰に長期間を要することが懸念されていました。


須田らの報告では、

脛腓靭帯損傷を伴わない足関節果部骨折に対して術後3週以内に全荷重を開始した症例で、創治癒遅延や遷延癒合などの合併症は認めず,臨床成績は良好であった。

 足関節果部骨折の術後早期荷重の試み (2019) より引用

と記されています。

このような研究が進んでいけば、今後は術後の荷重開始期間のゴールドスタンダードはもっと短くなってくるのではないかと考えられます。

 

術後合併症

・感染症

・瘢痕の痛み

・創離開

・金属機器の不具合(プレートの破損、スクリューのゆるみ)

・金属機器の位置が悪い(スクリューが関節内に突出している)

・骨折の非結合

・骨折の治癒遅延

・神経損傷

・血管の損傷

・血栓症、脂肪塞栓症

 

術後リハビリテーション

足関節背屈制限は、日常生活やスポーツの場面において問題となりやすいポイントです。

しゃがみ込みなどの症状動作を行う上で大きな背屈可動域が必要になるだけではなく、背屈により下腿を前傾させることで、重心の前方移動が可能となり、多くの移動やスポーツ動作において背屈可動域が求められるからです。

 

背屈を制限する要因は様々であるため、ここでは制限因子を明確にするための評価方法を簡単に紹介します。

 

評価戦略の一例

以下の図を見てみてください。

工藤慎太郎: 運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略より引用

 

これらのように、背屈可動域を測る際の各関節の肢位の違いで制限因子を特定していきます。

筋肉だけでも制限因子となり得るものは様々ありますが、今回は長母趾屈筋にスポットを当てていきたいと思います。

 

長母趾屈筋(FHL:Flexor Hallucis Longus)

起始:脛骨後面遠位2/3 下腿骨間膜後面遠位部

停止:母趾末節骨底

作用:母趾屈曲、足関節底屈、内反、第2,3趾の屈曲

FHLの柔軟性低下(癒着、滑走不全)は背屈時の距骨の後方移動を妨げる要因となります。

長母趾屈筋の近くには後脛骨筋・長趾屈筋・短腓骨筋などが走行しているため、滑走不全が起こるとさらなる障害が生じる可能性があります。

上記の問題を予防するために、術後早期から長母指屈筋に対するアプローチが必要であると考えます。

 

 

長母趾屈筋に対する治療

足関節背屈位にて母趾を伸展させます。

この際に第1中足骨を固定してWindlass機構を抑制することで長母趾屈筋腱が緩むのを抑制し、しっかりとストレッチを掛けることが出来ます。


周辺組織との癒着の予防


癒着がある組織に対し、適度な伸張操作(遠位方向への滑走刺激)に続いて、適度な筋収縮(近位方向への滑走刺激)を加える操作を繰り返し行うことで、癒着した組織は徐々に剥離されていく

足部・足関節痛のリハビリテーション(2020) より引用

といわれています。

つまり、術後早期から上記のような刺激を加えることで、周辺組織との癒着を予防することが出来ると考えます。

 まとめ

術後のリハビリテーションは、早期からの患部外トレーニングや、Drの指示に基づいた患部に対するアプローチなど、適切な時期に適切なリハビリテーションを包括的に行っていく必要があります。

また、受傷時の状況や骨折の程度により、靭帯や関節包といった周囲の軟部組織損傷の有無などにより、術後の免荷期間や可動域訓練開始時期が決定されるため、Drと密なコミュニケーションを取りながらリハビリを進めていくことが大切です。

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