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単著もたくさんあるバーのマスターが教える、極私的読書感想文の書き方

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今回は、多数の連載を抱え、数々の単著を出し、CDのライナーノーツもたくさん書き、さらに本業はバーのマスターという林伸次さんが教える、「面白い読書感想文を書く方法」です。林さんだから言える、独自の文章作成法、ぜひおためしください!

どんなライナーノーツが面白いか?

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

僕のnoteに、「読書感想文の書き方を教えてほしいです。あらすじを書こうとしても、端折りかたがわかりません。あと、感想って何を書けば良いんですか? 感想を書くにはどう考えて、どう書き出せば良いですか?」という質問が来ました。考えてみます。

慶応義塾大の教授で、音楽評論家の大和田俊之さんという方がいるのですが、先日、「音源はもうネット上で入手可能だから、CDはライナーノーツだけを保存しておきたい」という話をしていました。

若い方に説明しますと、昔「レコード」というものがありまして、日本人も美空ひばりのような日本産のポップミュージックをレコードで聞いていたのですが、もちろん欧米産の音楽も聞いてたんですね。それで例えば、1960年代の日本で、ビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビー』というレコードが発売されたとき、ジャズに詳しい人たちは知っていたかもしれませんが、ほとんどの日本人は知らないわけで、「今、アメリカでビル・エヴァンスというピアニストがいて」っていうのを解説した文章がレコードについていたんです。

その文化はCD時代になってもそのまま引き継がれまして、例えばマイケル・ジャクソンのCDが発売されたら、中に「かつてジャクソン・ファイブというグループがあり……」っていう解説が入っていたんです。作品の邪魔にはならないよう、洋服の裏地(liner)に書き留める(notes)ように付けたので、「ライナーノーツ」というわけです。

その解説文という文化は、残念ながら配信時代には引き継がれなかったんですね。でもかつてCDやレコードの中に入っていた解説文って、インターネットなんかには出てないすごく貴重な情報だらけでして、大和田さんは「ライナーノーツだけを保存しておきたい」と言ってたというわけです。

僕もCDのライナーノーツをたくさん書いてきたのですが、ライナーノーツを書く人って、「初めてその音楽を聞く人」もいれば、「すごくマニアでそのアーティストやジャンルは誰よりも詳しい人」もいます。中にはライナーノーツのためだけにCDを買う、なんて人もいるので、読んだ人に「おおおお」って思わせなきゃいけないんですね。

僕がライナーノーツを書くときに心掛けたことは、この3つです。初めての人のために、最小限の「5W1H」を書く、その作品の時代的な意味やそのアーティストの物語を書く、そして、林伸次の個人的な物語を書く、です。

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