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オレンジワインはボジョレー・ヌーボーになれる?

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今回は「流行」について考えます。最先端の場所・東京渋谷で流行り廃りを見続けてきた林伸次さん。流行と定着はどのように変化していくのでしょうか?

オレンジワインはボジョレー・ヌーボーになれるのか

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

最近、外国人のお客様がすごく増えているのですが、その方たちが、bar bossaのグラスワインのラインナップを見て、「オレンジワイン、あるんだ。良いお店だね。じゃあオレンジワイン」って注文されることが多いんです。

オレンジワインって最近流行っているワインなのですが、オレンジからできているワインではなくて、オレンジ色のワインなんです。

白ワインは、白ブドウを搾って、そのブドウジュースを発酵させたワインなのですが、オレンジワインは、白ブドウを搾って、そのブドウの皮や種をブドウジュースに一緒に漬け込んで、皮の色が滲み出てきて、オレンジ色になったワインなんです。

これ、元々はジョージアの古い作り方のワインなんですね。琥珀ワインとかアンバーワインと呼ばれていたのですが、イギリスのワイン商が「オレンジワイン」と名付けたことで、「ワインには白ワインと赤ワインとロゼワインとオレンジワインの4種類がある」というイメージが根付いて、今、世界中で流行っているというわけなんです。

このオレンジワイン、いずれ流行らなくなるのか、それとも定着してひとつのジャンルになるのかっていうのを、よく想像します。

ボジョレー・ヌーボーというワインが昔すごく流行ったんですね。bar bossaでも20年以上前は解禁日の真夜中12時過ぎにみんなで飲んでいました。今も解禁日になるとコンビニで売られたりしますが、当時はそれどころではなかったんです。オレンジワインがボジョレー・ヌーボーと同じような運命になるのかどうか、それとも定着するのかどうか、今、いつも考えているんです。

あるいは、近年全世界でアナログレコードが大流行しているのはご存じですか。僕は今54歳なので、CDが登場した時を覚えているんですね。小さくてびっくりしたし、「ノイズが一切ない」っていうのも奇跡みたいって思いました。

その後、昔の古いジャズやロックの音源が「再発CD化」されて、みんながCDで買い直して、家にある古いレコードは売り払って、完全にCDの時代がやってきました。あの時期、本当に多くの人たちがレコードの時代は終わるって信じていました。僕はずっとCDレコード屋で働いていたので、よーく覚えています。

それが今は、全世界でアナログレコードがすごく売れているんです。「1989年以来の40億円超えとなる43億3600万円に」っていうニュースも見ました。僕、渋谷のレコード屋を回るのが唯一の趣味なのですが、外国人がすごく大量に買ってまして、棚がスカスカになっているんです。

ある知人は、「アナログレコードは絶対に今後高くなり続ける。株や金に投資するよりも、高級ワインに投資するよりも、絶対にレコードの方が高くなる。さらにレコードって聞けるし」って宣言して、ほぼ投資に近い形で買っているんです。そしてそういう人がすごく増えているそうです。

アナログレコードの次はCDが流行?

このアナログレコードブームがずっと続くかどうか、全く予想がつきません。ちなみに、カセットテープも流行っています。渋谷のハンズには、古い1980年代のビンテージ・ラジカセを高く売っているコーナーもあります。

じゃあCDは流行らないんだろうかって今、みんなに聞いているのですが、「いや。林くん。CDももう流行り始めているよ」って先日、某音楽業界の先輩から教えてもらいました。「シャーデーのCDとかこれから高くなると思うよ」だそうなんです。

CDって、「おじさんにプレゼントされたら困る物」って、ちょっと前に聞いたことがあるんです。今、CDプレイヤーって誰も持ってないじゃないですか。プレゼントでもらっても聞けないから、会社に行って、CDを読み込む機能があるPCを探して、それで読み取って、自分のスマホにメールで送信して、おじさんに「聞きました」って言わなきゃいけないからって聞いたんです。

でもそのCDが流行るかもしれないんです。「キラキラして可愛い」って思われるかもしれないんです。

僕は毎年1冊は紙の本を出し続けていまして、紙の本にかけているんですね。なのに今、日本の本屋がなくなっているって、しょっちゅうニュースで見かけますよね。

でもイギリスとアメリカでは本屋は増えているらしいんですね。「紙の本」ってまたブームが来るのでしょうか。

「ネットの記事って、永遠ではない」ってよく言われますよね。でも、紙の本は、例えば日本の本に関しては全部国会図書館にあります。

どう思いますか? 紙の本に、僕は残りの人生をかけていいと思いますか?

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林伸次(はやし しんじ) 1969年生まれ。徳島県出身。1997年創業の渋谷のワインバー「bar bossa(バールボッサ)」店主。本連載の書籍化『ワイングラスのむこう側』『大人の条件』はじめ書籍多数。また『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』など、小説も執筆。

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