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詐欺の手法も進化する

お知らせ
林さんが書いた新しい小説が上梓されました。ぜひお読みください。


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紋白蝶がリスタートします。林伸次さんの「ワイングラスのむこう側」も連載再開! 今回は、林さんの奥様にかかってきた謎の電話のお話です。「ワイングラスのむこう側」は、毎週金曜日更新です。

突然妻の携帯電話にかかってきた不思議な電話

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

先日、日曜日の午後2時頃に、妻の携帯電話に非通知で着信がありました。出てみると、若い女性の声でこう言いました。

「自治会のスズキですけど、謝らなきゃいけないことがありまして」

スズキというのはもちろん仮名です。ただ、実際も珍しくない名字で、例えばサトウやタナカといった名前だったそうです。

妻が「はい。何でしょうか?」と応えると、電話口の女性はこう言いました。

「先日、うちの子が道で後ろから失礼なことを言ったみたいで、それを謝りたくて」

妻には全く身に覚えのないことでした。

「なんのことでしょうか?」
「うちの子が後ろから失礼なことを言ったみたいなんです。すいませんでした」

妻は、これは間違い電話か何かかなと思って、こう聞きました。

「どちらにおかけですか?」
「同じ自治会の者です」

僕たちが今住んでいる地域には、「〇〇自治会」という名前の組織は存在しません。妻はマンションの管理組合のことなのかなと思ったものの、「変だな」と思いこう尋ねました。

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