商売繁盛に向けた「ものづくり改善」(その1)視座の高さを変えて「流れ」を見るということ
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商売繁盛に向けた「ものづくり改善」(その1)視座の高さを変えて「流れ」を見るということ

改善活動はあらゆる業種において事業発展に有効な活動として認知されています。とりわけ製造業における「ものづくり改善」活動は歴史も長く活発に展開されてきました。よく知られている「5S活動」、「トヨタ生産方式(Toyota Production System、略称TPS)」などは単なる手法ではなく、企業経営の根幹に関わってくる仕組み・戦略として位置付け展開している企業も多々あります。
製造業での改善活動は日本のものづくり力を支えてきました。「KAIZEN」として海外でも知られています。日本のやり方が、海外で広まり発展し体系化され、逆輸入された例も多くあるとのことです。

改善活動の成果指標

これら活動の成果は「生産性向上」「リードタイム短縮」「原価低減」などの指標で評価されることがしばしばです。
(以下は製造業での改善活動を想定していますが、基本的な考え方は非製造業でも共通です。)

「生産性向上」を例にしますと、

生産性とは、  
生産性=生産高/投入高  
で表され、
投入高の割に、より沢山生産出来るようになると生産性が向上したとなります。
一人当たりでみる「労働生産性」、原材料1㎏当たりでみる「原材料生産性」、設備1台当たりもしくは運転時間当たりでみる「設備生産性」等ありますが、要は投入する工数、原材料、設備、時間の割により多く生産できるように改善するものです。

商売繁盛に結びつく活動になってますか?

改善活動の結果、「生産性向上」「リードタイム短縮」「原価低減」といった指標でそれなりの成果を上げたにも関わらず、必ずしも売上・利益改善に結びついていないことがあるのを企業活動の中でしばしば感じます。

例えば、
ある設備の運転時間当たり「設備生産性」が向上!!
 (改善前)100個/hr ⇒(改善後)130個/hr  生産性30%アップ
これは立派な成果だと思います。ただしよくよく聞いてみると次工程の仕掛品の在庫が増大してしまい、保管スペースが不足してきただけでなく、仕掛品を移動したり探し出す労力が増えたという例がありました。

また、
生産指示から製品完成までの「リードタイム」が20%短縮!!
このケースでは生産リードタイムは短縮できても、受注から顧客納品までの短縮に繋げられていないという例でした。どこかで物が滞留している訳でこのロス削減の刈り取りが出来ていないもったいなさもありますが、顧客満足に繋げられる可能性が活かされていないのも、もったいないと思いました。

いずれも、改善活動の成果が商売繫盛に上手く結びついていない例です。

競合や市場環境要因もあり、改善成果の全てが全て分かりやすい形で商売繁盛に結びつく訳ではありません。改善活動していなければ撤退せざるを得なかったといった生き残りを掛けての活動もあるでしょう。
ただ、改善活動を収益に繋げるということを意識して経営するかしないかはとりわけ重要なことです。でなければその職場だけの自己満足になってしまつたり、経営全体からするとマイナスになることもあります。

せっかくの改善活動、なぜ成果が商売繁盛に上手く活かされないことがあるのでしょうか。

部分最適になっていませんか?

例えば現場が挙げてくる改善提案だけを過剰に重視すると、その現場だけの改善(部分最適)になりがちで、工程間の繋がりが考慮されにくくなります。
また、製造部門だけで改善を進めると、営業/資材調達/物流部門などとの連携が不足しがちです。
改善活動にあたって、「現場改善」「ボトムアップ作戦」「全員参加の活動」などと言われることがあります。いずれもある範囲内では的を得ていることだと思います。ただし、全体最適の視点が抜けると”もったいない”ことになったり、経営としてはマイナスになってしまうことがあります。

先ほどの例で言えば、
ある特定な設備の「設備生産性」向上は達成できても、次工程との生産バランスが考慮されてなく、全体からすると物の「流れ」は必ずしも良くは無い状態と言えます。別工程でロス(在庫管理、移動運搬のロス等)が増大し、トータルではコスト高になってしまうこともあります。

また、生産リードタイム短縮の例では、受注/生産計画/資材調達/在庫管理/出荷/配送といった生産の前後を含めた一連の物と情報の「流れ」が考慮されていなかったと言えます。

この結果、個別の工程における「生産性向上」「リードタイム短縮」「原価低減」といった指標でそれなりの成果を上げても、必ずしも商売繁盛に結びついていない事態が起こります。

視座の高さを変えて「流れ」を見るということ

改善活動を商売繁盛に結びつけるための一つは、視座の高さを自在に変えながら「流れ」を見て、「全体の流れ」を良くする改善を進めることです。

ある時には、現場の中に入り込み、作業者の動作分析をしたり作業場のレイアウトを見直すことが必要です。
またある時には、物(原材料、仕掛品、完成品など)と情報(受注、出来高、在庫などの情報)の流れを俯瞰してみることが必要です。
またある時には、自社内だけでなく協業先や市場・顧客、競合を見ながら進めることが必要です。

このように視座の高さを変えながら、作業現場、工場全体、パートナー、業界、世の中を見渡し、常に全体最適の視点で流れを良くすることを念頭に進めることが大切です。

このようなことを申し上げると職制や部門によっては、「それは別の班のこと。うちの班の担当でない」「その業務は生産管理の仕事だから」「顧客のことはよくわからない。営業でないし」等が聞かれることがあります。ご自分の持ち場を狭義に認識された上で、その範囲内で出来ることはやる(担当外のことは関与しない)という意識が感じられる発言です。

現場担当であってもリーダークラスであれば、工程全体での物と情報の流れを理解しておく必要があります。更には工場出荷後に顧客へ届けるまでの流れの概略を知り、その中で自分が担当する現場はどのような位置付けにあるかを認識した上で、改善を進めることが大切です。

経営者や事業責任者は改善活動を現場へ丸投げするのでなく、時々に応じて適切な視座に移動しながら関与することが必要です。
「現場のことは工場長に任せてあるから」と言われる経営者も多くいらっしゃいます。経営者であっても視座を適切に変えながら、「商売繫盛」に繋がる改善を念頭に経営学の観点で関わっていくことが大切です。

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野毛由文@中小製造業向け改善応援エキスパート/ITコーディネータ|ものづくりデザインラボ
ものづくり中小企業向けに売上利益拡大の仕組みを作る支援を行っています。ITコーディネータ。 個人事業主として活動。屋号は「ものづくりデザインラボ」https://monozukuri-d-lab.com/