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仕事だけが進まない

 「土田頁」をnoteに移して、頻繁に更新するつもりだったのに存在すら忘れかけていた。二ヶ月も書かなかったけれどそれには理由がある。一つ原稿の締切を何度も延ばしてもらっていたので、迷惑をかけている人たちに「あいつ、こんな呑気なこと書いてやがる」と思われるのが怖かったこと。そしてもう一つは……書いても更新できなかったことだ。くだらないことを書いてみても、公開しようとすると嫌なニュースが目に入ったり、近場の誰かから悩み相談を受けたりする。すると「こんな時にこんなものをアップしてる場合じゃないしなあ」と気分が萎えてしまう。だから下書きには結構溜まってるんだけどね。ま、正面切って真面目に思うことを書けばいいんだけどね。

 今は下北沢にいる。前に更新した時には京都にいたが、6月の頭からon7「七祭ーナナフェスー」の稽古があったのでそれに合わせて東京に移動して来た。そこから一ヶ月、原稿を書きながら稽古。そして無事に10日間の本番が終わった。そのことは改めてということにして、下書きにあったものを少し書き直そう。

 移動する少し前。京都での話だ。

 扇風機を出そうと思って屋根裏収納に上がった。扇風機を出そうと奮闘していると見慣れない段ボール箱を発見した。中を開けると……そこには忘れていたフィギュアやミニカーなどがいっぱい入っていた。フィギュアといってもガチャガチャなどで出した安価なものばかり。ああ、こんなのあったなあという感じだ。嵐山に引っ越して来てから一度も開けていないので、前のマンションからこの状態で持って来て放置してあったのだと思う。かなり乱雑な状態だ。フィギュアも手や頭が取れたりしていてすっかりアイデンティティーを失ってしまっているヤツもいる。きっと引越す時、何も考えずに詰め込んだのだろう。

 締切も迫っていた。さらに三日後には東京にいかなければいけないタイミングだ。こんな箱に関わっている時間はない。見なかったことにして元に戻すべきだと白い私が言った。けれどいったん気になると猪突猛進状態になってしまう黒い私はその箱を持って下りて来てしまった。箱を手にして立ち尽くしながら白い私は「箱はこのままどこかに置いておけ。次に京都に戻った時に缶考えるべきだ」と叫んでいたけれど、黒い私は叫びを無視してフリールームの床に全部ぶちまけてしまった。

 ああ……。もうだめだ。ぶちまけた部屋は狭いので普段は使っていない。仕事部屋に入らない本や、DVD、CDなどがしまってある。だからこのままにしておいたとしても三日くらいは困らない。けれど……黒板を設置したばかりなのだ。構想を考える時はここでやろうと決めたばかりだ。こんな風に床一面に気持ち悪い怪獣の尻尾らしきものとか、デビルマンとか、頭のないウルトラマンなどが広がっていたのでは黒板も使えない。ということは構想もまとめられない。白と黒が混じり合い、ほどよいグレーで落ち着いた私は仕事の休憩の時に少しずつ整理することにした。

 けれど……十年も前のものなので、もう何がなんだか分からない。これはなんの手なのか? この小さなボタンみたなのは何についていたものなのか? まるで神経衰弱のようだ。

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フィギュアは100体以上あった。一応全部なんとか直ったが、どうしても分からない部品がいくつか残ってしまった。

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誰かの髪の毛、何かの手……何度確認しても当てはまるやつがいない。ちなみに一番右のブーメランみたいなものはグレードマジンガーの胸におさまったけれど、残りの三つはいまだ解明されていない。これはさすがに次の課題にしよう。

意外とすんなり事は済んだが、床にゴジラやモスラがいることに変わりはない。前に100均でまとめ買いした板があったことを思い出し、1時間くらいで簡単な棚を作った。とりあえずおさまった。

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 終わって思った。どうでもいいことはこうしてやってしまうのになぜ本を書くことだけは進まないのか。何かをする時「いくらやる気が出るのを待っていても無駄だ」という。やり出せば自然と出るものだと聞く。これだって箱を床にぶちまけたから、仕方なくやり始め、しかもやり出したからやる気が出てしまい棚に収めるまで終わらせたのだ。いきなりこの箱を出されて「さ、整理しなさい」と言われたら絶対に動き出さない。

 よし。そうだ。書き出せばいいのだ。私は人生の真理をまた一つ発見した気になってパソコンに向かった。すぐに行き詰まった。気がつけばパソコンデスクから離れてコーヒーを飲んでいた。一度、黒板の前まで行ったが、結局は使わなかった。……そうなんだよ。フィギュアのようにやれば済むというもんじゃないんだよなあ。ということで、この時に書いていた原稿は締切に間に合わず一週間ほど出すのが遅れた。

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