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最大規模・最新鋭の物流センター稼働に向けた挑戦。立ち上げの裏側にあった現場社員の想いとは?

※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております

2022年4月にモノタロウの新物流拠点、兵庫県・猪名川DC(ディストリビューションセンター)の稼働がスタートしました。モノタロウでは、在庫点数を増やし続け商品を早く届けることでお客様の利便性を向上させ、売上を伸ばしていくことを1つのビジネスモデルとしています。それを実践するためには、物流拠点の拡大が常に求められています。その中で、猪名川DCは関西の主力拠点であった尼崎DCに代わる新たな物流センターという位置づけで開設されました。

猪名川DCの外観

猪名川DCの特徴は、複数階層(6階建て)であり、自動搬送ロボット(Racrew)を活用しながら1〜4階を商品棚が行き来することです。ロボット自体は2017年開設の笠間DC、2021年開設の茨城中央SCで導入済みですが、ともに平屋建てであるため、上下搬送機能は猪名川DCが初めてとなります。また、ロボットの利用範囲も拡大することになりました。笠間DCや茨城中央SCにおいて、ロボットは出荷工程のみで活用されていましたが、猪名川DCでは入荷工程にも導入されることになりました。

自動搬送ロボット(Racrew)エリア

延床面積は約19,400㎡(2023年春の第2期完了時)であり、これまでの3拠点(尼崎DC・笠間DC・茨城中央SC)を合算した延床面積と同等になる程の巨大なセンターです。これにより、第2期が本格稼働した後には最大60万点の在庫保管能力と18万件の出荷能力を実現する見込みです。

この拠点は、地震などの災害発生時でもサービスを継続することや従業員の安全を確保することを目的とした免震構造施設です。猪名川町自体も地盤がとても丈夫で地震の少ないエリアであり、そこに免震構造というハード面の利点を備えた建物を選んだことで安全性の高い拠点にすることができました。

今回、この猪名川DCの立ち上げに大きく関わった現場社員にインタビューを実施しました。

Kさん ( 表紙写真左 )
所属:物流部門 猪名川運営サポートグループ グループ長
経歴:前職ではEC企業内の倉庫でEHS(環境・衛生・安全)のマネジメントを10年間経験。現在は、猪名川DCにおける人事・総務・安全衛生を幅広く担当。
Nさん ( 表紙写真右 )
所属:物流部門 猪名川入荷グループ グループ長
経歴:販売企画部門(現在の商品部門)でグループ長を経験した後、自身の希望で物流部門に異動。現在は、入荷工程全体のマネジメントを担当。

Q1.立ち上げにおける担当業務について教えてください

Nさん
仕入れ先や他拠点から届いた商品を受け入れる「入荷工程」の計画系業務や現場準備業務を多岐にわたって担当しました。計画系の業務では、「入荷工程の運用設計」「工程で利用するシステムの改修」「尼崎DCから猪名川DCへの商品輸送(尼崎DCから猪名川DCにメイン拠点が移るため)」「バース(※①)管理のルール作り」「人員計画の作成」等があります。また、現場準備業務では、「茨城中央SCでの現場研修」「入荷エリアのレイアウト・環境作り」等があります。

※① バース
トラックが着車し、荷物積み降ろしを行うスペース 

これらを私一人で行うのではなく、チームメンバーやスタッフの皆さんと一緒に進めてきました。立ち上げ準備が本格化したのは1年前で、秋頃から構想の具体化や数値シュミレーション、年明けから実際のセンター内で運営方法の検討を行いました。

Kさん
立ち上げでは、「工事中の事故を防ぐ体制作り」「避難経路や防火防災設備を考慮した現場レイアウトの設計」「施設管理業者・警備会社とのコミュニケーション」「オフィス環境のセットアップ」「セキュリティカードの準備」「通勤用の送迎バス手配」「オペレーション用無線機の導入」「廃棄物処理体制の構築」などを担当してきました。担当する分野が多岐に渡り、初めての経験も多かったのですが、様々な方にご協力をいただき、なんとか形にすることができました。

Q2.立ち上げの中で大変だったことを教えてください

Nさん
現在進行形で様々な課題があり、他部門の方の多くのサポートも受けながら引き続き改善に取り組んでいるところです。その中で、猪名川DCの経営意義が「高い在庫保管能力」である以上、「在庫管理」について触れないわけにはいきません。巨大なセンターであるとはいえ、事業成長に伴い物量が急激に増えている中で、在庫の持ち方を工夫しないとあっという間にスペースがなくなってしまいます。スペースが少ないと、一度に保管できる商品数が少なくなり、売れ行きに応じてその都度商品補充を行う必要が出てきます。その結果、現場スタッフの生産性が低下し、お客様へのお届けが遅れることに繋がりかねません。

その対策として、これまでの物流拠点では「固定ロケ方式(※②)」を採用していたのですが、猪名川DCでは「フリーロケ方式(※③)」を一部採用しています。商品の在庫が減っているタイミングで生まれたスペースに別の商品を置くことで、空間利用率を向上させることが目的です。

※② 固定ロケ方式
あらかじめ決められた場所に商品を保管する手法。ロケは「ロケーション」の略
※③ フリーロケ方式
空いているスペースに商品を保管する手法 

「フリーロケ方式」は、同一商品が別々の棚に分散するため出荷効率を低下させると言われていますが、フリーで入庫できる範囲を限定し、オペレーションも工夫することで、これらのデメリットをなくし、「固定ロケ方式」を超える効率的な在庫格納ができる仕組みの構築を目指しています。しかし、いざ導入を始めると、想定と異なるシステムの動きになってしまったり、検討が抜け落ちていたポイントがあったり、多くの課題が見つかりました。構想していることをオペレーションに落とし込むことの難しさを感じながら、必要な在庫数を効率良く保管できる環境を目指して、日々改善に取り組んでいる最中です。

Kさん
入社早々、前職で経験したことのない様々な業務にアサインいただき、立ち上げを進めていくことが大変でした。立ち上げプロジェクトというのは、ベテランの立ち上げ経験者や各部署のエースが参画されるイメージでしたが、私のチームは自身も含めて9割が入社1年未満という構成でした。モノタロウでの仕事の進め方に慣れていない中、様々な業務を担当し、メンバーと試行錯誤しながら、PDCAサイクルを必死に回していきました。

正直、不安な気持ちもありましたが、各分野のスペシャリストが集まったチームだったので、とても心強かったです。また、行動規範にある「他者への敬意」が根付いており、周囲の皆さんも協力的だったので、前向きに立ち上げ業務を進めることができました。手厚くサポートをしてくださった先輩・他部門の関係者、それぞれの強みを発揮して現場の皆さんのために頑張ってくれたチームメンバーにはとても感謝しています。

立ち上げ業務の中で特に大変だったのは、オペレーション内で使用する無線機の選定・導入です。猪名川DCは複数階層であるため、電波が届かず、従来の無線機を利用できないことが判明しました。猪名川DCの規模やコンクリート壁の厚さも原因として挙げられますが、トラックが出入りするシャッターを閉めた途端に別の階への通信が遮断されてしまう有様です。各階のフロアや野外にある危険物倉庫での通信品質を担保できる新たな無線機の導入が急務となっていました。当時の私は、無線に関連する業務経験や専門知識がなかったため、どうすれば目指す形を実現できるのか非常に悩みました。手探りで進めて行く中で、IT部門のインフラチームを初めとする多くの関係者の方々にご協力をいただきながら、ニーズを満たすものを無事に選定でき、副産物としてコスト削減にも繋がりました。

Q3.稼働初日の気持ちを教えてください

Nさん
「ゴールではなく、スタート地点に立ったんだな。」というのが率直な気持ちでした。猪名川DCには、仕事に対する意欲の高い人々が集結しており、熱気に溢れています。だからこそ、メンバー全員で、より良いセンターを目指した挑戦を続けていきたいと思いました。

Kさん
「やっとここまでこれたな。」という気持ちの後に、「よーし、ここからが大変だぞ。」という想いを抱きました。趣味が登山で、それに例えるならば、ようやく2合目くらいまで登れた感覚です。これまでのキャリアで得てきた知識や経験を活かして、これからも未知の分野に挑戦し、その成果をセンターの安定稼働に繋げていきたいです。

Q4.今回の立ち上げに関わっての感想や学んだことを教えてください

Nさん
立ち上げにあたって難題の連続でしたが、サプライチェーンマネジメント部門やカスタマーサポート部門を筆頭に様々な方から多くのサポートをいただきました。モノタロウという会社の仲間をサポートしてくださる姿勢には大変感謝しています。

お客様に商品をお届けするまでの工程の中で、最初にオペレーション負荷がかかるのが入荷工程です。そのため、新拠点の立ち上げ計画において、入荷工程はキーファクターの1つであると考えています。今後は、入荷工程の円滑化を通して、皆さんのサポートに応えていきたいと思っています。

学んだことは、「計画通りにいかないことだらけだな」ということです。いくらかは覚悟していましたが、まさかここまでとは…と痛感しています。一方で、検討したプロセスが使えなくなったとしても、「あの時の考え方を踏まえて今はこうした方がいいのかな?」といった思考整理のきっかけにもなっています。計画は思い通りにいかないことも多いですが、しっかり作っておくことが大事ですし、それを次に活かすことを心掛けていきたいです。

Kさん
入社して早々に前職では関われなかったようなプロジェクトに参画できたことがとても嬉しかったです。プレッシャーもありましたが、皆さんが同じ方向を向きながら、それぞれの強みを活かして、立ち上げに取り組めたことはなかなかできない経験だったなと感じています。また、非常に多くの関係者と連携しながら複数タスクを進めていくことが「立ち上げ」で、そこに「他者への敬意」がなければいけないと再認識しました。スケジュールだけを優先してしまうと、独善独歩の自己満足だけの成果になってしまう恐れがあります。自分のタスクを完了させることが目的ではなく、自分の仕事を通して喜んで欲しい人・守りたい人・チャレンジを応援したい人は誰なのか?GOAL(目的)は何なのか?を常に考え見失わないことが大切だと再認識しました。

Q5.猪名川DCの運営における今後の目標を教えてください

Nさん
先程お話しした「高い在庫保管能力の実現」に加え、あと2つあります。1つは、「規模の拡大に応じた業務整流化」です。モノタロウが成長を続ける中で、ビジネスプロセスをより効率化させていくことが重要になります。特に物流センターは、規模の拡大に伴い、仕入れ先の数や取扱商品数、管理するフロアや扱う設備が増加するため、複雑化しやすいと言われています。また、入荷工程は、商品の入荷タイミングや荷姿(※④)をコントロールしづらいことから自動化が遅れており、まだまだ改善余地があると感じています。以上のことから、自動化できるところは自動化し、無駄な工程を省いていくことで、規模の拡大に対応できる高品質なオペレーションを構築していきたいです。

※④ 荷姿
輸送するために荷物が梱包されている状態

もう1つは、「みんなが安心して働くことができ、誇りを持てるセンターにする」です。個人的には、地域の福祉との関わりを深めていきたいと考えています。立ち上げに際して、猪名川町福祉課から障害を持つ方々が就業されている施設をご紹介いただき、センター内の一部業務を委託しています。外部委託のため、なかなか施設に訪問できていないのですが、十数名の方が当社の業務に携わっていただいていると聞いています。今後は、地域との関わりを深めるための取り組みや社会貢献を行い、地域に根差すセンターを目指していきたいです。

Kさん
最近、新入社員研修の受け入れを担当し、新卒社員の皆さんに5M(※⑤)・なぜなぜ分析(※⑥)といった物流における基礎的な考え方をお伝えしたのですが、現場で働いている方の中でも知らない人は知らないままになっている可能性があるなと思いました。なので、現場で働く皆さんへ成長機会を平等に提供できるような環境を構築し、センター全体のレベルアップに繋げていきたいと考えています。

※⑤ 5M
物流の業務改善で利用されるフレームワーク
Man, Machine, Material, Method, Management の頭文字を取っている
※⑥ なぜなぜ分析
発生した問題事象の根本原因を探る分析手法

また、仕組み化できておらず一部の方の善意に依存しているもの、誰にでも分かりやすく共有できていないルールを整備・標準化し、猪名川DCで展開していきたいです。例えば、猪名川DCでは一般的に普及していないフォークリフトを導入しているため、運転における熟練者が少ない状況です。その中で、明確な基準がなく作業を任せてしまうと、作業者の個人判断に依存することになります。その結果、生命に関わる重大事故の発生や商品破損、施設設備破損に繋がりかねません。そういったリスクを低減させるために、現場スタッフへの教育体制を整えていきたいと思っています。例えるなら「事故が起きない環境づくり」と「事故を起こさない人づくり」の取り組みです。

モノタロウの成長に伴い、規模もどんどん拡大し、人も増えていくと予想しています。効率の良い安定したオペレーションにしていくためには、もっと自分の学びを深めていかないといけないですし、自分が共有できるものは周囲に拡散させていきたいです。それが「人材」を「人財」として育成し、未来の大きなプロジェクトで活躍する次世代のリーダーを増やしていくような良いサイクルとなれば嬉しいです。

本日はありがとうございました!

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