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乾燥と加湿器 ~家電製品の基礎知識~

秋になると訪れる乾燥。気温が下がり、空気が乾燥することで様々な健康上のトラブルが生まれます。人の健康・快適性を守る理想的な温湿度は、季節で変動はありますが、温度は18℃~28℃、湿度は40~60RH(relative humidity=相対湿度)の状態と言われています。今回の記事では、湿度が引き起こすトラブル(特に乾燥)と対策として生まれた加湿器について解説していきます。

湿度と菌の関係性

冒頭でも述べましたが、相対湿度で40%~60%の状態が理想と言われています。ASHRAEのデータでは、湿度40%以下になると乾燥のしすぎで、健康に害を及ぼすような多くのウイルスやバクテリアや菌が活発になります。一方、湿度60%以上では湿度が上がるほど、真菌(しんきん ※カビなど)やダニが発生しやすい危険ゾーンになります。

ASHRAE Trans.91-B (1985)

また乾燥は身体機能の低下も引き起こします。空気が乾燥することで口や鼻の粘膜も乾燥しやすくなり、吸い込んだ微生物や粉塵などの異物を体外に排出する役目をもつ絨毛(じゅうもう)の活動が鈍くなり、風邪などの感染に対する防御機能が低下してしまいます。乾燥が進むと風邪やインフルエンザにかかりやすくなるのは、病原菌が増えることだけが原因ではなく、人間の防御機能が落ちることも大きな原因の一つなのです。

相対湿度と絶対湿度

湿度には相対湿度と絶対湿度があります。一般的には「相対湿度」がよく用いられ、大気中にどの程度の割合で水蒸気が含まれているかを表し、気温が高いほど水蒸気を含むことが出来る量の限界が増えます。つまり「気温10度の湿度50%」と「気温20度の湿度50%」では同じ湿度50%ですが、水蒸気そのものの量自体は気温10度の方が少ないのです。同じ湿度でも気温が低い方が水蒸気の量自体は低いという事は、冬にエアコンで室温を上げると水蒸気の量自体は変わっていないものの、水蒸気の持てる量の限界が上がり相対的に湿度が下がってしまいます。ただでさえ冬は空気が乾燥しているのに、その状態で部屋を暖めると更に乾燥してしまうため、加湿器が必要になります。

加湿器の歴史

加湿器が無かった時代、火を使って湯を沸かし、その蒸気で加湿をしていました。そんな中、1925年、アメリカ・ニューヨーク在住の『カズマン』さんという方の息子が、風邪をひいてしまい、医者から“部屋の中が乾燥しないように加湿して下さい”と言われた『カズマン』さんはヤカンに水を入れて、火にかけていました。すると、このヤカンが突然爆発してしまいました。被害は大きくなかったそうですが、これをキッカケに『カズマン』さんは“安全な加湿器が必要だ”と痛感し、翌1926年に、空焚きしても安心な安全装置を備えた、世界で初めての『電気式のスチーム加湿器』を発明しました。

加湿器の種類

加湿器には空気中の水分量を増加させ、湿度を上げる役割があります。また様々な種類も存在しています。

スチーム式(加熱式)加湿器
水をヒーターで加熱して蒸発させ、その湯気(水蒸気)をファンで空中に送り出して加湿する。やかんでお湯を沸かすイメージの加湿器。

引用:https://panasonic.jp/life/air/170023.html

(メリット)
・水を沸騰させるため、菌が繁殖しにくく衛生的
・ヒーターを使い、高温の蒸気を放出するため室温を上げる効果あり
・シンプルな構造のモデルが多いため手入れが楽

(デメリット)
・ヒーターを使用するため、消費電力が高い
・吹き出し口が熱くなり、蒸気に触れたり転倒させると火傷のリスクあり

(電気代の目安)
消費電力は300W程度。1時間あたりの電気代は8円ほど。消費電力500Wとなるモデルもあり、沸騰時には900Wから1000Wに達するものもある。

超音波式加湿器
超音波でミスト(霧)を発生させる技術を使った方式。超音波の振動で微細なミストが発生。このミストにファンで風を当て、空気中に拡散。ヒーターを搭載しないシンプルな構造で様々なメーカーが参入している。

引用:https://panasonic.jp/life/air/170023.html

(メリット)
・消費電力が低い
・小型でデザイン性にすぐれるモデルが多い
・アロマオイルを入れ、香りを楽しめるモデルもあります。

(デメリット)
・タンク内の水に雑菌が繁殖しやすく、放出されるミストに雑菌が混ざる可能性がある
・水に含まれるミネラル(カルシウム)で、部屋が白く汚れることもある
・こまめな手入れが必要

(電気代の目安)
消費電力は平均すると20W〜25W程度。1kWh=27円で換算した場合、1時間あたりの電気代は約0.5円と安価。

気化式加湿器
水を含ませたフィルターに、ファンで風を当てて気化した水蒸気を放出する仕組み。濡れたタオルに強風の扇風機の風を当てるようなイメージです。

引用:https://panasonic.jp/life/air/170023.html

(メリット)
・ハイブリッド式と同様にフィルターに風を通し気体として放出するので水の粒子が小さく、雑菌の放出が抑えられる。
・ヒーターレスなので電気料金がほとんどかからず、熱くならないのもメリット。お部屋の空気が水分で満たされたら自動で加湿量を調整、加湿し過ぎを防ぐ自己調湿機能がある。

(デメリット)
・加湿能力を得るためには送風量が多くなりがち。モデルによっては、モーター音やファンの風切り音がうるさく感じることも。

(電気代の目安)
消費電力は5W程度。電気料金も最も少なく、1時間あたり0.2円ほどとなります。

加湿能力の目安

加湿器の加湿能力は「ml/h」の単位で表され、部屋の広さに対して約200ml/hの加湿能力が必要とされています。加湿器の畳数の目安は、一般社団法人日本電機工業会規格「JEM1426」によって定められています。

室温20℃、相対湿度30%の条件で1時間あたりに加湿できる水分量に基づき、次のように決められています。また、適用畳数の値は洋室・和室で異なるため、設置する部屋のタイプを確認しておきましょう。最大加湿量と適用畳数の目安は下表の通りです。

引用:https://www.dainichi-net.co.jp/products/humidifier/calculation/

まとめ

加湿器には様々な種類があります。家計や家の大きさ、デザインなど様々なポイントに注意して、自分に合った加湿器を選ぶようにしましょう。

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