値入れとは
小売店はメーカーや問屋(卸売業者)から商品を仕入れ、消費者が購入した時にお金に変わります。小売店にとって仕入値は商売を行うにあたり生命線であるため、メーカーや問屋にも厳しく条件を求められる。そういった条件面での話でよく使う言葉が値入れです。また仕入れた商品全てが販売に繋がる訳ではありません。値段を大幅に下げ販売を行う。その際にメーカーや問屋には値引き(処分費)が求められます。今回の記事では値入率や処分費について解説します。
値入と粗利益の違い
値入れ
売価を設定する際に想定した利益の割合を指します。値入率は仕入れ原価から売価を引いた額を売価で割ったもので計算される。
粗利益
実際の売上高から仕入原価を引いた額を売上高で割ったもので計算される。
値入れと粗利の相違点は、値入れが事前に使うものであり、粗利益は実際の結果を受けて計算されるものだということです。小売店にとってはこの違いは非常に重要になるが、メーカーや問屋は基本的には値入を抑えておけば問題ありません。
値入率の計算方法
値入れ率=(売価-原価)÷売価×100
メーカーと小売店の間には二つの価格があります。様々な言い方が存在するがここでは売価と原価と表現します。
原価(下代、卸価格、納品価格)
メーカーや問屋(卸)が小売店に商品を提供するときの価格。
売価(上代、本体価格、小売価格)
小売店が消費者に販売する価格。
〈例〉
家電メーカーが炊飯器を小売店にて販売する場合
原価:7,000円、売価:10,000円、値入率:30%
【計算式】
値入率=(売価-原価)÷売価×100
30%=(10,000円-7,000円)÷10,000円×100
つまり理論上では小売店は炊飯器をこの売価で1個販売すると30%の値入率があることになります。
一般的な値入率
では一体どのぐらいの値入れが基準になるのでしょうか?このような問い合わせをよく受けます。残念ながら業界、企業、商品によって大きく異なるため一概にお答えすることはできません。スーパーで客寄せパンダとして販売している商品だと値入率は10%であったり、一方で家具屋で販売しているソファの値入率は全く異なります。そのため基準となる値入率は一度業界人に確認する方が良いでしょう。値入率の基準が40%である企業に対し、10%で提案しても採用されません。比較的商品の価格を崩さず、高単価な商品を大事に販売する小売店は値入率を多く求められる傾向があります。
ここまでが値入れについてです。メーカーが提示した価格で販売すると理論上これだけ儲かるという基準になる考えです。しかし全ての商品がその価格で売れる訳ではありません。在庫の回転が鈍かったり、全く売れない場合は価格を安くして売る必要がある。その際に小売店からメーカー、問屋は値引き(処分費)を求められる。
値引き(処分費)とは
商品の販売不振の場合、小売店は価格を下げて販売するためその分粗利益は下がる。下がる分をメーカーや問屋に値引きとして補填してもらいます。補填の方法も様々あるが以下の考え方は最低限抑えておいてください。
3割引8掛(さんわりびきはちがけ)
単語を分解すると、(売価の)3割引きで販売するから、(原価は売価の)8掛けの利益をとれるように値引きをください。ということです。
〈例〉
家電メーカーが炊飯器を小売店にて販売する場合
原価:7,000円、売価:10,000円、値入率:30%
しかし売れ残ってしまったためディスカウントして販売。メーカーに3割引8掛で販売できるよう値引きを要求。
3割引=(売価の)3割引きで販売する
上代10,000円の3割引き=7,000円で販売する。
8掛=(原価は売価の)8掛けの利益を取れるようにする。
7,000円(3割引後の価格)×0,8(8掛)=5,600円。
つまり下記のように価格を変更し消費者に販売します。
原価:7,000円、売価:10,000円、値入率:30%
原価:5,600円、売価7,000、値入率:20%
元々の7,000円の原価から5,600円に変更したため、差額の1,400円をメーカーに補填してもらう。
これが基本的な計算方法です。あくまで3割引8掛けは一例です。条件はメーカーと問屋、小売店とそれぞれ話し合って決めることになります。
まとめ
今回は小売店の値入れや値引きなど非常に重要な部分の解説を行いました。数式だけ見るとややこしく感じるかもしれませんが、かなり簡単な計算式です。先方の求める値入れから程遠く外れた提案をしたり、処分費などについても理解が無ければ小売店との取引は進めにくい部分でもあるため最低限の知識は抑えておく必要があります。
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