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Pioneer S-N901-LR

今回ご紹介するのはスピーカー。ですが、音楽制作向けのモニタースピーカーではなく、ミニコンポ用のスピーカーになります。なぜ民生用の、しかも古い(1998年製)ものを紹介するかというと、現在、このスピーカーが僕の自宅スタジオのメインスピーカーになっているからです(笑)。

【このスピーカーについて】

このPioneer S-N901-LRは、1998年に発売された同社のFILLというミニコンポシリーズの上位機種に採用されていたスピーカーで、単品価格は48,000円(ペア)。当時、大学2年生だった僕は店頭で色々なミニコンポを試聴して、これが付属していたFILLシステムを買った記憶があります。その時はスペックとかはあまり見ずに、聴いた感触だけで選んだと思うんですが、いま見るとなかなかスゴイ数字が並んでますね。


メーカー資料より
https://jpn.pioneer/ja/corp/news/press/1998/0827-1.html

再生周波数帯域が35Hz〜60kHzという、いま見てもこのクラスの製品ではまず見かけないようなスペックです。少なくとも、業務用モニタースピーカーであれば数十万は出さないと手に入らない数値です。まぁこの数字の示す精度がどの程度の誤差を許容しているかは知りませんが(おそらくだいぶ緩いと思いますw)、比較的コンパクトな3WAYバスレフという時点で結構貴重です。そもそも、こんな古いスピーカーをなぜ使うことになったのかと言うと……。

【導入経緯】

ちょっと前までは、JBL 104-BT-Y3を1年ほどニアフィールドモニターとして使ってました。

これがですね、ユニットのビビリやスピーカーターミナルの破損などで2回ほど修理に出したんですが、手元にない間スピーカースタンドが空いてて寂しかったので、戯れに20年以上前に使ってたこのスピーカーを引っ張り出してきて使ってみたんですよ。そしたらこれが思ったよりも使える印象で(笑)。

JBL 104も悪くはないんですが、うちの環境だとちょうど1kHzが盛大に凹んでしまって、ミックスの時にちょっと問題があったんです。それを解消しようとあれやこれやセッティングを詰めたんですが、どうしても解決できず。なので、Sonarworksの音響補正ソフトで補正して使ってたんですが、前述の通りにビビリが気になって。そのビビリも1回新品交換してもらったら、その新品も最初からビビリが出てまして(苦笑)。そこへ来ると、このPioneerのスピーカーは古くても劣化があまりなくビビリも出ないし、音も中域〜中低域重視のバランスでアリだなと思ったんですね。そして、何よりも見た目がグッと来る!なので、JBL 104を2回目の修理に出したタイミングで入れ替えを決意しました。

【音質】

肝心の音についてですが、前述の通り中域〜中低域が張り出した感じで、スペックにあるようなワイドレンジさは正直あまり感じられません。まぁ逆にそこが気に入ったんですけどね(笑)。最近のスピーカーは無理にレンジを広げたようなものが多く、そう言ったものは中域が薄くなってしまう傾向があるのが気になってたので。それに、これはペーパーコーンを採用しているからか、かつてはスタジオ定番だったYAMAHA NS-10Mの重心を低くしたような感触があったんです。悪くいうと古臭い音なんですが、妙な安心感がありまして(笑)。

このスピーカーはパッシブなので、アンプによっても音が結構変わります。最初はネットで買って全然使ってなかった1万円もしないような中華アンプで駆動してみたんですが、音質以前にS/N比が悪くて。つまり「サーーーー」というノイズがだいぶ大きいので、仕事には使えない。そこで、以前、富士通テン(現デンソーテン)のECLIPSEで使っていたオラソニックのアンプを引っ張り出してきて本格的に設置してみたら、案の上、S/Nの問題はなくなり、出音にもパワーと張りが出るようになりました♪

オーディオI/FであるRME Fireface UFXとは、
SAECの石英を使ったオプティカルケーブルで接続。

【セッティング】

これは仕事に使えそうだなということで、セッティングを詰めていきました。その際に感じたのは、このスピーカーはスイートスポットがとても狭いということ。このスピーカーの奥にミッドフィールド的な役割でJBL LSR305を置いてるので、それを遮らないよう、どうしても横置きしたかったんですね。そのせいか、少しでも頭を前に動かすと途端に高域がなくなります(苦笑)。逆に後へいくと左右の音が混じりすぎて音像や定位がおかしくなる。そのことを考慮し、スピーカーの内振り角度を何度も微調整しました。けど、最近は地震が多いじゃないですか。割と大きな横揺れがあった場合、やはり微妙に動いちゃうんですよね。まぁその場合も、スイートスポットが狭いお陰で分かりやすいんですが(笑)。もっとも、もしかしたらツィーターとスコーカーが内側に来るようにセッティングすると(つまり左右を入れ替える)、また違うかもしれませんが。

【音響補正】

最後に、Sonarworks SoundID Referenceで音響補正をかけてみました。

音響補正については、VIDEO SALON(玄光社)2021年12月号の特集
詳しく書いているので、未読の方は是非♪

するとどうでしょう……びっくりするくらいにワイドレンジな音になったじゃないですか!!スイートスポットの狭さは相変わらずだけど、上から下までまるで別物のようにしっかりと鳴るようになりましたね♪ 6.3インチというウーファー径や60k対応のツィーターが本来の力を発揮している印象。補正をOFFにすると古臭いナローレンジな音になるので、ミックスのチェックで使い分けることも可能です(笑)。この違いには、先日お越しになったオーディオライターやナレーター/エンジアの方達も驚いてましたね。

メインマシンもM1 MaxのMacBook Proにほぼ完全移行したので、
2022年からはこのシステムでバリバリ仕事していきます!

作曲やMAなど、お仕事のご依頼はコチラから〜😁
どなたさまでもお気軽にご連絡ください!!


【まとめ】

というワケで、思わぬ掘り出し物を発掘したなと(笑)。20年以上もしっかりと保存していた自分を褒めてあげたい😆そして、90年代末というCD売上の全盛期に、それなりのコストをかけて真面目に製品開発したであろう当時のパイオニアの技術者に感謝します!

しばらくはこのスピーカーを使い続けようかなと思ってます。奥のJBL LSR305は、そのうちもっと大きなスピーカーに替えようと思ってますが、さて、いつになることやら……😅

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