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アメリカ帰りの25歳が実践するグローバルミックスキャリア論

メンバーひとりひとりの個性や強みを引き出し、掛け合わせる「Independent, Together」というカルチャースローガンを掲げているクリエイティブエージェンシー『monopo』。
今まであまり表には出てこなかったメンバーそれぞれのバックボーンや仕事観を、インタビュー形式で紹介する企画を連載しています。
第5回目に登場するのは、プロデューサーの久保田喜子。
ハリウッド映画に憧れてアメリカで映像を学び、帰国後はナショナルクライアントの映像制作を担当している彼女に、クリエイターよりもプロデューサーに憧れた理由や、社内外の信頼を得るためのコミュニケーション術、日米における制作現場の違いなどについて聞きました。

Profile

久保田喜子 Content Producer/Account Executive
1996年 東京生まれ。2021年にmonopo入社。
東洋英和女学院高等部を卒業後、ハリウッド・エンターテイメントに興味を持ち、2014年にカリフォルニア州立大学ロングビーチ校に入学。現地で4年間、映像制作を中心にエンターテインメントビジネスを学ぶ。卒業後は博報堂DY出資の制作会社で広告・MV制作のコーディネートを経験。
2019年に東京に戻り、MVやTVCM、ドキュメンタリーTV番組、SNSアセット、ライブ配信番組など、バリエーション豊かな映像作品のプロデュース、プロダクションマネジメントを担当。豊富な映像制作のノウハウを生かして、お客様の課題解決に適切な表現方法を常に追求し続ける。

映画制作に憧れてアメリカへ渡り、ハウスパーティーの楽しさを知る

―monopoに入る前、久保田さんはアメリカで仕事をされていたそうですね。

久保田:そうですね。私はアメリカの大学に行ってたんですけど、向こうには卒業してから1年間は勉強した分野の仕事を現地でできるシステムがあって。それで、学生時代にインターンをしていた映像制作会社で働いていました。

―大学では何の勉強をされていたんですか。

久保田:映像ビジネスの勉強をしていました。もともとはMARVELの映画が大好きで、「これ作りたい!」と思ったのがアメリカへ行った一番の理由だったんです。だけど、映像を学んでいくうちに、私がやりたいのは監督や撮影、編集の仕事ではなく、企画を考えたり、チームメンバーを集めたりと、制作を後ろから支えることだと思うようになって。それで3年生になって専攻を決めるときに、ビジネスサイドへ進むことにしました。そのまま気づいたら制作会社にいたという感じですね。

―その映像制作会社では、どんな仕事をされていたのでしょう?

久保田:主にミュージックビデオやCMを作るプロダクションアシスタントですね。そこからいろんな経験を積ませてもらって、最終的にはロケーションの確保や、契約まわりのことを担当するプロダクションコーディネーターの仕事をしていました。
大学で学んだのは映画作りのビジネスで、ミュージックビデオやCMの現場とは制作期間も予算も違っていたんですよね。だけど、実際に働いてみて、この仕事は勉強したことよりも場数でしかないと感じました。

―現場で学ぶことのほうが多かったと。

久保田:そうですね。人との関わり方や、どこでどういう会話をすべきかなどは、現場でしか学べなかったと思います。最初は何もわからなくて、周りの方がどんなことをしているのかをひたすらコピーする日々でした。

―実際に映像制作の現場に立ってみても、自分がやりたいのはクリエイター的な仕事より、プロデューサー的な役割だという気持ちに変わりはありませんでしたか?

久保田:そこは変わらなかったですね。私は、クリエイターの方々が自分の作りたいものをかたちにしていくのを見るのが好きなんだなと改めて思いました。だから、それを手伝いたいなって。
でも、もともとは人前に出るのが好きで、裏方には興味がなかったんですよね。

―そうなんですね。何をきっかけに変わったのでしょうか?

久保田:自分よりもっとすごくて、前に出るべき人がいることに気づいたんです。あとは、人とコラボレーションすることでシナジーが生まれたり、面白いものを作れたという大学での体験も大きかったと思います。自分が前に出るよりも、そういう場を作る人間になりたかったというか。

―自分が目立つよりも、みんなが力を発揮できる場を作ることに喜びを感じるようになったんですね。

久保田:はい。私、本番のために何日もかけて準備するようなことが好きなんですよ。学生の頃は、月に一度ハウスパーティーをするのが生きがいで(笑)。1ヶ月かけて面白い企画とか、誰を誘おうかを考えるのがすごく楽しかったんですよね。みんなが楽しんでくれる場が作れると自分もすごく嬉しくて。

―それを聞くと、久保田さんは根っからのプロデューサー体質って感じがしますね。

久保田:そうかもしれませんね(笑)。

久保田:ミュージックビデオやCMの撮影って、ほとんどが1日で終わるんですよ。でも、その撮影がうまくいくために、数ヶ月かけて様々なリスクヘッジをしていくのが私の仕事なんです。だから、無事に撮影が終わって、作品が完成して、それをみんなで見ながら「今回の撮影は楽しかったね!」とか「またこのチームでやりたい!」みたいな話をしているときが一番幸せを感じます。いい思い出を語れる現場作りができたら最高だなと思ってますね。

―それは、ハウスパーティーにも通じるものを感じますね。みんなが楽しんでくれて「またやりたい」って思うことが一番のゴールみたいな。

久保田:確かに(笑)。それはめっちゃあるかもしれないです。やっぱり楽しい人たちに囲まれていると、自分も楽しいじゃないですか。なので、みんなが楽しんでくれることで、自分も嬉しいって感覚はずっとありますね。

先回りしたコミュニケーションと仕事の成果で得た社内の信頼

―アメリカでの仕事を終えてから、monopoに入るまでの経緯を聞かせてください。

久保田:アメリカで働いていた会社の本社が東京にあって、そちらへ異動になったんですよね。そこで一緒にお仕事をさせていただいたプロデューサーの方が、「ゆっこちゃんに絶対合う会社があるよ」って紹介してくれたのがmonopoだったんです。
一度オフィスに遊びに行かせてもらったときに、CEOの佐々木さんが来て「めちゃくちゃ溶け込んでて、外の人だと思わなかった」っておっしゃってくださって。別に内定をもらっていたわけじゃないんですけど、「おめでとう!」と握手の手を差し伸べられたんですよね(笑)。そういうウエルカムな雰囲気で、しかも話していてワクワクする人がたくさんいたので、自分も一緒に働きたいと思いました。それで2021年の5月からジョインさせてもらったんです。

―入社してみての印象はいかがですか?

久保田:外から見ていた印象と変わらず、みんな楽しそうに働いている会社ですね。それに、入社してまだ1年も経ってないのに、私のことを信頼してくれて案件を任せていただいたりしているので、自分が成長できる環境だなとも感じています。自分のキャリアプランの話をすると、「それに合った案件をやっていこうね」って言ってくださるんですよ。それはすごくありがたいです。
monopoのみんなは個々に目標を持っていて、めちゃくちゃアンビシャスなので、私もいろいろと将来のことを考えるようになりました。入ってすぐの頃は「PM(プロダクションマネージャー)として、もっと成長したい」と考えていたんですけど、いろいろと仕事をしていくうちに「制作を仕切るだけじゃなくて、その案件自体を仕切れるプロデューサーになりたい」と思うようになったんですよね。

―仕事を任せてもらうためには、信頼感が必要だと思います。社内で信頼を得るために意識していることはありますか?

久保田:やっぱり会話が大事なんじゃないですかね。私はあまり意識していなかったんですけど、普段の会話でも、チャットツールのやりとりでも、「丁寧だね」って言っていただくことが多くて。そう言われて思ったんですけど、「相手が今こんな状況だから、こういうふうに言ってあげたらいいかな」とか「ちょっとキツめの話だから、言い回しを変えてみよう」ってことを普段から考えていたんです。それがよかったのかもしれないですね。
あとは、会社に入ってすぐに映像案件がたくさんあったので、それをしっかり仕切れたのが信頼に繋がったのかなと思います。

―コミュニケーションと仕事の成果で信頼が築かれていったんですね。お話を伺っていて思ったんですけど、相手や現場の状況を俯瞰して見渡すというのは、ハウスパーティーの主催者的な立ち振る舞いに似ている気がしますね。誰と誰を呼ぼうとか、料理を出すタイミングを考えている感覚に近いというか。

久保田:それはあるかもしれないですね(笑)。ハウスパーティーでも、現場作りもそうですけど、みんなが今どうしてるか考えて、先読みしながら動くというのは共通していると思います。

契約で守られているアメリカと、暗黙の了解がまかり通っている日本の労働環境

―monopoに入ってからのお仕事で印象に残っているものを教えてください。

久保田:一番印象に残っているのは、NIKEのドキュメンタリー映像を作ったことですね。社内でキャリアプランの話をしていたときに「スポーツブランドの案件をやりたい」って言ってて、具体例としてNIKEの名前をあげていたんです。その1カ月後には、本当に自分がNIKEの仕事をやることが決まって。なんか呼び寄せちゃった感じだったんですけど(笑)。

―いきなりNIKEの仕事依頼がきたってことですか?

久保田:そうなんです。たまたまオフィスに遊びに来ていた方が、「NIKEの案件があって、映像制作を仕切れるチームを探している」という話をしていて。ちょうど私が入社してすぐだったんですけど、映像制作会社の出身ということで仕切りを任せていただいたんですよね。

―すごいですね。その偶然性も、いきなり大仕事を任せる会社の度量も(笑)。

久保田:私もそう思います(笑)。その仕事がなぜ印象に残っているかというと、憧れていたNIKEの案件ということに加え、内容や制作チームも最高だったんですよ。日本の女子スケートボーダーで写真家としても活躍している方と、その友達のコミュニティの映像を作るという内容で、制作チームはプロデューサーもアートディレクターも女性という、パワーウーマンたちが集まった案件でした。それがもうすごく楽しくて。

NIKE SBのソーシャルコンテンツとして、スケボーを心から愛するスケボー女子のありのままの姿をとらえたハートフルなドキュメンタリー動画「Japan Diary」を制作した。

―商品紹介みたいな映像だったんですか?

久保田:全然違うんですよ。NIKEの服を着て、スニーカーを履いたくらいで、あとは本当にみんなが楽しんでる様子を作品にした映像でした。スケボーを中心に女の子たちを撮影して、それをコンテンツにするという依頼だったんですよね。
そのなかで私はロケ場所を探したり、人を集めたりして、予算のなかでどんなふうに撮影を進めていくかをマネジメントしました。インターナショナルなチームで今までよりもチャレンジングな仕事だったんですけど、めちゃくちゃ楽しかったです。もう、終わったときの達成感はヤバかったですね(笑)。

―制作の過程や現場で、日本とアメリカの違いみたいなものは感じましたか?

久保田:NIKEの案件はグローバルだったので、がっつり日本の制作現場って感じではなかったんですけど、普段の仕事をしてて思うのは、日本のみなさんは本当に丁寧ですね。会話やメールもですし、資料の作り方もめちゃくちゃ丁寧だなって。アメリカは、みんな自分のタスク範囲だけしかやらないので、そういう意味では効率的なんですよ。
あと、一番大きな違いは業界における制作現場のルールだと思います。撮影ではフリーランサーとのお仕事も多々ありますが、日本の場合、映像制作にまつわるルールが特に存在せず、ワーカーたちが守られてないんですよね。アメリカでは、仕事をする際には必ず仕事内容や支払額を決めて契約を結びます。労働組合によるルールもすごく厳しいので、契約書に記載の労働時間を少しでも超えた場合には、その分のお支払いもします。日本は、そのあたりが曖昧なんですよ。

―確かに。「サービス残業」なんて言葉もありますもんね。

久保田:契約で守られているアメリカと、暗黙の了解になっている日本の労働環境には、すごく差を感じます。日本だと夜中まで撮影して、次の日も朝5時集合みたいなことがあるんですよ。でも、睡眠って本当に大事だから、そんな状態だと次の日のパフォーマンスも落ちるじゃないですか。アメリカの現場では、みんなちゃんと寝て、次の日は元気な状態で仕事に来るのですごく効率がいいんです。
そういう環境面は、私みたいな立場の人間が守ってあげなきゃいけないので、アメリカでの経験を活かしながら現場作りをしていきたいと思っています。日本の労働基準法を変えてやろうとまでは考えてないですけど、せめて自分の現場ではみなさんに気持ちよく仕事をしてもらいたいので。

―「今後はこういう仕事をやっていきたい」というビジョンがあったら聞かせてください。

久保田:楽しい案件だったら何でもやりたいんですけど、「これくらいの予算で何かやってください」みたいな感じで、案件をゼロから作っていくような仕事はやってみたいですね。それくらい信頼して仕事を任せてもらえるようになりたいです。

―そうやって仕事を任せてもらうための〝自分の売り〟って、どういうものだと思っていますか?

久保田:自分の売りですか、なんだろう。仕事は楽しくやりたいので、「楽しい案件作りをしてくれる人」みたいな印象をみなさんに持っていただけたら嬉しいですね。超大変な現場だったり、超大変な編集スケジュールのときもあるかもしれないけど、クリエイターチームにもクライアントさんにも「喜子と仕事すると楽しいよね」って言ってもらえるようになりたいです。どんな仕事でも楽しくなるような工夫は絶対にできると思うので。

―映像制作の面白さって、どういうところだと思いますか?

久保田:映像には作った人がいるんですよ、絶対に。ミュージックビデオに映っているのは、アーティストが歌っている姿ですけど、その裏には演出した人や、美術セットを作った人、撮影した人などがいます。そうやって関わっている人の数が多いのが、映像制作の面白さ、奥深さだと思いますね。たった15秒のために、本当にたくさんの人が関わっているという。そうやって「みんなが集まってひとつのものを作る」というのが、私は好きなんですよね。

―関わる人が多いということは、まとめる側の負担も大きくなると思います。そういう苦労を乗り越えて完成した映像は、久保田さんにとってどのような存在なのでしょうか?

久保田:我が子ですね(笑)。母親みたいな気持ちで見ています。習い事なんかでもそうですけど、親が子どもにしてあげられるのってコネクションを作るところまでなんですよ。そこから子どもがどうなるかは、本人次第じゃないですか。
それと同じで、映像制作は自分が作ったコネクションによって、制作チームがどういうふうに開花していくのかを見守っているような感覚なんですよ。成功したら本当に嬉しいですし、うまくいかなかったら責任を感じます。「自分が作ったもの」というよりは、「それ自身が育っていったもの」という感覚ですね。そういう意味でも、本当に我が子のような存在だと思います。

久保田喜子が思う「monopoらしさ」とは?

―今後またアメリカで働きたい気持ちはありますか?

久保田:あります。アメリカだけじゃなくて、地球のどこでも活動したければできると思うので、機会があれば海外でも仕事をしたいですね。アメリカでも、ヨーロッパでも、アジアでも。海外にも支社があるmonopoは、そういう機会を与えてくれる場所なので、自分の夢はめっちゃシェアするようにしています。

―まだ入社して1年も経っていないですが、monopoに来てよかったと思いますか?

久保田:よかったですねー(笑)。それはもうずーっと言ってます。仕事で大変なこともありますけど、毎日必ず誰かにインスパイアされているので。そんな刺激的な環境にいられて、すごく嬉しいです。

―いろんなルーツを持っている人がいるから、受ける刺激も多そうですよね。

久保田:そうですね。やっぱり「monopoブランド」というのが形成されているので、そこに自分が入らせてもらったのが嬉しいし、それに恥じないように自分の価値もしっかり築かなきゃなと思っています。
個性的な方々がたくさん集まったmonopoという場所のなかで、どういうふうに自分の力を発揮していくかを考えさせられるし、既存のブランドのイメージを崩さないようにしなきゃというプレッシャーもあります。でも、入社できてよかったし、今後もずっと一緒にいたいなという気持ちですね。

―今の「monopoブランド」というお話にも繋がると思うんですけど、久保田さんが思う「monopoらしさ」ってどういうところですか?

久保田:んー、個々が強すぎて「monopoらしさ」って一言では語れないと思うんですよね。いろんな人がいて、それぞれにmonopoらしいところがあるので。
例えば、プロデューサー兼ディベロッパーがいて、その人がmonopoらしいなと思うのは、ひとつのキャリアに縛られず、いろんな才能を兼ね備えていることだったりします。昼はめちゃくちゃ営業をやってるけど、夜はDJをやってますみたいな人も、monopoらしいなと思いますし。だから、一言で表すのはすごく難しいんですけど、いろんな才能がミックスされた組織って感じがしますね。

―先ほどおっしゃっていた「monopoブランド」というのは、どういうものだと捉えてますか。

久保田:「monopoにお願いすれば間違いない」みたいなところですかね。コミュニケーションの面でも、アウトプットの面でも。あとは、「他と違うことをやってくれる」みたいな期待感も、monopoブランドだと思います。

久保田:私がすごく居やすいと思う理由も、そこなんです。提案でも、クライアントさんが期待している答えを示すだけではなくて、「こういうのもあると思います」って伝えるんです。むしろ、そういう提案をよしとしているので、私には合っている環境だなと感じています。

―クライアントさんへの提案に、ちゃんと自分の主張も盛り込めると。

久保田:はい。クライアントさんに対して、それがベストだと思ったら、相手が求めている100点の解答じゃなくても提案していく。しっかり理由があれば、自分たちの主張を込めた提案をしようっていう姿勢が私は好きですね。
相手のことを考えての提案でもあるし、面白いことをやろうよっていう精神性でもあると思うんです。そういうところが「monopoらしさ」かもしれないですね。

執筆:阿部 光平 (https://twitter.com/Fu_HEY )
撮影:馬場雄介 Beyond the Lenz (https://www.instagram.com/yusukebaba)

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