ふつうの建築
ふつうの建築がいいなと常々思っている。
背伸びをせず、嫌味がない建築。
普段着なんだけど、ちょっと高級なお店にもそのままふらっと入っていけるような上品さをもった洋服のような建築。
大学で土木工学を専攻していたとき
たしかそんな趣旨で、深く頷いた。
土木工学はとても広義で社会性を多く求められる分野だ。
プロジェクトメンバーも多岐に渡り、より多くの人に愛される建築物であるべきなので、そこには個人的なデザイン様式はあってはならないと思っている。
対して、建築は土木構造物と比べるとよりプライベートな要素が強く、個人的な嗜好に対しての包容力を持っているのではないだろうか。
土木工学科出身の僕はいま、より狭義で個人的な解釈を受け入れられる住宅設計を生業としている。
思考をまとめていく作業の中、建築物の中に、自己表現をしたくなってくるときがあるのだけれど、そんな時、あのときの講義の内容が頭をかすめる。
自己の葛藤を受け入れながらも、
自然条件や時間の経過に寄り添い、風景に馴染む建築設計を心掛けて続けていきたい。
(おわり)
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