医師らが口コミに関してGoogleを提訴
63人の医師がGoogleを提訴したという報道があった。これには立場上言いたいことがある。正直、話を持ってきてくれたら僕も一緒にしたかったぐらいだ。僕はさほど問題ではないが友人が迷惑患者に当たっていたからだ。
正直Googleの口コミに関しては性善説が採用されている。要するに悪意のある人間に対応できないということだ。
実際あった友人の例に話をしよう。
ある患者がきた。50代女性かなりナーバスそうな印象を受けたそうだ。既往歴などを聞くと精神的な薬も服用しているとのこと。どうもドクターショッピングをしているようで、いつまで経っても治療が終わらない、治らない、痛みが取れないとのことだった。しかし、医師には応召義務があり、原則断ることはできない。
状況的に嫌な予感しかしないので最大限注意を払い、従業員にも注意を促したそうだ。そして友人は歯科医師なので該当の歯を診たそうだ。
治療はちゃんとされているが、痛がりと患者のキャラクターを考えて前医は前に進めなかったのだろうと判断したそうだ。もちろんそんなことは言わないわけだが、基本的には治療に問題ないだろうと進めたそうだ。
しかし、ここで問題が起きたそうだ。基本的には治療を終わるフェーズに入ったそうなのだが、患者自身が納得しないという状況に陥ったそうだ。
どういうことかというと、患者が求めた治療は一般的な内容であったが、症例的に(患者自身が放置期間が長すぎて)できない状況に陥っていたのだ。
患者は一般的な治療を求めているわけだが、それができないのだ。もちろんただできないと言っても納得はいかないだろう。理由を細かく模型も用い、状況を説明したそうだ。よく説明の仕方が悪いというひとがいる。それはもちろん一理あると思うし、そこは受け入れないといけないところもあると思う。しかし、聞く気のないやつを聞く気にしてさらに納得をさせるということは不可能と言っていい。マインドコントロールされた人間のマインドコントロールを解いてさらにこちらの説明を納得させるぐらい難しい。
実際ヤバいひとやとわかっているから爆弾処理をするように最大限注意を払って説明をしているのだ。僕が内容を軽く聞いても理解できるぐらいの内容だが「納得できない」と言われたらそれまでなのだ。
最終的に友人が出した結論としては、
・患者の言う通りにする
・それをすると必ず痛みが出る状況(簡単な理由で説明しているが納得できないらしい)だが痛みが出ても文句を言わない
それを「わかった」と言うのでそうすることにしたそうだ。
そしてそれをした当日、その場で「痛い」と患者が言うわけだ。
友人「説明したでしょう」
患者「痛いのはおかしい」
と言ってきたそうだ。挙句は「聞いてない」と言われる始末。
そこから時間をかけ痛みが出ないよう(最初に友人が提案した形)に調整し、とりあえずの痛みが出ないようにしたそうだ。説明から調整からやたらめった時間をかけ、やっとのことで終わったそうだ。
そしてその患者と思しきアカウントから星1評価、「治療がいい加減だ」とか「ヤブ医者」とか書かれていた。ちなみに歯科の保険診療は本当に儲けが少ない。時間をかければかけるほど赤字なのだ。それを説明から調整から時間をかけ、挙句この仕打ちでは可哀相が過ぎる。友人は「説明はまだいい。聞く気があるひとには時間をかけても構わない」というが、真面目な友人は真面目に患者さんと向き合うだけ損をすると言うことになってしまう。ましてや聞く気がないひとへの説明は時間の無駄と言って差し支えない。だって相手は何も理解しないのだから。噛み砕くとかわかりやすくとかの問題ではない、聞く気がないのだから。
また違う友人は星1評価でこんなことを書かれていた。
「こちらがお願いした治療をしてもらえなかった」
友人の言い分はこうだ。
「その場でも説明したけど、あなたの症例ではあなたの言っている治療はできないんだ」と。
一般の方は医者がお高くとまっているだけじゃないかと言うひともいる。確かにそういうひともいるだろう、しかし今あげた友人たちはそんな人間じゃない。それは僕は知っている。人間性も志も。
そしてGoogleには口コミに消す要請を出せるのだが、この友人の例は二つともGoogleに却下された。つまり口コミが残っている。
医療現場ではしたくてもできないことある。患者さんの希望に添いたくても添えないことがあるのだ。共感が低いのでは?とか寄り添っていないのでは?というひともいるが、あくまで科学者なので都合のいいことばかり言えないのだ。占い師みたいに非科学的なことをペラペラ言えるならどれほど楽かと思う。
患者さんに都合のいいことばかり言ってたらトラブルもないだろう。
「あなた死ぬわよ!」と脅して高いお金を請求することもできるだろう。
医療はそれができないのだ。少なくとも僕や友人はそんなことはできない。
みなさんに本当に理解してほしいのは、
『世の中には本当に自分勝手なひとがいる』
ということだ。
そして、そういうひとの多くは当然身体を患う。
だって自分勝手だから。
ここで誤解のないように言っておくが、
「身体を患っているひとの多くが自分勝手」というわけではない、
「自分勝手なひとの多くが身体を患っているひとが多い」のだ。
想像してほしい。
あなたが整形外科医とする。こんな患者さんがきたらどうだろうか。
「膝が痛い。薬切れたらすぐ痛くなる。膝が全然良くならない。」
という太った患者がいたら。
「そらそやろ」としか思わないだろう。
膝が痛いのは太っているのが原因なのだから。
太りやすいひとはいるが、痩せられないというひとはいない(限界まで痩せていたら別だが、膝が痛いぐらい太っているひとの話をしている)。
膝が痛くて動けないというが、食べるものや食べる量を調整できれば動かなくても痩せるし、薬が効いて痛くないうちに動けとも思う。
ただ、自分勝手でも話の通じるひとはいい。
今回の例でいうと「まぁ太っているのは自分のせいだし」というひとだ。
困るのは「膝が痛いのは先生の治療が効いていないせい」とする他責のひとだ。
そしてそういうひとは他責にするわけだから、自分の状況が悪いのは他人のせいだと思っている。生活が身体を作るわけだからそんなひとの体調が健康なわけがない。それでももちろん圧倒的少数だが、一般生活しているひとよりは病院の方がヤバい人が多くなるというのはわかってもらえるだろうか?
医療費が国家予算を圧迫しているというが、これだけ安価でこれだけ高品質な医療を受けられる国は他にはない。歯科に関してはコスパ世界一と言っていいだろう。
これだけ人件費や材料費が高騰しているのにそれでも今の値段が高いというなら、国が「このレベル以上の治療は保険診療から外します。」とすべきだ。「最低限の治療だけ国は保障します。それ以上を求める場合は各自自費でしてください」とすべきなのだ。そうすればかなり医療費は圧縮できる。
この歪みはなぜ起きているかというと、
「国がいい顔し過ぎている」せいなのだ。
国はお金を出さないが、最新治療も保険診療に入れたい、国民にいい顔がしたい、となった結果、医療従事者に歪みがきているのだ。
みなさん覚悟した方がいい。そんなに遠くない未来に日本の保険診療は崩壊が起きる。あくせく働いてもお金がもらえないのだ。命が関わる場で大きいリスクを抱えて仕事をしているのにお金がもらえないのだ。お金がもらえないのに誰が夜に救急を受ける?誰が夜に病棟を回ってくれる?誰が難しい手術をしてくれる?外国でやればもっとお金がもらえるのに誰が日本に残る?優秀な医師は大概英語ぐらいできる。
最後の砦となる第3次医療機関が崩壊する日もそんなに遠くない。
優秀な医師は海外に流出し、そうでもない医師が日本に残る。医療の質が担保できない。そうなれば日本の医療は崩壊する。
某政党は最低賃金1500円にしろと言っている。そんなことをする前に医療の国家予算を増やすのが先だ。先に最低賃金をあげたら有資格者である医療従事者はもっと人件費を上げないといけない。そうなれば医療費はもっと増大する。逆に上がらなければ医療は崩壊する。
日本の医療の崩壊するルートは無数に存在しているのだ。
その中で日本の医療が崩壊せずに持っているのは医療従事者の善意以外の何者でもない。だから、僕は陰謀論者が嫌いだし、そいつらは医療を受けるなと思う。
僕も医療従事者ではあるが、僕には感謝はしなくていい。
僕自身は大した人間ではない。
しかし、みなさんの周りの医療従事者の方に感謝してあげていただきたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?