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合気道の身体の使い方①

武術研究家のモノノフです。武術全般研究をしていますが、合気道の身体操作理論がよくできているので、合気道をベースに研究することが多いです。僕の中での理論があってそうかなという一定の基準は『再現性を持ってできる』かということと『他のものも説明できる』かということです。もちろんこれらをクリアしていても間違っていることもありまし、理論自体にまだ先があることも多分にあります。合気道はそういった面で多くの説明ができるので好きです。他の武術の中では太極拳との相性が非常にいいです。

例えば、合気道では同じ技でも掛け方が違ったり、理論が違ったりということがあります。同じように見えて違うことをしているというのが多くあるのです。そういうことをして合気道は技をかけていくのです。相手の認識と実際の動きが違うと耐えられないのです。相手が右に力がかかっていると思っているので左に耐えていたら、実は斜め上に力がかかっていて、見当違いの方向に力がかかっているから耐えられないのです。
有名なところで合気上げというものでも僕の中で7種類は違う理論があります。複合的に使ったりもします。これは技自体がかかるなら基本的にどれも間違いではないのです。最終的には脱力してできるのがいいのです。脱力してできる技がいい理由は技術は難しくなりますが、汎用性が圧倒的に高いからです。では、力を入れる合気技とはあるのでしょうか?これに関していうと、僕の結論は

『あります!』

STAP細胞みたいになりましたが、『あります!』。どういうことかというと力を入れるのは入れるのですが、

『自分の身体を固めるのに100%力を使う』

のです。相手を押したりするためではありません。相手に技をかけるときに腕の力を腕を固めるだけに使うと技がかかりやすくなるのです。

これは単純な話です。相手に力を伝える時に柔らかいものより、硬いもので突いた方が相手に物理エネルギーが伝わりやすいのです。しかも、腕の力に頼ることもありません。腕の力は固めるのに使っていますので。初心者のうちはこういう使い方をした方が、体幹の力を使いやすく、感覚を覚えやすいです。合気道では杖を使った練習をしたりしますが、同じような効果です。自分の腕を杖のように使うと技がかかりやすいのです。

ちなみにこの理論を全面に出した武術があります。それは

『蟷螂拳』

です。腕をカマキリのような形で固定するようにして相手に力が伝わりやすいようにしたのです。そして、手首や肘の関節を90度に固定した腕は意外と汎用性が高いです。しかも、ずっとそうしているわけではなく、突く時は伸ばしたりもします。これは強力です。しかも、やり方さえ分かってしまえば、かなりお手軽に強くなれてしまいます。

合気道の場合は達人レベルになるとこういった理論はほとんど捨ててしまうのです。引き出しの奥深くにしまって置くというのが正しいかもしれません。自分が地道に積み上げた理論をポイッと捨ててしまわないといけないタイミングがくるのです。

怖い...

じゃあ最初から脱力の技だけでいいじゃないかと思うかもしれませんが、それだけでくると引き出しの数が少なくなってしまうのです。合気道は引き出しの数がものいう武道です。技がかからなかったらドンドン切り替えていかないといけないのです。それを繰り返した先に数少ない技、数少ない動きで決まる技ができてくるのです。

武術の身体の使い方の中に身体を繋げて使うというものがあります。もはやこれは大前提です。僕の中のそのポイントとして

『尻を締める』

というものがあります。『尻を締める』ができていないと下半身と上半身が繋がらないのです。最終的にはそこまで意識して締めなくても繋がってきますが最初はかなり重要です。そこで、僕の大尊敬している塩田剛三先生の作られた団体、養神館の構えについて説明しましょう。両手を前に出して正中の位置、足は後ろ足の先は3時の方向、前の足は11時ないし、10時に近いぐらいの角度のひともいるほどです。これらの目的は両手を大きく前に出しているのは肩甲骨と肩甲骨の間を広げるような動きを強制しています。ここが広がって身体を使うと相手にエネルギーを伝えやすいのです。そして足の位置はガニ股のように開いた位置になるので『尻を締める』を強制しているのです。実際は『尻を締める』ができていて上半身と下半身が繋がっていたら内股でも構いません。実際トップの画像の塩田剛三先生の写真は手は下段に構えていますし、前足はそれほど開いていません。目的さえ果たしていたら構えはどうでもいいのです。
ちなみに僕はトップの画像で使っている塩田剛三先生の構えが大好きでフルコン空手でもちょいちょいこうしています(フルコン空手の先生にはめちゃ怒られます。汗)。これはどういう構えかというと相手が武器を持っていようがいまいが対応できる構えです。距離や体捌きで相手の攻撃をかわし、自分の技を入れるんだという構えです。僕はこれが動きやすいのです。
『尻を締める』ができていたら内股でも構わないと書きましたが、それを実践している構えがあります。それは

空手の三戦(サンチン)

です。足からガッチリ固めて安定し、上半身と下半身を繋げた状態を維持する構えです。そのため機動力はひどく落ちます。ダメじゃないかと思うひともいるかもしれませんが、想定が違います。船の上で戦うことを想定した構えなので、安定を優先したのです。どのみち船の上で機動力の高い動きはできないので安定を求めました。ずっと、繋がった状態で固めているので、繋がるための筋力を鍛えることができます。そのため空手では『三戦の形』のことを『鍛錬の形』と言ったりします。意味がちゃんと分かって言っているひとがどれだけいるのかは不明です。実際僕は伝統空手をしていた頃に意味を教えてもらったこともありませんでしたし、分かってもいませんでした。
特に剛柔流は三戦を重要視していて、円の動きも重要視しています。空手の流派の中では抜群に合気道との相性が良かったです。

次回は『中心力』の解釈についても話を進めていきたいと思っています。

モノノフ



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