どうして、ひとり出版社を起業したんですか? 異能の"しゃしん絵本作家"キッチンミノルさんにきく 10/12(土)インタビュー田原町14
10/12(土)19:00~20:50
浅草・Readin’Writin’ BOOK STORE
(http://readinwritin.net/category/news/)にて
「インタビュー田原町14 キッチンミノルさんにきく」
ノンフィクションの書き手に「取材して書くこと」についてきく「インタビュー田原町」の14人めのゲストは、写真家のキッチンミノルさんです。
物書きさんではないけれど、取材の仕方はライター以上に貪欲タイプだとみています。
ご案内(参加申込み方法)
インタビュー田原町14
キッチンミノルにきく
■日時
2024年10月12㈯
18:30場/19:00開演~20:50(終了後サイン会あり)
■会場
Readin’Writin’ BOOK STORE(東京都台東区寿2丁目4−7 地下鉄銀座線「田原」駅下車3分)
http://readinwritin.net/access/
※会場参加(25席)のみ、オンライン配信はありません。
■チケットは以下からご選択ください。
〇一般参加券 1500円
〇リピーター参加券(インタビュー田原町に会場参加したことがあるひと) 1200円
〇応援してやるぞ!!(カンパ込み)参加券 2000円
お申し込みは、下記宛てメールにてお願いいたしますreadinwritin@gmail.com
◼️ご記入事項は4点
▪️件名 (キッチンミノルの回)
▪️チケットの種類(例、一般参加)
▪️お名前
▪️緊急時の電話番号
※ご記載いただいた個人情報は当該イベント管理以外には使用いたしません。
参加料金は当日、会場レジスタンスにてお申し込み名をお伝えのうえ、直接お支払いください。
大変お手数をおかけしますが、当日受付が混雑しないよう、現金でお支払いの方はなるべくお釣りが必要ないようにご協力いただけましたらありがたいです。
◼️10/2~12/13、
インタビュー田原町に先行し、キッチンミノル『ひこうきがとぶまえに』写真展+『たいせつなたまご』パネル展もReadin’Writin’BOOKSTORE
(http://readinwritin.net/category/news/)にて開催中。無料です。
キッチンミノルとは?
この春「テキサスブックセラーズ」という、ひとり出版社をたちあげたばかり。
第1冊は、空港の端にある巨大な格納庫で、次のフライトまでに飛行機を点検する「航空整備士」たちの仕事をとらえた写真絵本『ひこうきがとぶまえに』。
“TEXAS Book Sellersしごと絵本シリーズ”の1冊で、今後いろんな仕事の本を出されるみたい。
(テキサスブックセラーズ
https://texasbooksellers.jp/)
本文もタイトルもひらがなで、ちいさな子供と大人とで読める本を意図しているのだろう。もちろん大人が読んでも楽しめる。
でっかい飛行機を点検、修理するのに使う工具、ギーガーのエイリアンを見るようなジェットエンジンの内部。「ぶひん てんすうは やく3まんてん」を使う様子をつぶさに写している。
キッチンさんは写真家だ。近年は、子供向けに『たいせつなぎゅうにゅう』『たいせつなたまご』(白泉社)など、働く現場に泊まり込み、どのようにして食卓に牛乳や卵が並ぶのかを写真ルポしている。そして新たにひとり出版社の社主という肩書きもある。
今回「番外編」でなく「ノンフィクションの書き手」14人めのゲストとしたのは、キッチンさんが『ひこうきがとぶまえに』でまとめた「巻末特別付録」の取材ノートを見て決めた。
撮影の交渉をした相手はJAL。素人にはよくわからないが、写ると困る極秘情報がエンジンなどにはあるらしく、「ここまで。これ以上近づかないでください」と撮影ポジションに規制がかかるのだとか。
一般的に本をつくる際のそういう折衝にあたるのは編集者かライターだったりするのだけれど、この本に関してはキッチンさんがひとりで行ったそうだ。
もともと最初の就職は不動産販売会社。営業マンとして好成績をあげていたそうだ。それもあってか、交渉ごとはお得意でもある。撮影も交渉も、さらに取材して説明の文章まで書いてしまう、ねじり鉢巻の似合う写真家はそうそういない。
緊張感みなぎるあわただしい現場で、キッチンさんがどのタイミングでカメラを構え、航空機の点検に使用する道具の種類、名前、使い方などをたずね、どこを面白いと思いメモしたのか。
本屋さんの中二階へと上がる階段の壁面を利用した写真展の搬入に立ち会ったが、展示作業もキッチンさんがひとりで行っていた。何十回とやってきただけあって要領がいい。
眼を惹かれたのは「赤袋」。
航空整備士たちの必需品で、失くしてはいけない小さなビスとかを入れるシンブルなもの。呼び方とともにちょっとカワイイ。キッチンさんはこれを気にいって、自前で模倣製作(写真展中販売もしている)したという。
「(前略)特に窓は、上空できれいな景色を楽しんでほしいという航空整備士の思いから、安全に問題がなくても傷のあるものは交換しています。」
という『ひこうきがとぶまえに』の中の作業についての一文から、現場で丁寧に聞き取りをしていることが伝わってくる。
まず文章が簡潔でむだがない。
本文頁はひらがな。小さい文字の付録ではふつうに漢字が使われていることから、子供と読んで会話してほしいという主旨なのか。
写真家の領分をこえた丁寧な仕事ぶりに、どのように取材していったのか?
そもそもカメラマン受難の時代になぜ「ひとり出版社」を起業したのか?
リアルで具体的なここだけ話をきいてみようと考えています。
キッチンさん、じつはちょっと履歴が変わっている。下記のプロフィールを見てもらうと???が何か所か含まれています。
まず写真家になる遥か前、落語家になろうとした。「挫折」とわざわざプロフィールに書いている。
のちに春風亭一之輔さんと出会い、一之輔さんに密着すること一年、落語家の生活を写真本にしています。
そもそもキッチンミノルの名前をわたし(聞き手でライターのアサヤマ)が見覚えするのは、AERAの巻末頁(2008年~2015年)の「はたらく夫婦カンケイ」の連載でした。
当時はまだカタカナ名前はまだ珍しくもあり、キッチン?
夫婦のポートレイトとインタビューを1頁の誌面に収めたもの。企画としては特段目新しくはない。
ヘンなのは、ふたりがそれぞ別々の方向を見ている。
なんで?
こういう写真は正面を向くようになっているのに。かれらの目線の先に、いったい何があるのだろうか。
押し入れの中に子供たちと入り込んでいる夫婦、というか一家。面白い。けど、ふざけている?
よくよく見れば撮影場所の選択や構図がなんともヘン。
毎度毎度マネキンのように被写体に表情がないのも何でだろう。
目にした当初は、イキっていそうで嫌だなこのカメラマン、というのが偽らざる印象でした。
なのに、どうしてもAERAを手にするといちばんに巻末を開いてしまう。
一度だけ、その「夫婦カンケイ」の現場に立ち会ったことがありました。現場を見たい、キッチンミノルを見てみたいと知り合い夫婦を編集者に紹介したからですが。
そのときのキッチンさんは記者がインタビューしている間、すこし離れた位置からやりとりを静かに見ている。大御所の写真家だと、アシスタントを何人も引き連れ、居合わせるだけでオーラ(存在感)のようなものを発してしまうものですが、ぜんぜんそういうのもなく、ニコニコと静かに耳を傾けている。
さて撮影になると、すでにロケハンをしていたらしく、ここで、このように座ってみてくださいという。
夫婦ふたりの距離と、それぞれにどの方向を見てくださいとだけお願いする。
被写体の二人が劇団の演出家とプロデューサーということもあり、はじめは茶々を入れていたものの意図を掴んだからか、指図されるままに「これでいい?」人形のように身体を固定させるので、へぇーと驚いたものでした。ひとの言うことをすんなり受け入れるなんて、とうてい想像できない二人だっただけに。
出来上がった写真は、吉永小百合と浜田光夫の青春映画(明るい未来を見るっぽい)のポスター写真のようで、なるほどなあ。
以来、キッチンミノルを見るわたしの目も変わりました。
その後別の機会にキッチンミノルの作品を見ると、オーソドックスな写真もまた達者であることを理解しました。ピカソがちゃんとした絵を描けるように。
あの表情を殺したマネキン写真は考えこまれたシリーズで、よくあるタレントのカッコイイきめカットにシャッターを押さない写真家だということも。とにかく、ひょうきんなとんがり具合が面白い。最近の「仕事」をテーマにしたキッチンミノルの仕事ぶりを見ていると、しっかり話をきいてみたくなりました。
ゲスト
キッチンミノルさん
1979年アメリカ合衆国テキサス州生まれ。18歳のときに噺家を目指すも挫折。法政大学でカメラ部に入部。不動産販売会社の営業マンを経て、写真家・杵島隆に写真を褒められたのを機に写真を勉強。人物や料理を中心に写真を撮り始める。『メオトバンドラ』(詩=桑原滝弥 ニューフォイル)、『春風亭一之輔の、いちのいちのいち』(文=春風亭一之輔 小学館)、『たいせつなたまご』『たいせつなぎゅうにゅう』(以上、白泉社)、『あさがおとはるくん』(PHP研究所)など。
▪️聞き手(企画)
朝山実(あさやま・じつ)
1956年兵庫県生まれ。書店員などを経てフリーランスのライター&編集者。
著書に『父の戒名をつけてみました』(中央公論新社)、『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店)、『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP)など。編集本に『「私のはなし 部落のはなし」の話』(満若勇咲著・中央公論新社)、『きみが死んだあとで』(代島治彦著・晶文社)などがある。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 爪楊枝をくわえ大竹まことのラジオを聴いている自営ライターです🐧 投げ銭、ご褒美の本代にあてさせていただきます。