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超短編小説「イン・イン・イン」

「車のレースとかでさ、アウト・イン・アウトってあるだろ?」

唐突に話しだした彼を、ちらっと横目でみただけで、それ以上、何も言わなかった。

「知らない?コーナーを早く回るためにさ、アウトコースからインコースに切り込んで、アウトコースに流れていくやつ。アウト・イン・アウトだ。」

全く知らないし、全く興味のない話だった。

「でさ、やってみたわけよ。」

なにをやるのさ?と軽くココロの中でつぶやいた。

「地下街を歩いててさ、右に左に曲がらなきゃならないだろ?だからさ、アウトコースからインコースに切り込んで、アウトコースに流れていこうとしたわけ。そしたらさ、邪魔なの。人が多くて、邪魔なのよ。アウトコースからインコース切り込めないから、無理だったわけ。だから、考えたんだ。

イン・イン・インだ!ってね。

インコースからインコースを回ってインコースに抜けるの。

いいだろ。

イン・イン・イン」

そんな彼の話を聞いて、思った。

今日も平和だ。

文:モノコト68
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