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超短編小説「空を飛べるんだ」

電車の中で、出発を待つ。

疲れているのか、本を読むわけでも、スマホをいじるわけでもなく、ただ焦点の合わない景色を眺めていた。

意識もどこかふらふらしているのか、出発のベルは聞こえなかった。

???

ふと見ると、景色が過ぎ去っていく。

動いているのは、電車ではなく、景色の方だ。

妙な感覚だ。

???

この感覚、どこかで感じたな。

そうだ。

子供の頃、降りしきる雪を見上げていた。

ずーっと、見上げていると、雪の中に飛び込んでいくような感覚に襲われた。

いつしか、自分が空を飛んでいた。

僕は空を飛べるんだ。

目的地の駅に着いたのは、しばらく経ってからだった。

文:モノコト68
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