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已己巳己|大阪・箕面

「ピンとくる達磨さんを選んで下さいね」
そう言われてもねえ。
ずらりと並んだ達磨は、どれも同じに見える。

今朝、羽田で待ち合わせたリサとユミと私は、飛行機と電車とバスを乗り継いで、この達磨で有名な寺にやってきた。

「お礼参りに行こうと思うの」
結婚が決まったリサの言葉に、ユミと私は大阪行きのお供を申し出たのだった。
達磨に〈今年中に結婚できますように〉と書いたら叶ったというのだから。

それにしても私達、気が合うにもほどがある。
恋愛運がアップする、そんな噂を信じて赤いコートを着てきたら、3人揃って真っ赤っか。
さっきも「お嬢さんら、達磨さんみたいやねえ」と笑われたばかりだ。

迷いに迷って、少し眉が太めの達磨を選んで、その背中に〈いい人に出会って結婚できますように〉と書く。
ユミは、と見ると〈婚活レースを勝ち抜く〉と書いている。
そうだ、これ、勝ち達磨だもんね。
私も負けていられない。
力強くぐるんと右目を描き入れた。


*「已己巳己」(いこみき)・・・(字形が似ていることから)互いに似ているもののたとえ。

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