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眠狂四郎 殺法帖


ストーリー

 江戸に住む自称『無頼の徒』眠狂四郎は伊賀者の集団に襲われる。これを退治した狂四郎に、今度は千佐という女性が訊ねてくる。千佐は「自分の命を助けてほしい」と頼み、狂四郎は快諾する。千佐の命を狙っているのは、憲法の達人である陳孫、という男だが、その陳孫によれば、千佐は加賀宰相の患者であるという事実を伝える。狂四郎は、銭屋五兵衛と加賀宰相前田斉泰の間での政治的暗闘、そして暹羅国の青い仏像の中にある「密貿易許可状」を巡る争いに巻き込まれる。
監督:田中徳三

キャスト

眠狂四郎  市川雷蔵
千佐    中村珠緒
陳孫    城健三郎(若山富三郎)
銭屋五兵衛 伊達三郎
前田斉泰  沢村宗之介
etc

レビュー

評価
★★☆☆☆

きっかけはBS12での放送で、私はこれまで市川雷蔵版を見たことがありませんでした。市川雷蔵の当たり役かつ代名詞だというのに。
でまあ、2~4月の一挙放送で一応すべての作品を見たのですが、またループ放送という形で再放送をしているんです。おそらく、第二作の『勝負』、大ヒット作であり路線を決定づけた『女妖剣』なども放送されるでしょう。
で、第一作の殺法帖ですが、最後、つまり最終作品『悪女狩り』まで一周してから見てみると、たしかに大映が『失敗』といいたくなる気持ちが分かります。
これはDVDなどで見てもらったらわかるんですが、とにかく明るい。陽気でいなせ、粋な江戸の若者なんです、眠様が。
いやいや、眠狂四郎は、『大菩薩峠』の机竜之介の流れをくむニヒリストでり、虚無主義であり、世の闇から生まれて闇を背負っているような男なんです。
ところが、この『殺法帖』と『勝負』の二作は全くそれがない。はっきり言って眠狂四郎というより御家人斬九郎でした。市川雷蔵版『御家人斬九郎』としてみれば、ありなんです。なぜなら、斬九郎の旦那は「あかるい眠狂四郎」ですから。
それだけじゃなく、モテモテです。常磐津の師匠、歌吉という芸者(御家人斬九郎にも蔦吉姉さんがでてきますが)、遊び人の金八、とまさしく『御家人斬九郎』。
『女妖剣』以降、とくに同じ田中徳三監督の『女地獄』に比べたら全く雷蔵の、あのねばっこい色気がない。むしろ、サラサラしてて。……、それはそれでいいんだけどさ、それは眠様じゃないでしょ、と。
それとやけにキャラ付けのための説明科白も多いのですが、これはシリーズ前提で考えると、仕方ない。なぜなら、小説を読んだことがない人たちに向けた科白なので。
ストーリーも二時間時代劇にありがちな大名騒動ですから、正直B級っちゃB級。でも、雷蔵はそれでも良いんだ。明るい雷蔵でもいいじゃないか。眠狂四郎として見るから駄目なので、そうじゃない目線で見れば、十分に及第点の作品ではあるんです。B級つっちゃったけどね。
手探りだったんでしょうね、それだけ眠狂四郎のギミックは複雑怪奇ですから。それ考えると致し方ない部分もありと思います。
ただ、この頃から円月殺法、無想正宗と下地はあるので、それだけに難しかったのかな、という印象でした。
ちなみに、中村珠緒さん、藤村志保さんはヒロイン立ち位置として数作出演されます。若山先生も『女妖剣』で同役出演です。あと、伊達三郎さんも悪役でいくつもの作品に出られていますが、このシリーズもそれに漏れず、何回か斬られてますww。

以上、レビューでした。

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