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わたしの兄は、宇宙人。

こんばんは、ものかきです。

今日は私の兄について
書いていこうと思います。

その前に家族構成の説明です。
父、母、姉、兄、私の5人家族。
姉と兄が年子で、私と兄は4つ違いです。

姉は活発で、常にクラスの中心にいるような人。
私はどちらかというと内向的で、家でビデオを見たり、母の料理を手伝う事が好きな子供。

そして兄は、1人でずっともくもくと、すごろくや迷路を作って自分で遊んでいるような、独自の世界を持っている人でした。
小さい頃、兄と遊んだ記憶はあまりありません。

兄はズバ抜けて頭がよく、成績はいつもトップクラスでしたが、人付き合いが苦手。
言葉数も多くないので、小さい頃の私からみると、謎のおおい、まるで宇宙人のような存在でした。

成長していくごとに兄の個性はより顕著なものとなり、特に計算や記憶は得意だけど、抽象的な表現が苦手でした。
例えば「これをやっておいて」と頼んでも、いつまでもやろうとしない。
でも兄にとっては「いつまでにやる」と言われなかったので、いつやればいいのか分からない事なのです。
逆に「何時までにこれをやって」と時間を明確にいえば、きちんとその通りに出来る人でした。

兄と付き合うには、少しコツがいるようです。

私は小学生から中学生の間、入院していた時期があり、暫く家を離れていたのですが、兄はその間も、人付き合いに苦労しているようでした。
特に高校時代が一番辛く、学校に通えなかったこともあるようです。

でも頭の良さは健在で、大学も歴代トップクラスの成績で卒業し、就職した会社は兄の個性にも理解のある環境で、何とか社会人生活をこなしていました。
相変わらず他人へ関心は薄かったけれど、姉や一定の人物とは、ゲームなどの共通の話題で盛り上がる事もあり、私はきっとこれからも、兄の個性を受け入れられる環境で生きていくのだろうなぁと、ぼんやりと思っていたのですが…。

いつからでしょうか?
少しずつ、そんな兄に変化を感じました。

私は家を出る数年前から、家族と自分の考えに方向性の違いを覚え、家族と距離が置きたいが為に、極力、会話をさけるようになりました。
兄はそんな私に何も言いませんでしたが、観察していたのかもしれません。

私は家を出て、家族と物理的な距離を置いたことで心にゆとりができ、月に1.2度の帰省では、昔のように、楽しく家族と話すことができるようになりました。

そしてある帰省の時、気づいたのです。
私が家を出る前と同じような態度を
兄が両親にとっていることを。

我が家の母は、過干渉な人です。
一人一部屋、子供部屋があるけど一家団欒を望む母は、起きている時はリビングで過ごすことを望み
食事は、家族揃って食べる。
それが我が家の暗黙のルールでした。

成人した後も適用され続けるルールに、私を含む子供達は従順でいなければ、と思っていました。
そこには宗教上の理由も絡むのですが、今回は割愛します。

兄は、他人に関心が無いわけではなく
どう関わったらいいかわからないだけで
少しずつ、本当に少しずつ変わっていたのです。

実家から一人暮らしをしている家への帰り道、兄が車で送ってくれました。
二人きりで話すのはいつぶりか、共通の話題も少ないので、ちょっと話題に困っていると、不意に兄がぽつりと「俺も家を出るかもしれない」と。

去年は私にとってと色々変化がある年でしたが、環境の変化が苦手な兄が、転職に向けて活動を始めたのも、去年からでした。
兄は兄なりに、少しずつ自分の道を歩みだそうとしていたのです。

「そっか…。いいんじゃない?」

いまだに外面でも人間関係を築く事が苦手な兄が、一人暮らしをすることに不安がないわけではありません。
でも変化しようと兄が思っていること。
変化しようと、努力していることが嬉しかった。

思い返せば兄は兄なりに、家庭の中の調和を求めて、運転ができなくなった母の代わりに車を走らせたり、家族旅行を企画したりと、自分のできる事を探して、必死でこなしていたのです。

兄という人間の不器用さが、やっと理解できたような気がしました。
人と深く関係を持つ事が苦手な私と兄は、表現方法こそちがうけれど、ある意味では似ていたのかもしれません。

運転する兄の横顔は
宇宙人ではなく
同じく苦悩して生きる人間の表情にみえました。

まだまだ、私も兄の道も前途多難。
やっと家族という教えから立ち上がろうと足掻いている私達は、他人から見れば、遅すぎるスタートかもしれません。
でもきっと私達はここから。
自分の足で進み、考え、悩みながら生きていく。

私の兄は宇宙人、でした。

これからは、共に未来へ進む戦友として。
色んな事を自分たちなりに考えて
立ち向かって、時に協力しあって

不器用でもいいから。
生きていけたらいいね、お兄ちゃん。

その道のりが、少しでも明るいものであるように。

がんばれ、応援してるよ。


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