理屈に合わない！

　「理屈に合わない」はたぶん私の口癖だ。たぶん、というのは自分のことがよくわからないので実際に多用するフレーズは全然違うものかもしれないから、一応確定させないでおきたいのだ。私生活は人並み以上にだらしない私だが、文章に関してはせめて人並み程度には几帳面でありたいと願っている。できれば私の口癖ランキングを外部の人に作って貰いたいものだ。

　さて前置きもほどほどに、私が何に対して理屈に合わないと常々思っているのかについてひとつだけ。

スーパーとかコンビニとかのビニール袋、安すぎ！

　はい。まあ、これです。
　普通に考えればモノが安いというのは実に結構なことだが、件のやつらは事情が違うのではないのかと私は思う。つまり、ビニール袋の使用を削減して、環境に配慮したいのではないのか、ビニール袋に金を払うのを渋るケチンボをターゲットにして、自前のエコバッグを持って来させるのが目的ではないのかということだ。
　どんなに高くてもその辺のコンビニでは1枚5円程度。こんなに安くては私などのいい加減な人間はエコバッグを持って来ないと胸を張って言える。

　少し考えればわかるように、1枚5円ならばたとえ30回エコバッグを忘れても自販機のジュース1本分にしかならない。これだったら、面倒くさがりな私としてはエコバッグをわざわざ買い物に持って行く労力と5円を天秤にかけて5円を払うことを選ぶ。なんならコンビニで少し高いジュースを買ってやる。5円をケチるくらいなら5円で精神の健康を買ってやろうじゃないか。
　買ってもどうせ大して使わないサーキュレーターを買うくらいならば、あるいは本当は良さがよくわかってない芝居のチケットを買うくらいならば、私は1万回でもコンビニでビニール袋を買ってやる。それが人情というもんだろう。知らんけど。
　自分でも意味がわかってない散財をするくせに、ビニール袋をケチるのは理屈に合わない！そういうわけです。

　この問題を解決するのは簡単だ。ビニール袋を500円くらいにしてしまえばいい。これならばよほどの面倒くさがりや富豪でなければビニール袋を買わない。
　130円のおにぎりと160円の飲み物を買うのに500円の袋代を払うのはなんとも大変に馬鹿げているが、私がビニール袋ならばそのような馬鹿しか相手したくない。また、店側には、ここまでして初めて「環境に配慮した」と考えててほしい。5円でビニール袋を提供しておいて、善人ヅラはやめていただきたい。私に言わせれば彼らもまた加害者なのだ。
　地獄への道は善意で舗装されていると言うが、まさにそんなところなのだ。

　もしも本気で何らかの害を減らしたいのならばもっと派手にやればいいと思う。
　タバコの副流煙が嫌なら喫煙所を減らしたり景観を汚す看板を立てたりするより、タバコ税を100倍にすればいい。あるいは決められた場所以外で吸ったやつから罰金でもとればよい。そしてその金を教育にでも回せばよい。車の事故が減らないなら、思い切って運転免許資格試験をうんと難しくしてしまえばいい。あんないい加減な試験だから私でも免許が取れてしまうのだ。排気ガスを減らすために電気自動車を増やしたいなら、思い切り電気自動車を税制優遇すればいい。

　何でこれらのシンプルなことができないかといえば、誰も本気で問題に取り組んでないからなんじゃないかとすら私には思えてくる。本当は誰も真剣に受け止めてないし、問題だとも思ってない。ただ、何も考えてないと思われたくないから、それっぽいことをやってるだけだ。

　問題を指摘されて一応反省してみせるが、その実、毛ほども真摯に受け止めていない。晴れた日でなくても昼前には干上がってしまうような浅い浅い水たまりのような反省。地獄への道は善意で舗装されているが、その道にはところどころ、そんな浅い水たまりができている。