見出し画像

数学が大事なのはわかってる

研究室の配属先決定の時期が近づいている。

行き先はおおよそ考えている。興味のある分野だし、将来やりたいこととも結びつく。何の問題もないはずだが、ひとつだけ迷いがある。

志望動機で強いのが、「ここに進みたい」と同じくらい、「(能力的な問題で)他には行けない」なのだ。

一応理系学部生の端くれなのに、数学が絶望的にできない。大学受験前4か月で数学の点数をほぼ3倍にしたといえばすごい人のように見えるが、3倍にしても得点率が3割に達していなかったといえば(2次試験の話だが、特別難しい年というわけでもなかった)別の意味ですごい人である。ちゃんと他の教科で点は稼いでいるが、「よく受かったな」の前に「よく受けようと思ったな」である。ちなみに当時の得意科目は国語と公民、次いで英語と生物だった。「文系だろお前」と散々言われたし自分でも気づいていたが、行きたい学科が理系学部にあったのだから仕方がない。

それが意味することとして、統計学や各種経済学の理解に恐ろしく時間がかかる。私の学科の多くの研究室ではそれらを利用した定量的分析が必要となるのに、これではあまりにまずい。質的研究の分野に結局進むとしても、どうせなら「質的研究に可能性を感じました」と言いたい。「量的研究ができませんでした」は事実であってもなるべく言いたくない。

真面目に勉強しつつも他の教科のようには上手くいかない数学に、「こんなこと何のためにやってるんだ」と叫んでいた高校生の頃の自分に言いたい。

数学はどこにでもいる。経済学が文系なんて嘘だ。

高校のカリキュラムですっ飛ばされた統計、今嫌になるほど使ってる。平均と分散と相関係数しか知らないお前に仮説検定と重回帰分析の話を聞かせてやりたい。いや高校生に教えられるくらいまともに理解してたらそもそも苦労してないけど。あと確率と指数対数と数列と微積と三角関数とベクトルはやっとけ。信じられないかも知れないが全部つながるんだ。

嘘みたいだろ。数学の講義も取ってない癖に複素数の極形式覚えておけばよかったとか言い出すんだお前は。受験生でもないのに2回生の夏休みにいきなり青チャートを解き始めるんだ。ただの頭の体操なんかじゃなかった。お前が読んでた漫画にベルヌーイ一族の喧嘩が面白おかしく描かれてたな。お前が大学生になってから読んだ本に彼らの名前が何回出てきたかわかるか。私は忘れてしまった。

……はぁ。

別に役に立つからやるべきだとか言うつもりじゃない。古文漢文は大学の勉強では全然使ってないけど、それでも短歌にはまったりするとやってよかったって思うし、謎のパンデミックで誰にも会えなくなっても、腹を満たしてくれるわけでもない詩歌に支えられて何とか生き延びている。今役に立ってなくても、やっておいてよかったことは勉強に限らず山ほどある。

でもな。

数学は本当に必要なんだよ。何か始めたいと思ったとき、数学に抵抗があるとないとでは全然選択肢の幅が違うんだよ。たとえそれが、今の日本では「文系」というカテゴリに入っている分野の中の話であっても。

絶望してる場合じゃない。やらなきゃ。

※フォトギャラリーから「シュワルツの不等式」をお借りしました。大学受験対策では有名だとのことでしたが、高校で教わった記憶がありません(忘れてるだけだったらごめんなさい)。基本的に高校の教科書に載っていない定理や公式をほとんど知らないまま受験に挑み、入学してから周囲との数学的知識のギャップに気づきました。自力で導出できるほど数学できる生徒だったら授業で教わらなくても情報探し当てられるだろうし、そしたらそもそも苦労しないだろうし。数学への苦手意識が強まったの、それもあるかもな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?