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失敗しない半纏作り・店選び②-染料について-


半纏に使われる染料について説明します。
この記事では、半纏選びの参考になる情報をご紹介しています。


染色に関する半纏の変遷(概略)

 まずは染色に関する半纏の変遷を簡単に。
半纏は庶民の防寒着、仕事着として着られてきました。
その中で「印半纏」と呼ばれる背中や衿、胴回り、に家紋や屋号、名前などをあしらったものがでてきます。
この「印」は所属や集まりを表します。
つまり印半纏はいわば「ユニフォーム」として使われていました。
当初の染は藍染が主流です。それは、
・綿素材に対して染まりやすかったこと、
・庶民が染められる色が限られていた(染料の種類が少ない。華やかな色の使用が禁じられていた)こと、
・藍染の材料が豊富だったこと
・当時の他の染色と比較して、洗濯や日常の使用に耐えられること
などが要因とされています。
これが江戸時代の話です。
その後、様々な染色技法が確立、台頭していきます。
とくに戦後、耐水性が良く、色も多様な反応染料が開発され、半纏を含め染色全般の主流が反応染料となりました。

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・半纏の染色に使われる染料

染料の種類と、実用に関係のある特徴を簡単に紹介します。
染色メカニズムなどの説明は省きます。

・反応染料
多様な色が作れます。
天然繊維(セルロース)が染まります。
染色堅牢度(色の耐用性)が全体的に高い材料です。
捺染、引染め、注染、インクジェットなどで使われます。
染料の主流です。

・藍染(インジゴ染料)
色の種類は濃~淡です。
天然繊維(セルロース)が染まります。
糊置き(防染、筒置など)の染色技法が使われます。
参考:藍染の堅牢度について。記事リンク

・硫化染料
紺や、黒、他にも色がありますが、落ち着いた色合い(くすみがかった色合い)が特徴です。
天然繊維(セルロース)が染まります。
糊置きの染色技法が使われます。

・顔料
多様な色が作れます。
一部セルロース、化学繊維が染まります。
堅牢度は摩擦にとても弱く、耐光性が強いです。
捺染、引染め、インクジェットなどで使われます。

・分散染料
多様な色が作れます。
化学繊維が染まります。(通常のセルロース繊維では染まりません)
昇華転写で使われます。機械による染色(転写・プリント)です。

各染料の特徴をまとめた表です。

無題のプレゼンテーション (6)

表中※→ただし、使用場面が限定的。

・半纏のニーズと染料の特徴比較

 反応染料は色が豊富で堅牢度も良く、汎用性が高いです。
染色技法も豊富で、それは、同じ反応染料でも工程によって仕上がりやコストに差が出るということです。(=見積もり大事!)
分散染料も似た特徴ですが生地がポリ(化学繊維)になります。
生地の強さとしては天然繊維>ポリなので、半纏の用途(耐用性)として、分散染料は反応染料よりも限定的になると思います。
一方、半纏を着る中で新品のあか抜けない感じが苦手…と思われる方は一定数いるようです。
相澤染工場の藍染印半纏を着るお客様からは、仕上がった半纏は洗ってから使っているという声も聞いています。
そういった、着ていく中で使用感をだしたい(色落ち、擦れ、経年変化)場合は、藍染、硫化染料、顔料が好まれると思います。
色の近い藍染と硫化の比較を比較すると、
はじめの色落ちは藍染の方が強く、経年変化の仕方は違い、それぞれです。
藍染の染め重ね、硫化染めの一度で濃色に仕上げるという工程上の違いからか、経年変化では藍染が好まれているように感じます。
コストは比較的、硫化が安価です。
色の種類は藍染は濃淡くらいで、硫化染めはもう少し色の幅があります。
耐用性は、藍染が良いと言われています。
硫化染めは工程上、生地に負担がかかるからです。
ただ耐用性は厚みなどの生地の性質にも関係するので、染料だけでは決まりません。
染色技法については、(人づての内容ですが)藍染の方が模様の付け方の種類が豊富のようです。
硫化染めは半纏全体に柄をつける工程は難しいと聞きます。
設備、技術、手間(コスト)、要因ははっきりとわかりませんが・・・。
顔料による引き染めは、使用感が出るとしても、色が非常に擦れやすく需要は少ないです。(半纏に限ります。幟や旗での需要は◎)
また緑・茶系はとくに擦れやすいなど、色の種類でも堅牢度に差があります。
顔料は半纏生地全体の染色よりも、プリントや色挿しとして、衿や大紋などワンポイントで使われることが多いです。
表に※をつけて限定的と付記した理由がこれです。


 以上、最後まで読んで頂きありがとうございます。
ご自身の作りたい半纏のイメージと、それに合う染料がつながれば幸いです。
「失敗しない半纏作り・店選び」を紹介した別の記事もありますので、あわせて読んで頂ければ幸いです。
↓は、いろいろなお店に見積もりを取る大切さを説明している記事です。

実際の半纏、染色等に関する問い合わせも受け付けています。お気軽にどうぞ。
相澤染工場/ものあいは、主には藍染印半纏と、藍染印半纏染色の伝統的な技法を基にした、のれんや日用品等のオーダー、染色を行っています。


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