見出し画像

藍染の堅牢度について


 藍染製品の購入を検討する時、同時に色落ちや色焼け、色移り(お手入れ・洗濯方法)が気になる方が多いのではないでしょうか。
(染める私自身も、とても気にかける部分です)
こういった色の変わりやすさ/にくさ・落ちやすさ/にくさ、を染色堅牢(ろう)度と言います。
藍染の堅牢度についてインターネットで調べると、様々な情報が出てきます。
良いという意見、悪いという意見様々ですが、良し悪しを何と比較しているのかわからず、主観の入った意見が多い印象を受けました。
この辺りをなるべくクリアにするため、検証、現時点の考えをまとめました。
経験的なところから述べる部分は客観性に欠けるかもしれませんが、参考になればと思います。


・堅牢度とは?

サイト:一般財団法人カケンテストセンターより引用

染色堅ろう度試験とは、染料などで染色された生地の染色の丈夫さ(抵抗性)、いわゆる「色の変わりにくさ」や「色落ちのしにくさ」を見るものです。染色堅ろう度には、「変退色」と「汚染」があります。

堅牢度は、光に当たった状態、洗濯した状態、擦れた状態、汗にあたった状態など…いろいろな条件下で変わります。


・藍染の堅牢度データ

客観的な判断をするにあたり、ものあい/相澤染工場の藍染製品3種類の染色堅牢度調査を外部の検査センター(カケンセンター)に依頼しました。
結果を全て公開します。
製品は、
スカーフ(織物)
Tシャツ(ニット)
半纏(織物)
計3種類、全て綿100%。
(原本は最後に貼ります。洗濯表示が記載されています。他社名記載部分など一部削除します。)

無題のプレゼンテーション (4)

各試験方法の詳細は検査センターサイトにて。
↓リンクの下部、関連項目から具体的な試験方法の確認が可能です。
検査項目によっては目安値もでています。


・結果を受けての私見

これまでものあいの藍染製品について次のように説明をしていました。
「濡れた時に強く擦れると色が落ちる可能性があります」
「洗濯は単独の方が安心(ついた色はまた洗えば落とせます)。洗濯ネット使用」
この説明と、堅牢度結果に大きなずれはありませんでした。
洗濯堅牢度は単独でなくても問題ない結果でしたが、洗濯中に他の洗濯物と擦れる(湿摩擦)リスクもあるので、この説明通りが良いという結論です。
スカーフに関しては、他の生地よりも湿摩擦堅牢度が良いと感じていたので、意外に思いました。
これは、私自身の確認方法(スカーフの実用)と、試験センターの条件の違いによるものと考えています。
・私自身の確認方法
→日常使用(他の洗濯物と混ぜて洗濯機を使用、首に巻く、バッグに付ける、ハンカチとして使う)の中で汚染(色移り)があったかどうか。
・試験センター
→濡れた状態(約100%の湿潤状態)で約200gの荷重で100mmの長さを100回往復摩擦。
つまり日常使用の中で試験センターの条件に近づく機会がなかったことが要因と思われます。
私や協力者が日常使用中、スカーフの色移りは確認されていませんでした。
ちなみに湿摩擦結果「2」は、上記条件でこすった白生地に色がついていることが明確にわかる程度を指します。(結果判断は目視)

画像2


・堅牢度に関係のある要因

 藍染の堅牢度はいろいろな要因で変わることを実感しているので、今回の結果がすべての藍染製品にあてはまるわけではありません。
堅牢度に関係のある(ありそうな)要因を並べてみます。

①藍の材料と藍建て方法。試験結果は合成藍の亜鉛建てです。
→天然藍と合成藍との差。細かくすれば、タデ藍、インド藍、ウォード、合成藍などの差。
発酵建てと化学建てとの差。細かくすれば、すくも、泥藍、亜鉛、グルコース(ブドウ糖、水あめ)、ハイドロサルファイトなどの差。
天然藍・発酵建ては堅牢度が良いと聞きますが、私自身の現時点の答えは「わからない」です。
すくもによる発酵建て、インド藍・合成藍のグルコース建てを試したことがありますが、
仕上がりの濃さや染色回数など、材料・藍建て方法以外の条件をうまく揃えられなかったこと、
各製品を日常使用した中で大きな差を感じられなかったこと、
で結論がでなかったためです。

②素材の差。
→綿、麻、レーヨン等(セルロース系繊維)。絹、毛、皮革(動物繊維)。
麻、レーヨン・・・綿と同じくらいの印象です。
毛・・・綿に近い堅牢度があるのかなと感じています。(綿と洗い方などの扱いが違うので判断が難しいですが…)
 毛の種類でも変わってくると感じています。
 (毛の染色については検証をしたことがあるので、改めて記事にします)
絹・・・綿と比較して、汗、光、全体的に良くない印象です。
絹は染色した数も多くないので断言はできません。
中には普通とは違う染まり方をしていたのもあり、素材以外の要因(生地への特殊加工)も影響していたのかもしれません。
皮革・・・種類(牛、豚、エキゾチック系など)間で差があるかは不明です。
処理方法(なめし方など)で大きく変わるそうで、良い(百貨店等の基準)堅牢度が得られる条件があるとのことです。
(皮革調達、処理・製品チェック側からのフィードバックより。私は染めの工程だけ関わっています。)

③工程。
精練工程
例えば、生成り生地は生地自体が日焼け(光で変色)をしやすいので、藍染めをした晒し生地と生成り生地で堅牢度が変わると思います。
染め方
染色中の生地の扱い方にも影響があると思います。
型染め、グラデーションなど、染色中に生地の扱いが限定される染め方は無地染めと比べて堅牢度が良くない傾向になると感じています。
洗い方
染色すると余分な藍は必ずつき、これをしっかりと落とす必要があります。

画像3


・今回の堅牢度結果と異なる藍染製品

 実際に、ものあい/相澤染工場で染める製品にも今回の堅牢度結果と異なるものがあります。
それは藍染印半纏で、今回結果以上の色落ちがあります。
・藍染前の下準備。呉入れ(大豆の搾り汁を刷毛で引く)などを行う。
・藍染中の生地の扱い方(浸け方など)。
・洗いの仕上げ方。
など、工程の違いによるものです。
また、半纏生地を使い藍染印半纏の染色技法に近い方法で染めた製品も、藍染印半纏程ではありませんが、今回の結果よりも悪いと思われます。
リンクのアイテムが該当します。

しし_しし毛 (1)

↑藍染印半纏の紺色


・最後に

堅牢度結果の原本を貼ります。
洗濯表示結果も載せています。(3生地全て同じ結果でした)
重ねて言いますが、全ての藍染製品がこの結果になるとは限りません。
参考としていただければ幸いですが、この結果を基にした他の藍染製品の品質表示、アテンション、説明は控えてください。

その他、藍染に関する情報、具体的な藍染製品に関しては以下のサイトからご覧ください。
他のnote記事も読んで頂ければ幸いです。

ものあい(日常で使える藍染製品)

相澤染工場(藍染印半纏など、誂え物の製品)

堅牢度試験結果

スカーフ1

スカーフ2

Tシャツ1

Tシャツ2

半纏コート1






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?