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失敗しない半纏作り・店選び①-商流の変化-


 半纏を新調する、追加する、新しい模様・文字にしたい、、、半纏作りを検討する方々に向けて、大切な半纏作りの失敗を防ぐ情報を載せていきます。
今回は半纏の「商流の変化」を交えて説明していきます。


      失敗しない店選びのための簡単な方法

 結論から。半纏作りで失敗しない方法は「いろいろなお店から見積もりを取ること」です。
当たり前な事ですが、もっと丁寧に言うと「呉服屋、卸問屋、染元、地域、紹介先に関わらず見積もりを取ること」が大事です。
「呉服屋、卸問屋は間に入っているから割高」
「染元とやり取りすれば直接取引だから割安」
「紹介先の半纏の出来が良いから信頼できる」
傾向としては正しいかもしれませんが、これらの先入観はお店選びに失敗する原因にもなります。

・お店の種類

 商流の説明に登場させるお店の種類を挙げます。
・呉服屋、卸問屋(以降「おたな」と書きます)
・型屋(下絵、型紙をつくるところ)
・紗張屋(型紙に紗を張るところ)
・染元(生地を染めるところ。染工場)
・型付屋(生地に模様をつけるところ)
・仕立て屋(縫製するところ)

・半纏の商流(染色業の盛んな時代) 

 こちらがひと昔前の半纏の商流を示した図です。
(理解しやすくするための一例です)

無題のプレゼンテーション (2)


ポイントは、半纏は分業で作られているということです。
家電のような1つの品物が1社~複数社を流れる商流とは異なります。
この場合は、おたなを飛ばして他へ半纏の依頼しても半纏はできません。


・商流の変化(分業から自社完結へ)

 分業であった半纏の製作が、半纏需要の先細りや染織技術の開発・向上によって自社完結化へと進みます。
結果、おたな以外のお店も注文が取れるように変化してきました。
相澤染工場(藍染印半纏)にあった自社完結化への流れを2つの実例で説明します。
①数十年前の相澤染工場は、型屋、紗張屋、惣型付の作業を外注にだしていました。
型屋に関する部分でいくつかの問題がありました。
特殊な工程が入る対応が苦手であったり、型紙は通常何年も繰り返し使えるのが、数回で壊れることがしばしばありました。
その中で型屋、紗張屋がたたむ話が上がり、そこで他のお店を探さずに自社で型を掘れるように準備を進めて問題解決を図りました。
元々、下絵を自社で書いていたのも幸いし、上手く形になり、ほりあげた全ての型はまだ一度も壊れずに10年以上使い続けられて今に至ります。
現在は型屋、紗張屋の作業に加えて総型付の一部を自社で行い、作る半纏の9割近くの作業は自社で行えるようになっています。
②昔はおたなとの取引が殆どで、直接の問い合わせがあって受けられる内容の場合でも断っていました(と聞いています)。
おたなも店をたたむ所がでてきます。
その時に自社で染めていた町会のお客様を引き継ぎ、直接やり取りをするようになりました。
そこから別の町会→また別の町会へと紹介される形で直接取引をする機会が増えていきました。


・店の選び方にも変化を 

 伝統・文化とつながりの深い祭りや祭礼、歴史のある地域の半纏作り(お店選び)は保守的な傾向がでるように思います。
これは直接やり取りをするようになった町会のお客様との会話や、藍染印半纏という歴史の長い半纏をメインに作り続けている相澤染工場が当初直接取引に消極的だったことを聞き、感じる事です。
昔からずっと一つのお店への注文を続けている、とりあえず地元の呉服屋に問い合わせる、親交のある町会から紹介してもらう、というような選び方が傾向の一つだと思います。
商流の変化で述べた通り、一つのお店へ注文を続けても、染元や仕立て屋が変わっているなど、出来上がる半纏の仕上がりが昔と変わっている場合が多いです。
変わっていない場合も、同じ仕様でもっと安く手に入る、または、同じ金額でもっと良い半纏を作れるようになっている可能性があります。
つまり、これまで作ってきた半纏が知らず知らずのうちに劣後しているかもしれない、ということです。
お祭り、祭礼…半纏を着るイベントをより良く、粋にするためにもお店選びは慣習的にならずに積極的に動く方が半纏作りに失敗しません。
最初のアクションは見積もりをとるだけなので、だれでも簡単にできます。
もう一つ加えると2020年の今、半纏の相談をするベストなタイミングです。
今年の祭りはコロナ渦で全国的に中止(神事のみ)のため、半纏を扱うお店は例年以上に時間があり、余裕を持って相談ができると思います。
今後、祭り再開の兆しが見えた時は注文が集中すると予想されるので、なるべく早く、まずは動いてみることをおすすめします。
ちなみに。例年の場合、時間をかけて相談する時期は10-2月あたりが良いと思います。
半纏の多くはお祭りで使われ、祭りの開催の多くは夏、秋開催だからです。
もちろん冬に行われる大きなお祭りがあったり、半纏以外の染色もしているので、全てのお店に言える事ではありませんが一つの参考にしてみてください。
例えば、その年のお祭り(夏・秋)が終わった直後に、見積もりだけとっておくと、良いと思ったお店と10-2月に余裕をもって相談、比較ができ、翌年からの半纏をしっかりと作っていけると思います。


・いろいろなお店に見積もりをとる理由

 始めに書いた「呉服屋、卸問屋、染元、紹介先に関わらず見積もりを取る」理由に戻ります。
半纏は分業→自社完結へと流れていると書きましたが、一つのお店がすべての種類の半纏を作ることはできません。
半纏を染める技法は多岐にわたります。
染めは反応染め、藍染、硫化染めなどなど…同じ色材料でも技法が違うこともあります。(こちらについては後日、別記事で書く予定です)
工程、人員、設備等の環境で最適なロットもそれぞれです。
生地、仕立て、下絵の作成方法などでもお店ごとに得意なこと、特徴がでてきます。
そしてそれらは、サイトなどの情報だけでははっきりしない部分もあります。
~~染ができると説明をしていても、一部の~~染ができるが複雑な~~染は外注している、というケースもあります。
始めに先入観で挙げた3種類については、→のような側面もあり得ます。「呉服屋、卸問屋は間に入っているから割高」
→染元以上に安価にできる部分を持っている可能性があります。
例えば生地値・仕立て代など。
おたなが最適なお店をピックアップした結果、自分で染元を探した場合よりも安い・良い場合があります。
「染元とやり取りすれば直接取引だから割安」
→依頼した染めが専門外で、他に外注したり、強引に自社の工程で進める事によるリスクがあります。
「紹介先の半纏の出来が良いから信頼できる」
→紹介先の半纏と自分達の半纏の染め方などが違い、紹介先が専門外であれば意味がなくなります。
ただし、紹介してもらう方法は良いつながり方だと思います。
例えば、文字や大紋など紹介先の良いと思うところがあれば、同じ良質の文字・大紋を作れると思うので、信頼性は高く、紹介で相談先の一つを決めることは有効です。
お店の形態で先入観を持つことなく、いろいろなお店に見積もりを取って、自分の作る半纏と、お店の特徴(得意分野)がマッチした所を見つけましょう。

W学報 (3)

・特徴の一例

相澤染工場の染める半纏について、特徴の一例として簡単に説明をします。
特徴にはどんなものがあるか、参考の一つにしてもらえればと思います。
(詳しくは別記事に記載予定)
1.「藍染印半纏」を作ります。
防染糊を使った染めをしています。抜染は日常的には行っていません。
藍染印半纏は歴史が古く、手仕事による染色です。
2.デカシ染めの半纏を作ります。
呉(ゴ/大豆の搾り汁)+顔料を混ぜて生地に引き染めする技法を行っています。
3.創業1906年から下絵作成の実績を積んでいます。
江戸文字や、角字、半纏に関する書籍を所有、出版しています。
自社で作る半纏は、注文ごとに手彫りで型を彫ります。
4.9割近くの作業を自社で行います。
記事の途中で述べた通りです。
残りの1割は一部の惣型(生地全てに柄をつける)と両面惣型の作業です。
近くに型付屋があり、そちらに頼んでいます。
とくにそちらの両面の惣型付けは職人技です。(別の記事で改めて紹介したい…)
5.小巾の生地を使います。
小巾生地は日本特有で、和装の仕立ては小巾生地を基にしています。
小巾で仕立てられる半纏の特徴としては「背縫い」と言われる大紋が中心で割れた仕立てになるのが代表的です。
(広幅生地でも一手間かけて背縫いをつくることがよくあります)
6.有型の種類が多いです。
有型とは相澤染工場が所有しているの型のことです。
つまり有型があれば型代はかかりません。
惣型では、縞や紗綾型、吉原つなぎなど代表的な柄は数種類の中から選べます。
型代は一度作ればかかりませんが、惣型になると一度でもかなりの金額がかかるので、有型から選べればそのコストを抑える事が可能です。
この中でも「藍染印半纏」「下絵関連(江戸文字・角字)」「型(手彫りの型彫り・有型の種類)」あたりが相澤染工場の大きな特徴になると思います。
藍染印半纏を作りたい方には当然おすすめですが、衿を名名(名入れ)にしている場合は都度、全体のバランスをとり下絵を作成するので満足度が高いと思います。
もし、興味を持たれた方がいたら相澤染工場サイト、またはものあいサイトから問い合わせください。
最初の問い合わせは「半纏・見積もり依頼」だけわかれば結構です。
その後の連絡で内容をうかがいます。リンクはこちら。

 ・まとめ

1.呉服屋、卸問屋、染元、地域、紹介先に関わらず見積もりを取ることが大事です。
2.半纏は分業で作られていました。
3.いまはおたな以外のいろいろなお店で見積もりが取れます。
4.作ってきた半纏が知らず知らずのうちに劣後しているかも…
5.2020年の今、半纏の相談をする良い時期です。
6.半纏もお店も種類・特徴が色々です。
7.相澤染工場の大きな特徴は藍染印半纏・下絵・型です。

以上、簡単な説明にした部分、さらに深堀り出来る部分は、改めて記事にしていきますのでそちらも読んでいただけると嬉しいです。

…追記「失敗しない半纏作り店選び」②


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