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読書記録◎コンビニ人間

村田沙耶香さんの「コンビニ人間」、やっと読めた!

凄い凄いとは聞いててずっと読みたかった本。
前情報なしに読んで良かった。

主人公の言う「普通のわからなさ」。
コンビニで36にもなってバイトなのはおかしいとか、結婚どころか恋愛もしたことないのはおかしいとか。遡れば子どもの頃、なんで死んだ小鳥を可哀想って思わなきゃいけなかったのか……。

そんな主人公にとって、「普通」の皮をかぶるのに「コンビニ」っていう「マニュアル」で統一された空間は、とても居心地がよくて。ここなら、「コンビニ店員」というどこのコンビニにもいる生き物になれるから。

主人公は確かに人とズレてるかもしれない。わたしもリアルにこういう人がいると、戸惑うかも。でも、なんでわたしは主人公がいたら戸惑うと思うのだろうか。普通って……普通って何なんだろーか。

漠然と自分の中にもある、いつの間に存在してたんだかよくわからん常識。その常識は絶対的正義で、常識のある人間は、外れている人を自由に裁判にかけてもいいの?

ちょっと身に覚えがあって、ウッてなった。自分にもそういう傲慢さが確かにある。

誰が決めたんだかわかんない社会のルールだとか、そういうの嫌いだなと口では言いながら、
多分わたしは、この小説に出てくる主人公を勝手に批判したり面白がったりする側の人間……

ンン〜〜〜〜〜傲慢〜〜〜〜〜!ヤダー!!!

っても言ってもね、
多分誰でも大なり小なり空気を読んで、その場に合わせた自分を作ってるんだと思う。わたしは割と素のままで仕事して友達とも会って旦那とも過ごしてると思ってるけど、やっぱりそれぞれのわたしのキャラってちょっとずつ違う。地上にうごめく人間みんなそうなんだと思うとちょっと面白い。

主人公は、自分が普通になれば周りが喜ぶと思ってとんでもないクズ男と同居してしまう。それも、詳細をまるで聞こうともしない人たちが、勝手に想像して、やっと好きな人ができたんだね!とかって、判断されて周りが盛り上がってしまって。
あの場面、本当にいたたまれなくなる。

居場所だと思ってたコンビニが、居場所じゃなくなっていく。「コンビニ店員」だった同僚たちが「ムラの男女」に変わってしまう。唯一の理解者だと思っていた妹も「あっち側」だったって主人公が痛感する場面、めっちゃつらい。クズ男が機転効かせたときは「やるやないか!」って一瞬思ったけど、全然自分のことしか考えてなかった。結局本当にどうしょうもないやつだった。でもこういう人いるよね。ぜーんぶ悪いのは周りで、社会で、自分は本当は凄いのに気づかない周りが悪いと思ってる人。絶妙にいるから困る。

「普通」に「治る」ためにコンビニをやめさせられて、就活させられて、利用されてるところは結構つらかった。何にも手につかなくなるとことか、実は相当本当はつらかったんだろうな。

でも、最後コンビニに入って覚醒し、「コンビニ人間」に主人公が戻れて本当に良かった。プライベートでは自他の感情に疎い彼女が、コンビニのお客さんの観察に関してはプロ級になるところも、ギャップが面白くて最高。彼女にとってはこれが、生き方なんだなって思えた。


村田沙耶香さんの本は、これで3冊目。
全部読みたいと思ってるから、まだまだだ。

わたしが村田沙耶香さんの小説で「あ~よき〜〜」ってなる文章表現がある。
生命式にもそんな表現がでてきてたけど、
人間の中に、どろっと生きた血が流れてて新鮮な内臓が動いてて、動くたびに臭いをはなつような表現。人間が生々しくナマモノなことを、村田沙耶香さんは美しく表現してると思う。五感を描く中でも特に臭いの表現がリアルに感じられる……気がする。

殺人出産も買ってきたから、読むのが楽しみ。
でも読んだあとちょっとダメージ食らうから……また今度にしよう。

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