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マレーシアペナン島ラーニングジャーニー二日目#2ごうくんとカフェノーム

翌日は朝7時に迎えにきてもらって、
朝飲茶を体験した。


朝早くからたくさんの人がご飯を食べている。
おいしい。
めちゃくちゃ食べて、死にそう。


ここで小学生のT君が、大人たちと別れ、現地の日本語を学ぶ学生17歳のみつおくん(仮名)と、プール付きのホテルに旅立つ。知らない国で、別プログラム。うちの息子とうもろこしも、荒くれた13歳の折に訪れたカトマンズで、親に放置されて大きな課題を一つ超えたのだ。急にその時のことを、思い出した。子供って、たった一つのきっかけで変化する。その変化の影響は、一生に渡る場合もある。ラーニングジャーニーの真価は、子供にこそあるかもしれない。


午前中はあっちゃんとプラナカン博物館へ。



絢爛豪華なプラナカンの世界に浸る。


お祝い事につかわれたニョニャ陶器


ニョニャ陶器が欲しいね。
安いレプリカでいいから。
とあっちゃんと話す。

後、小説家の青海エイミーさんと、あっちゃんと3人で昼食。


バナナの葉の上に、好きなトッピングを乗せてもらう。

エイミーさんがかつてヨガを教えていた、郊外の宗教施設に連れて行ってもらった。
お墓に羊がいて、草を喰み、広場のようなところでは、中国系のお爺さんが虚空を見つめていた。
この場所に流れている時間は
街中とまた全然違う。


夕方、コーディネーターのはるみさんの紹介で、今ペナンで大人気のCafe Norm の経営者、中国系マレーシア人の張 杰濠さんこと、ごうくんのお話を聞く。


Norm店内左から2番目がごうくん。

今34歳のごうくんは、大学時代会計の勉強をしていて、親も自分が会計士になることを望んでいた。でも、喜びが感じられなかった。2014年頃マレーシアやペナンではカフェ文化が盛んになり、自分も挑戦したいと思った。仲間を募って、マカロン・カフェという店を開いた。店は成功し、たくさんの人で賑わうようになった。同時に、一緒に店をやる仲間の中で、少しずつ意識のずれが起こってきた。
自分はいい店にしたいと思った。いい材料を使い、体にいいものを出して、働いている人にもお給料をたくさん払い、気持ちの良い環境を作りたかった。でも、仲間はそれはしたくないと言った。うまく行っているから、このままでいいじやないか。と。働くことの喜びが少しずつなくなっていく。




数年で店の経営から手を引き、お金もないまま、小さな店舗で初代Normを作った。テーブルは5つ。客席は15席。
でも私はまだ若く、大きな店を作りたかった。出資者を募るため、必死でお金を集めて、プレゼンをしに上海に行った。


1ヶ月かけて作った企画書を、出資者は面倒くさそうに10分で見た。「いいね。でも普通だ。何か足りない」と言った。
何が足りないかと聴くと
「たとえばロボットアームだね。レストランのメニューをロボットアームが作る。評判になるよ」
ごうさんは、それは自分のスタイルじゃない、と思った。一時的には確かに話題になるだろう。でもそれだけだ。

ごうさんにはお金はなかったし、自信もなかった。でも、身体に良くておいしいものを、幸せな環境の中で働く人が提供すれば、そこは絶対に素晴らしい場所になる。という信念があった。

悔しくて泣きながら上海から帰った。せっかく旅費を工面してくれた仲間に、何も言うことができなかった。それからしばらくして、今店があるこの場所が、すごくいい条件で貸し出されていることを知った。

思い切って店を借り、改装して仕事を始めた。店は繁盛した。しかし開店後3ヶ月でコロナ禍が始まった。マレーシアは激しいロックダウンを行い、営業が難しくなった。スタッフの給料は、はじめ6割になり、4割になり、やがてゼロになった。
でもコロナが落ち着いて、店を再開した時、働いていたみんなは全員店に戻ってきてくれた。
だからうちの店はよそのように人がいなくて再開できない、ということはなかったんだよ。


上海のロボットアームのくだりを話す時、ごうさんは今でも泣いてしまう。よほど悔しかったのだろう。

この話は象徴的だ。私たちは何を求めて仕事をするのか。働く若者たちをキッズと呼び、大事にする。自分に自信はないけど、自分の信念は信じている。だからごうくんは、挑戦し続けることができるのだろう。なぜそんなに人を大切にするのかと聞いたら、自分はLiving Love 愛の中で育ったから、多分それが自然なんだと言っていた。


みんなで話を聞いたあと、ごう君の奢りで、大人気の中華料理のお店にご飯を食べに行った。

行列をすり抜け、裏から侵入する。一緒に話を聞いた、JICAで精神障害の人たちの施設を支援する仕事をしている田中さんが、ラマダン終わりでようやくご飯が食べられると、嬉しそうだった。周りにムスリムの人が多いので、一緒に日中断食(ラマダン)をしているそうだ。田中さんは、別にムスリムに改宗したわけではない。周りに日本人のいない環境で、ムスリムの人たちと同じように暮らしている。


田中さんがごうくんと、精神障害の人たちが作った作品を展示する場所についての相談をしているなか、夜はしんしんと更けていった。




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