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この本の、この一節 (2)
飴色の廊下を裸足で歩くとき、
足の裏の皮膚が
過去みたいなものを捉えるのがわかる。
たとえば朝起きて飲むコップ一杯の水の中に、
夕方につける玄関の電球の光の中に、
ひっそりと過去が溶けている。
(『スコーレNo.4』 宮下 奈都)
祖父母が亡くなり、今はもう誰も住んでいない家へ、時おり心を休めにくる。
やわらかな光が、くすんだ障子や古びた縁側のそこかしこに溢れ、温かい手に包まれているような穏やかさと安らぎを感じる。
家の中のものに一つ一つ触れてゆくことで、かつてそこに暮らしていた人々の息づかいや温もりが記憶とともに立ち上り、独りではないのだと気付かせてくれた一節。
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