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【創作童話】虹色レモン





はじめまして。
私はレモンの木です。

毎年この季節になると
私の体には
たくさんのレモンの実がなります。


そのたくさんなる実の中に
毎年ひとつだけ
七色に輝く実がつきます。

虹色レモンです。

このレモンには不思議な力があります。
このレモンを食べると
必ず笑顔になるんです。

つまり、私は毎年必ず、
1人を笑顔にさせているんです。

すごいでしょ。



今年もたくさんの実がなり、
もちろん、虹色レモンも1つなりました。

今年は、生意気そうでいて、
でも目をキラキラさせた可愛い少女が
虹色レモンをもっていきました。

『あー、また今年も1人、
笑顔の者が増えた。』


そう思っていたのですが
今年は少しいつもと違う結末となりました。



結論から言うとその少女は
虹色レモンを食べませんでした。

少女は虹色レモンを
友人にゆずり渡してしまったのだそうです。


『なんてもったいない!
食べれば君は笑顔になれたのに!』


そう話す私に
少女はこう言いました。

「レモンをあげたお友達は、
とてもとても喜んでくれたわ!
私、あのお友達が
あんなキラキラした笑い方をするなんて
知らなかった!

虹色レモンのおかげだよ!
どうもありがとう!」

その少女は、満面の笑みで
そう私に話してくれました。


この時、私は、
1つの虹色レモンが
2つの笑顔を作る可能性を知りました。


少女が去って、
私がふと顔を上げると
その一部始終を
近くで見ている男の子がいました。

その男の子もまた 満面の笑みでした。




私は今年、1つの虹色レモンが

たくさんの笑顔を
作っていたことを知りました。




おしまい

頂戴いたしましたサポートは全額有意義に使用させていただきます。主にカレーパンになるかと思われます。