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エッセイ

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#旅日記

伊豆大島 椿と山桜のコントラスト

先日、アーティスト・栗原亜也子さんの伊豆大島での展示紹介記事を執筆した縁で、伊豆大島へ行ってきました。 関東圏では東京から1時間45分、気軽に行ける都内の島(伊豆大島は東京都に属している)として知られていますが、関西圏ではなじみの薄い伊豆大島。 記事執筆に際した取材はZoomによるインタビューが中心だったため、亜也子さんの話や写真、ウェブサイト等で情報を集めつつ、想像をふくらませながら書きました。 そして4月のはじめ、展示会期に合わせて島を訪れました。 滞在中はあいにく

下北沢 / Shimo-kitazawa

下北沢は今まで訪れたどんな街(町)より、様々な場所の色んな要素が集積してできた街のように思われた。 神戸の北野やトアウェストにありそうな、80年台に建てられた低層のデザイナーズビル。よれよれのポロシャツやユニフォームを扱う古着屋が並ぶ、アメ村のような雰囲気。ちょっと代官山を想起させるような細い道の起伏とうねり…。様々な既視感がノスタルジーを誘い、パッチワーク的雰囲気が街の雑多な雰囲気を作り上げている。 高架下は神田と同じようにきれいに改装されていたが、中に入っているテナン

旅日記: 移りゆく微細な色彩と、ベネチア派絵画

たえず移りゆく光と影のゆらめきの中で、ベネチア派絵画は生れた。そんな風に記していたのは塩野七生だった。 2泊3日の滞在中、宝石箱のようなベネチアの街中を忙しく歩き回った。 船上から眺める大運河沿いの街並み あちこちに架かる大小の橋 無数に入り組んだ路地 どの通りや広場に行きあたっても、息を飲む美しさであるが、同時にわずか5平米ほどの小さな島の中には、多くの文化財がひしめいている。 朝早くからバポレット(水上バス)に乗り込み、ジャム入りクロワッサンをほおばりながら、ゆっ

旅から眺めるエコ③: フランス プラスチック削減年表

今回のイタリア・フランス旅日記では、機内のプラスチックの削減(エールフランス)やパッケージレスの店(イタリア)などに触れつつ、環境へのアクションが加速している様子を紹介しているが、個別の事例だけをあげてもあまり説得力がないようにも感じた。 そこで、今回は自分に一番馴染みのある国フランスを例に、2016年かのプラスチック削減政策を年表形式にまとめつつ、変化の様子を追っていきたい。 *** これ以前もレジ袋は有料だったので、無料配布の禁止でなく、レジで使い捨てプラ袋を渡すこ

旅から眺めるエコ②:詰め替え、量り売りの店

ベルガモの街は、丘のふもとにある駅を中心とした新市街・チッタ・バッサ(低い街の意、ベルガモ・バッサとも)と、世界遺産である丘の上の城壁都市チッタ・アルタ(高い街の意、またはベルガモ・アルタ)とに分かれている。ガイドブックに載り、主に観光客が訪れるのは主に旧市街チッタ・アルタの方であるが、夕方駅についた後、宿泊したホテルのあった新市街を散策してみると、かわいいカフェや、セレクトの本屋、ギャラリー、などこだわりのありそうな、個人の店が点在してなかなか楽しい。(ただし、地方都市なの

旅から眺めるエコ①:リサイクルデニム

前回の記事で、好きな店で期待していたほどのクオリティーではなかったが、急いでいたのでやむなくジーンズを買った、と書いたが、やはり以前購入したモデルが好きすぎて落胆していた。履いては脱いで、首をかしげ、しげしげと観察する。そこのジーンズはディテールの装飾が凝っていてかわいいので気に入っていたが、今回のものは経費削減か、省略されている。そして、何より生地が厚ぼったくなって、いまいちすきっとしない。カットは悪くないが、旅先で判断を誤ったかな、と思いつつ、裏返してタグを見つめる。する

ナタリーとの再会

マルセイユに着いたので、エクスにいるナタリーに連絡をいれた。 南仏のエクス・アン・プロヴァンス(通称エクス)に留学していた頃の、かつてのクラスメートはもう散り散りになってしまって、エクスで会えるのは、語学学校の担任だったナタリーだけになってしまった。 大柄でマットな肌、黒髪のショートカットのナタリーが、ゴルチェのGパンを履いて大股で教室に入ってくる姿が今でも目に浮かんでくる。彼女の講義での言葉はいつも、フランス語の教職や文学への愛が溢れてキラキラしていた。そんなナタリーと卒

サン・マロ日記 ② : バカンス列車の悲劇

旅の移動には日本の新幹線にあたる、高速鉄道のTGVを利用した。 電車に乗るのはいつだって旅の楽しみだ。フランスでTGVや地方の在来線を運行する国鉄のSNCFは、大規模ストやダイヤの乱れなど、一糸乱れぬような日本の鉄道事情とは異なり評判が悪い。私は幸運なことに大きな災難に見舞われたことがないためか、SNCFでの旅を気に入っている。 まず、列車のレイアウトが楽しい。TGVは二列・三列がけの席が延々と伸びる新幹線と違い、二列ずつに並んだ席の他、コンパートメント席、二階建て車両やバ

サン・マロ日記 ① : 楽しい季節

2019年の6月、私はフランスにいた。 10日ほどの短い日程で、パリから大西洋岸のナントへ、そこから北上してブルターニュ地方のサン・マロに立ち寄ってパリに戻る、という行程だった。 日本で6月といえば梅雨に加え、連休がないことも相まってあまり海外旅行へいくイメージがないかもしれないが、私的にはタイミングさえ合えばヨーロッパへいくベストシーズンではないかと思う。 ゴールデンウィークと夏休みの合間で飛行機の値段も下がっているし、現地の気候も快適。しかしまだ本格的なバカンスシーズン